カテゴリ:小言こうべえ
◇ 5月22日(金曜日); 旧四月二十八日 乙丑(ひのと う): 先勝
先日まで「水も漏らさぬ水際作戦!」(これ何だか変な日本語だな)を、それが最高の重大事であると吹聴してきた政府は、急速に方針転換してしまったようだ。新型インフルエンザに関する報道もトーンダウンして、連日臨時ニュースを流したり、「今日は何人!」、「今日は何処で!」と危機感を煽ってきた緊迫感は失せてしまっている。 必要以上に深刻に騒ぐだけ騒いで後は直ぐに飽きてしまうのは、わが国民性が世界に誇り得る美点(こういう世の中では「美点」というべきだろう)であるし、最近とみに大衆迎合の姿勢を貫こうとしている報道機関を併せ思えば、まぁとっくに予想された事ではある。 閉鎖されていた保育所は再開され、学校の休校も解かれ、予備校も再開し(そろそろ中間試験なのだそうだ)、デイケアサービス施設も再開し、病院も通常診療の範囲に入れてしまい、イベントの自粛勧告も無くなり、JRの駅売店も営業を再開した。成田などの主要空港での機内検疫もやめてしまうのだそうだ。 「もうウィルスが入って来ちゃったんだからしょうがないじゃない。どっちにしたってもう色々厳しくやったって意味無いよ。」という事なのだろうか? おいおい、それで大丈夫なのかい?と心配になってしまう。 先の大戦の時、それまで「鬼畜米英の敵兵に皇国の土は一寸たりとも踏ませない!」と国民を煽り耐乏を強いてきたのが、太平洋上の防衛ラインがどんどん潰されていったら一転して、「陣地を取られちゃったんだからしょうがないじゃないの。本土決戦だ!飛んできた敵の飛行機を霞み網や鳥もちで引っ掛け、敵兵が上陸して来たら竹槍で一匹でも多くの敵兵をやっつけよう!」という事になったそうだが、どうもそのイメージが今回に重なってしまう。 前回(5月20日)の我がブログにも書いたが、インフルエンザウィルスの感染拡大のプロセスは、(1)ウィルスの細胞への吸着と進入、(2)細胞内への放出と核内への取り込まれ、(3)ウィルス遺伝子の転写複製、(4)子孫ウィルスの細胞外への放出、そして(1)へ戻る、と要約できる。 何事も「入る時」と「出る時」が重要だ。我々の場合でも「入る時」(つまり食う事)と、「出る時」(つまり・・・する事)の何れかに障害が起こると命に係る事になる。 つまり上のプロセスでも(1)と(4)を阻止妨害する事が感染拡大を阻止するキーポイントになる。 (1) を阻止妨害するにはワクチンが必要になる(勿論一端感染しておいて直ってしまっても良い)が、新型ウィルスのワクチンを作るためには新型ウィルスそのものが必要になるため、これは必ずある程度の感染流行の後にならざるを得ない。普通は新型ウィルスが同定されてからワクチンが出来るまでには数ヶ月は必要なのだそうだ。 何かと話題のタミフルやリレンザなどの抗ウィルス薬は(4)の阻止妨害に有効なものだ。つまり、「入ってきちゃったものはしょうがないじゃないの。だったら出られなくしてしまえばいいじゃない!」という事なのだ。 そうなると政府の作戦は、「ワクチンが出来るまでの間は対症的に抗ウィルス剤で凌いでいこう」というように思える。しかし若しそうなら、例えば感染地域の感染予備軍、つまり若青年層や妊婦、糖尿病・透析患者には抗ウィルス剤の予防配布をするとかした方が良いのではないか?確かタミフルは3千万人分の備蓄が有るとか云っていなかったか? それと、今までの感染防止策を次々に解除するに当たっては、今回の新型ウィルスが幸いにして弱毒性であった事が大きく作用しているのだろうけれど、それがために今回の決定に至ったのだなどとおためごかしを云ってはいけない。あくまでも本当の理由は、地域経済への影響を最優先に考えての事だというのは、政府も地方自治体もちゃんと明言しておくべきだろう。この点「都市機能の維持のため。府民の皆さんもどうか理解して一緒に頑張ってください。」と発言している大阪府知事は率直で多少は好感が持てる。しかし中央政府の連中は、「季節性インフルエンザ程度だから」、「重篤な症状になった人が居ないから」、「死者も未だ出ていない」などとしか云っていない。 「入ってきちゃったからしょうがない。」「捉まえてみたらそれほど凶悪なヤツじゃないじゃないか。」と云って品薄のマスクや手洗い・うがいの励行だけに頼り、基本部分で手抜きをしていると、患者はどんどん増えるぞ!若し手抜きの所為で死者が出たらどうする!いつものように「思わざる事態となり、まことに遺憾に存ずる次第。」などでは済まさないぞ。微力ながらこのブログでどんどん糾弾してやるぞ。 先ずは、「今回の防疫態勢の急激な緩和は、この不況下にあっての社会システムの維持と、新型ウィルスの危険度を天秤にかけたトレードオフの結果であって、新型ウィルスの脅威とその感染拡大可能性が減じたわけではない。」という本音(事実)を政府首脳自らが国民に遍くしかも明示的に告知する事だ。それと同時に、抗ウィルス剤の備蓄量と増産見通し、更には配布戦略に関しても具体的に明示すべきである。そして、上述(1)に係るワクチンの配布可能時期についても同様である。 そうしないままに国民を不当に油断・楽観させるのは、かつての大本営発表の再現でしかない。 どうも麻生首相も、次のハイライトを太平洋島サミットなどに求め始めたような気がする。それに、他にも北朝鮮の短距離ミサイル発射の可能性が出てきた。時の権力者のアドバンテージを最大限に発揮するための題材としては、新型インフルエンザはもう旬が過ぎたという事なら、いよいよ民主党や報道言論機関には本来の使命を自覚して欲しいものだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.05.23 15:09:39
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