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マックの文弊録

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2009.03.19
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◇ 3月19日(木曜日); 旧二月二十三日 癸亥(みずのと い): 赤口、下弦の月

日本のカタカナになった外来語は海外では必ずしも通じないということを、昨日のブログで書いた。
バッハは「バーク」で、シューベルトは「シュバート」、モーツァルトは「モザート」、ショパンは「チョピン」と云わないと通じないよ、といった類である。

そうしたら未だあった。「バイキング」である。スカンジナビア地方の伝説の海賊のことではない。色々な料理が並べられて、其処から好きなものを好きなだけ取って食べるという、オバサンたちご愛好の(そして僕が大嫌いな)アレである。
アレは何故「バイキング料理」などというのだろう?好奇心旺盛なB級探偵としては気になるから、早速探索してみた。

多分皆さんの中にも、海外に行ってホテルの朝食の際「バイキング料理」と云って通じなかった経験をお持ちの方がお出でだろう。(僕はそうだ。)
バイキング風の朝ごはんを食べたかったら、「バッフェ」とか「バッフェ・スタイル」と云わないと通じない。日本語では普通「ビュッフェ」というが、これはフランス語風の発音で、世界の公用語としてのさばる英語では「バッフェ」に近く発音される。この「バ」はバとブの中間位の感じで口の奥に少しこもるように発音すれば完璧だ。

それはともあれ、このバッフェ・スタイルをちゃんとした英語では「スモーガスボード(smorgasbord)」という。これは元々スェーデン語で、smorgasはパンとバター、bordはboardでつまりはテーブルの事だと言う。なるほど、スェーデン語となると、段々バイキングに近づいて来たようだ。
B級探偵としてはもう少し追求しなければならない。

そうしたら、帝国ホテルに行き着いてしまった。
折柄日本は高度経済成長期に入っており、当時の帝国ホテルのシェフだった村上信夫さん(故人)という人が、帝国ホテルの料理のバリエーションを充実させるために欧州に出張させられた。
その時にデンマークでスモーガスボードに遭遇し、「これはいける!」と日本に持ち帰ったのだそうだ。
それでスモーガスボードの店をホテル内に開こうとしたが、どうも日本人には馴染み難い言葉なので、名称を社内公募したのだそうだ。「スモーガスボード」と口に出してみると美味しそうな感じはまずしないものなぁ。

当時近くの有楽町の映画館でカーク・ダグラス主演の海賊映画「バイキング」が上演されていて、船上で食べ放題、飲み放題のシーンがあり、その豪快さが話題を呼んでいたので、それを思い出した帝国ホテルのボーイさんが、「バイキングが良いんじゃないか」と提案し、これが採用されたのだという。そして「インペリアル・バイキング」という名前のレストランが帝国ホテル内にオープンした。1958年(昭和33年)の事だそうだ。

因みに、同ホテルには今でもThe Imperial Viking SALというレストランがちゃんとある。スモーガスボードの朝食が34ドル、昼食が53ドル、そして夕食は80ドル(何れも大人料金、税サービス料別)もするというから、僕は行かない。高級縁日料理に何故そんな値段を払うのだ。それにセルフサービス(バイキングだからそうだと思うが)なのにサービス料を取るのかい?

これでバイキング料理の由来は知れたが、帝国ホテルには他にも発明料理がある。それは「シャリアピン・ステーキ」だ。
これはステーキ肉を薄く叩いて、すりおろした玉ねぎソースでマリネし、しかる後焼くのである。玉ねぎの香りと甘みが肉とよく合って僕は好きだ。

1936年(昭和11年)に帝国ホテルに投宿した、当時世界でも有数のオペラ歌手(バス)であったロシアのフョードル・シャリアピンが歯痛に悩まされ、肉は食べたいが固くてダメだという状態にあった。それを見かねた帝国ホテルの「ニューグリル」のシェフが、日本のすき焼きにヒントを得て作り歯痛のオペラ歌手に供したのがはじまりだそうだ。牛肉を玉ねぎでマリネすると玉ねぎのたんぱく質分解酵素が働いて肉が柔らかくなるのだ
従って、外国に行って「シャリアピン・ステーキ」と云ってもやはり通じないのである。






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最終更新日  2009.03.19 19:39:18
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