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マックの文弊録

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2009.08.18
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カテゴリ:小言こうべえ
◇ 8月18日(火曜日) 旧六月二十八日 乙未(きのと ひつじ) 先負: 

先週末に、お付き合いで、友人のお母さんが入所なさっている介護施設に行ってきた。友人のご母堂は、この施設に預けられてほぼ6年になるそうだ。

僕の母は、父が先に亡くなって以来長く一人暮らしであった。父の没後かなりの期間は、むしろ再度経験する独身生活の自由を謳歌するほどの元気があったものの、雪の日に玄関先で転んで以来、家に引きこもりがちになって、それが引鉄になったのかどうか、頭の方も少しずつ別の世界に遊ぶようになった。挙句の果てに一人暮らしは危ないという事になり、結局介護施設にご厄介になった。

その当時は僕自身が仕事の方にかまけざるを得ない状況で、施設に入った母を頻繁に見舞う事など出来ない相談だった。それまでは、年末年始の休暇になると必ずと云っていいほど母を伴って、彼女の昔の赴任地(母は「現役時代」は教師であった)を訪れたり、郷里の北方の温泉地へ連れて行ったり、僕なりの罪滅ぼしをしてきたつもりだったが、昨年の初め辺りから彼女の容態が楽観できなくなってからは、外に連れ出すことも叶わなくなった。

母は、昨年の初夏に身罷った。
何とか最後には間に合った。と、いうよりも施設の方で僕の都合に合わせたように、母の臨終時期を操作したような印象があった。
これに付いては、僕なりに書いてみたい事はあるのだが、それはいつか又の機会にしたい。

僕が友人のお母さんを御見舞いしようと思った背景には、こんな経緯もあったと思う。友人のお母さんも昔は教師でいらしたそうだ。
施設では、僕なりに感じる事も多くあった。これに付いても、ちゃんとまとめた上でこの場で書いてみたいと思っているが、それは今回の本題ではない。
要するに、そういった事共が先週来あって重いテーマが頭に居座ってしまい、なかなかブログを書くことが叶わなかった。
それを言いたかったのです。

さて、今日18日は衆議院選挙の公示日であった。
衆議院の解散以来色々な事があり、実際の選挙戦はもう一ヶ月ほども戦われているような印象なので、今日になって公示といわれれば、「あーあ、やっとかい!?」という感じが強い。
今回の選挙は政権交替が大きなテーマである事は、言われて久しいし、実際僕を含め有権者の大半もそれを実感しているのは間違いない。
そして、大勢の赴くところ、どうもやはり民主党が第一党になりそうな気配である。
麻生さんは真っ黒になりながら方々で頑張っておられる。ただ、正直な方だから、何となくご自身もう野党のリーダーとして民主政権を批判するような調子の発言が目立つような気がするのは、僕だけであろうか?伝聞であって、自分で検証したわけではないが、麻生さんはどこかで「勝ち負けが問題ではないのだ」とか、挙句「負けるときは負けっぷりを良くしないと」などとおっしゃったそうだ。麻生さんが正直な方であるのは、最早疑いの無いところであり、僕はその辺には大いに好感を持っているのだが、それにしても雌雄を争う現政権党のリーダーたるものが、こんな事を言ってしまっては拙いんじゃないのと、衷心からそう思う。
甲子園で戦っている高校のチームの監督がこんな事を言ってしまっては、球児たちはやる気をなくしてしまうだろうなぁ。

一方の由紀夫さんは、最近顔つきも衣装も変わってきたようだ。最近は暑い最中なのにストライプのダークスーツをお召しになるようになった。顔つきも以前の少しおずおずした表情は消え、悪相になられたような気がする。発言ももうご自分が総理大臣になった時を意識されたような、曖昧で逃げを打つような姿勢が見えるようになったようにお見受けする。

もともと、人に着目すれば自民党も民主党も殆どが同根である。主義主張にしても、概ねそれほどの懸隔はない。今回の争点で着目すべき点を取り出せば、自民党は「経済のパイを拡大する事で、これから必要となる財源を確保する」と云っているのに対して、民主党は「内需を拡大すると共に無駄遣いを削減する事で、当面必要な財源は確保できる」と云っている。

要するに両党の違いは、経済発展に主軸を置くか、内需拡大で行くかに集約されると思う。僕は経済発展と云うのは、誰か他の人(国)に損をさせないとできない事だと信じているから、従って不可知要因が一杯あり(何処の国であれ易々と損をするに甘んじるところなど無いから)、予めそれを国民に約束できるようなものではないと思う。

その点、無駄遣いを減らし、それを内需拡大と社会保障の充実に振り向けるという民主党の主張は、先ずは自分たちで出来る事だから、それは結構だと思う。しかし、そういう政策は一体これから何年続けられるか。結局ある程度まで行けば、日本としての経済発展に帰着せざるを得ないのは当たり前だ。早晩そういう必要が出てくる時のために、民主党はどういうビジョンを示すことが出来るか?その点では大いに不安がある。

唐突だが、「島の法則」というのがある。古生物学の経験則だ。
生物の進化は一つの種に着目すると、大型化の傾向を持つとされている。これは特に捕食者と被食者が多様な分化を許されている大陸のような環境では蓋然的に言えることである。
ところが、地殻や気候の変動によって、周囲から隔絶された孤島のような環境に閉じ込められた生物は、逆に大型動物は小型化し、小形動物は大型化する。これが「島の法則」である。

島と云う環境は大陸に比べて圧倒的に狭い。狭い中では他の動物を餌とする肉食獣は生きることが難しい。一般に肉食獣が一頭生きていくためには、約百頭の餌となる草食獣が必要とされる。ところが孤立した島の環境ではそれが許されないから、やがて肉食獣は居なくなってしまうか、あるいは極めてマイナーな存在に成り下がる。そうなると、捕食を逃れるために大型化の道を辿っていた大型草食獣にとっては、捕食を逃れるための大きな体躯は不要となる。何より限られた環境の中で大量な餌を必要とする巨大な体躯は無駄だという事になる。従って、大型獣は小型化の方向に向かう事になる。
一方の小型獣も、小型である事は捕食者から逃げる意味では有為であったが、一方で小型であるが故に標準代謝量は高く、のべつ餌を食べなければならないという生活を強いられる。これが、捕食獣の脅威が無くなれば、体を大きくしていけば、始終餌を食べ続ける生活から少しはゆとりのある生活に移ることができる。

つまり、孤立した島では、例えば象は小型化して子牛くらいの大きさになり、ネズミは大型化して猫位にまでなる。これは大氷河時代の化石を調べて分かる事実である。

さて、わが国は島国である。
島国であるが故に、「島の法則」に左右される面が大きいだろう。「出る杭は打たれる」というのは、島の法則から導かれる格言である。
島国には世界を左右できるほどの大偉人は出ない。全世界を震撼させるような大哲学者も、詩人も、そして政治家も出ない。しかし、それを支える大多数の民衆の層は厚く且つ他より優れている。何しろネズミは猫ほども大きいのだ。こういった面こそがわが国の大いなるアドバンテージである。
違うだろうか?

先日自民党と民主党の党首会談が行われた。(昨日の「史上初」の6党首会談ではありません。その前の二党の党首会談のことです。)熱心に観ていた訳ではないが、僕には非常に気になったところが三箇所あった。
第一に、麻生さんも由紀夫さんも、対手の顔を直視していない。対手の眼を見て話すのではなく、エンポーリアムの前面にたむろする記者の方を見てしか話さない。
第二に、お互いに「自民党さん」とか「民主党さん」などと呼び合っていた。個人ではなく相手の組織を「さん」付けで呼ぶのは、日本では普通の事だが、僕は以前から強い違和感を持っている。
第三に、党首討論が終わった後、由紀夫さんが(恐らくは握手を求めて)麻生さんに近寄ったにもかかわらず、麻生さんは故意かどうかは知らず、そっぽを向いて舞台袖に退場してしまった。
この時こそ、由紀夫さんは満座の注目の中、大声で「麻生さん!握手位しましょうよ。お互い意見の相違はあるけれど、国の事を思う気持ちは一緒でしょう!」とでも呼びかけたら、由紀夫さんの株は際立って大いに上がった事だろう。
麻生さんはそそくさと立ち去り、由紀夫さんは何となくカッコも付けられないでどっちもみっともなかった。同じような態度は、小泉ジュニアの進次郎君も対手の横粂民主党候補に対してお取りになったらしい。

この国は、ディベートの習慣が無い。だから、相手を面前で論難する習慣が無い。相手を論難しても、それは相手の人格を否定するものでは全く無いという、けじめの境界が無い。
高校野球ではお互い相手を完膚なきまで叩き潰そうという意欲でグラウンドに臨むが、雌雄が決すれば、好敵手の健闘をたたえて、遺恨を後に残すことはない。
しかし、これは未だわが国では闘技の世界だけの事で、政治家の公開討論までには普及していない。つまり、形だけ党首討論をやっても、政治の世界ではそれは未だ遺恨試合のようなドロドロしたレベルでしかないというのが実態なのだ。

要するに、日本の政治は強く「島の法則」に囚われているのだということを分かっておかなくてはならない。そういう世界に「大陸の論理」を持ち込んだのが小泉純一郎であり、竹中平蔵だったのだ。其処に無理が生じないわけが無いのだ。

さて、我々が日本の国民である以上、「島の法則」が悪いわけでは無い。むしろ、猫ほどにまで大きくなったネズミの如き我々自身に対して、大いなる自負を持っていいと思う。世界をリードするような大政治家も、哲学者も、特に必要は無い。何より巨大な大陸国家が最早世界のヘゲモニーを握れるような時代ではない。今や地球そのものが「島」だという認識の方が優勢になってきているのだ。

そうなると、かねてからこのブログで僕が具体的な解決策も見出せないままに主張してきた、「どちらの勢力にも一人勝ちさせない」ことがいよいよ重要になる。猫ほどに大きくなったネズミとしては、もう要所要所で政治に介入できる潜在力は充分にあるのだから。

平沼赳夫さんが、最近「今こそ日本の政治には健全な第三極が必要だ」とおっしゃったが、まことにその通り。僕も心からそう思う。しかし、それが具体的にどう実現できるのか、そこが未だ分からない。

語弊を恐れず本音を言ってしまえば、麻生さんは正直だけど頼りない。恐らくは総選挙後はクビだ。
由紀夫さんは今一信用できない。殊に最近はどんどん悪相になっている。家柄を考えると、あの人は政権を取ったら何をなさるか、どうも油断できない。
福島さんは以前からあの話し方が嫌いだ。それに政権を取ろうなんて気遣いなど皆無だ。
綿貫さんも郵政民営化の総決算ばかりで、「他に何があるんじゃい!」と言いたい。
志位さんと市田さんの言い分は一番理論だっていると思うのだけれど、昔むかし大した考えも無しに黒ヘルを被っていた自分としては、どうも無邪気には組し難いところがある。それにこの党が躍進するにはその歴史もさることながら、英語にした場合のJCPの「C」が問題だ。
渡辺さんは「みんなの党」などというネーミングじゃだらしないじゃないかと思う。
田中さんは、お父さんに大学の教養部時代に心理学を教わった事があり(単位はちゃんと戴きました)、当時から「康夫ちゃんはヘンな小説ばかり書いて」とお父さんの同僚で、僕の主任教授だった人から聞かされていたこともあって、キモイ!
平沼さんは、「健全なる第三極」発言は大賛成であるけれど、それ以外は筋金入りの保守政治家という印象だ。今の日本の政治家には珍しい気骨のある人だとは思うけれど、政治的主張に関しては僕自身に強い警戒感がある。それに、今度の選挙には僕が投票できるかどうかも選挙区の関係で不明だ。
後はよく分からん。

静岡大学の予測では、民主党が260議席超、自民党が160議席程度となっているようだが、さて島国の大ネズミとしては、どうすべきだろうか?





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最終更新日  2009.08.19 00:58:56
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