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マックの文弊録

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2009.03.01
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◇ 3月1日(日曜日); 旧二月五日 乙巳(きのと み): 赤口、東大寺二月堂修二会、岐阜美江寺祭

子供のころ、母が「これ、もうやいにしなさい」とか、「もうやっこで遊びなさい」とか云っていた。
「もうやい」というのは、一人で独占するのではなく、周り(というよりその場に居る少人数の間)で物の場合は分け合って使う、食べ物の場合は分配して食べると、そういう意味だった。
これは、お隣の名古屋の親類の家などに行くと、「もうやぁ」などと少し「訛って」いたが、何れにしても岐阜や名古屋に限られた方言だと思っていた。

先日無聊のままに書棚の奥から引張りだして読んでいた本に、昔の東京には「おもやい」という言葉が有ったというのを見つけた。(というより、以前この本を読んだときには気が付かなかったか、忘れてしまっていたのを再発見したということになりますね。)
「皿などを隣同士で共用しようというときは『オモヤイにしましょう』と言ったりもした。」(林望著 - テーブルの雲 - 新潮社 1993年)とある。林氏の祖母に当たる人は、江戸の御家人の血筋に当たるそうで、彼はこれを御家人言葉の一つと思っていらっしゃるようだ。
気になってちょっと調べてみたら、長崎方面にも同様の言い回しがあるということで、長崎地方の人はこの言葉を自分たちの地域の方言だと思っているようだ。
長崎の方は、語源も「催合い」、「舫い合い」(舟を二艘並べて、舫いを繋ぎあう)などとあり、なるほどもっともらしい感じがする。

ネットでごく荒っぽく関連を渉猟した結果は、この「おもやい」とか「もうやい」という言葉は近世までは東~北日本でごく普通に使われていた言葉であったらしい。(それが九州の長崎に飛び地のように、しかも今でも割合に普通に使われているらしい言葉として残っているのは分からない。佐世保には「グループホームおもやい」というのもあるそうです。)

言葉(方言)もそうだが味(食文化)の方も、その分布を調べてみると昔の日本人の暮らしようが分かったり、意外な地域同士の交流があったことが垣間見えたりして随分面白いことが分かるようだ。(関連:野瀬泰申 - 天ぷらにソースをかけますか? ニッポン食文化の境界線 - 新潮文庫 2009年)

すっかり中部地方固有の方言だと思い込んでいた「もうやい」が、近世までは標準語であったらしいのだが、そうなると、他の「なぶる=ちょっかいをかける、いささかの悪意を以って人に干渉する」とか、「まわしをする=仕度や準備をする」など、今まで郷里の岐阜地方の方言だと思い込んでいた言い回しについても、意外な事が分かるのかもしれない。





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最終更新日  2009.03.02 20:11:13
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