カテゴリ:小言こうべえ
◇ 9月14日(金曜日) 旧八月四日 辛亥
総裁戦は、どうも福田さんが流れに乗ったような気配だ。 中々玄人的な「芸」であるように思う。この辺は自民党のお家芸なのだろう。過激な小泉路線を、福田さんで薄めつつ「実務派内閣」を作り上げようと云うのだろう。福田さんも「皆が要請してくれるので、この危機的状況だから。・・・・まぁ、ひょっとしたら貧乏くじかもしれないけれど。」などとおっしゃる。この辺は、日本人の心情には受けるんじゃないだろうか。 イギリスの国会の議長は、選出までは日本と同じで色々策動などが盛んに凝らされるが、一旦選ばれると、晴れがましくも選出されたはずの新任議長は、嫌がるのだそうだ。それで、国会の初日には嫌がる議長を、他の議員が皆で抱えるようにして議長席まで運ぶのだという。その間中新任議長殿は「いやだよぉー、イヤダ。カンベンして欲しい。」と騒ぎまわるのだ。イギリスの国会での議長の正装は、鬘をつけた大時代的な衣装だということだが、新任議長殿は既にその服装を纏っているのだから、これは無論演技である。そうして、ついに議長席に着くと、新任議長殿は打って変わって毅然たる態度で槌を叩き降ろし、英国流の発音で「Order Order!」(さしずめ、「静粛に!」というような意味)と朗々と叫ぶのであるから可笑しい。 これは、「自分は決して私利私欲で議長を受けるのではない。ましてやこの地位に恋々とするものではない。」という廉直な姿勢を顕すための儀式なのだそうだ。 福田さんが、「請われて立ち、敢えて我が身を捨ててこの難局に臨む」というのは、英国流の流儀に通じる。これは、同じ島国で、同じ立憲君主国である我国の民草にも受け入れられやすいと思う。 一方「先行逃げ切り」の計算が狂ってしまった麻生さんは、「自らの決意で、やる気を持った人でないと。周りに進められたからなんていうことではダメだろう。」と、必死に牽制に努めていらっしゃる。しかし、自民党という「日本に典型的なムラ組織」では、一旦流れが出来てしまうと後は「出る杭は打たれる」の世界である。前にも書いたが麻生さんは、本当はこういう形で、こういう時期に宰相の地位に挑戦したくは無かったろうと思う。しかし、ポロッと目の前にいきなりチャンスが来てしまった。仮想敵は谷垣さんと額賀さんだ。「これなら勝てる」とお思いになったのだろう。だから、総裁選のプロセスはあれよあれよと云う間に一気呵成に進めてしまいたかったはずだ。ところが、自民党の「選良」たちは、それぞれの思惑で、ある者は今までの不遇状況を覆すチャンスと、またあるものはじわじわと脱小泉になりかかる傾向を元に戻すチャンスと、またある者は復古的考えで・・・・。要するに、「国民に開かれた総裁選」という正論を振りかざして、時間稼ぎに走った。その内に思わぬ伏兵が現れた。ご本人としては早々に出馬表明をなさってしまったから、振り上げたこぶしを下ろす事ができなくなってしまった。ましてや額賀さんが不出馬になってしまい、谷垣さんも早々に旗を巻いてしまったから、否応無く「一騎打ち」の形勢になってしまった。お気の毒な事である。 しかし、安倍さんの辞任の意向を「月曜日から知っていた」とペロッと喋ってしまうとか、「幹事長の職責を全うした上で」と云いつつ早々に出馬の意向をぶち上げてしまったのは、早計でしたなぁ。これは最近では「KY」(「気分が読めない」、「気配が読めない」・・・そんな意味の略語らしい)と云うのだそうだが、これは「もうヤダ、辞める!」とおっしゃった現宰相の数々の失策に通じるものを周りは観てしまう。 政治の世界には常に「サープライズ」が付き物だから、今後又思いがけぬどんでん返しがあるのかもしれない。 しかし、この流れのままで結末まで行くと、漫画やゲームソフト業界の皆さんはがっかりするだろうな。「麻生さん有力」との観測が出た時点で、「麻生さんが漫画をお好きだ」→「この業界への助成金などが増えるだろう」→「株価が上がるだろう」という、金の亡者どもの「風が吹けば桶屋が儲かる」流の思惑で、この業界のある会社の株価など、一晩で70%以上も高騰したそうである。 しかし福田さんはどう見ても、漫画などとは縁遠い堅物の優等生だからなぁ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.09.14 20:52:16
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