カテゴリ:小言こうべえ
◇ 10月21日(水曜日) 旧九月四日 己亥(つちのと い) 赤口:
【14年前の罪状?】 日本郵政の西川社長が亀井さんに詰め腹を切らされ、後任の社長には斉藤元大蔵事務次官が指名されるようだ。 亀井さんは郵政民有化に反対して自民党を離れ、次の選挙ではホリエモンを刺客として送り込まれるなど、小泉自民党にはさんざん煮え湯を飲まされた人なので、「小泉・竹中」体制の残滓にはさぞかし怨念をお持ちなのだろうという気がする。西川さんはあくまでも辞任という形にはなっているが、形式上はともかくも、事実上の更迭に違いない。 これに対して、自民党の政治家や財界の一部からは、「政治の民間介入だ」などという声も出ているが、これはおかしい。 現在の日本郵政の唯一の株主は国、つまり日本政府である。 大株主の方で、その主が代わって政策を転換したのだから、今までの政策に従って日本郵政を運営してきた代表取締役にお引取り願うのは、政府の介入ではなく民間の常識に過ぎない。むしろそうしない方が株主としては無責任というものだ。 西川さんも体調不良の中、社長を引き受けさせられて、一生懸命郵政事業の正常化に努めて来られた。その結果郵政事業の収益性も大幅に改善されてきているそうだ。「無理やり引き出され、体の不調をおして粉骨尽力してきた人間を切るなど、人倫にもとる!」というのは人情には訴え易いが、これも的外れだ。今回の社長人事は、西川さんの力量や人品骨格、まして名誉不名誉とは何の関係も無い。 郵政の政策転換とは、目的地に行くのに、今まで列車で行けと言っていたのを、今度はフェリーで行けとなったようなものだから、運行技術もロジスティクスも今までとは違うものが必要になる。それだけの事だ。 これは機能の問題であって、人格や個人の能力の問題ではない。 ところが、後任人事に関しても、機能と人格をごちゃ混ぜにしたおかしな批判が出てきている。 「後任に選ばれた斉藤元大蔵事務次官は、れっきとした大物官僚OBである。民主党の脱官僚政策とは矛盾するではないか!」という批判だ。これも自民党と財界の一部に多い。 竹中平蔵氏などは、「大蔵省の事務次官から東京金融先物取引所の理事長になったのを『天下り』というのです。それが日本郵政の社長になるのは『渡り』に他ならないじゃありませんか。民主党政権が自らそういうことをするとは!」とおっしゃるが、これはおっしゃる方のおつむの方がお粗末だ。 それにしても、いつから「官僚=悪人」という事になってしまったのだろう。 これは本来、官僚機構というメカニズムに対する批判であったはずなのだ。もっと云えば、そういう機構に依存し、時にそれに牛耳られて来てしまった政治家の、自己批判であったはずだ。 斉藤さんは大蔵省を1995年に退官なさっている。今から14年も前のことだ。よしんば大蔵省が悪人の巣窟で、そこのトップだった斉藤さんが悪人の元締めだったとしても、そこを出所してシャバで立派な業績を作っていらしたのなら、もう14年も経てば「犯罪人」ではないだろう。かつて「悪人」だったという経歴が終生付いて回るなどという理不尽な話は、刑法の世界にだってない。 斉藤さんは、大蔵省時代に小沢さんや藤井さんなどと近く、国民福祉税などを巡って、要するに現自民党とはソリが合わなかった人のようだ。自民党の反発や批判はそれを根に持っての事だという説もある。まんざら嘘でも無いだろうとは思うけれど、再び、そんなものは事実であれ誇張であれ、三流週刊誌のゴシップ記事の類で、だからどうなんだと、まともな人間なら真面目に取り上げるべきものではない。 「脱官僚」とはメカニズムの問題であって、「元」も含めて、官僚個々人を云々するようなものではない。もっと云えば、官僚機構におんぶに抱っこで、自分では動きもしないし国会での答弁も出来なかった政治家の側に課せられた大きな課題である。 そこを取り違えて、官僚=悪人のような思想が広がるに任せたり、国会で官僚が答弁するのを法律で禁じたりするなどというのは、政治家のだらしなさを棚に上げての愚かな報復である。そんな事をしていると、優秀な人材がどんどん官僚を志望しなくなり、日本の行政府は危機的状況になってしまう。 再々のことだが、今回の日本郵政の後任人事に対して、マスコミの報道に「見識」というものが全く見られなかったのにも、今更ながら失望を感じる。 何れにしろ、日本郵政は郵便事業や金融事業のみならず、以前の郵便局がそうであったように、行政サービスの窓口としての機能も再び求められる事になるようだ。そういう新方針の下で収益性も改善していくという難事業に、新社長がどうリーダーシップを取っていかれるか。斉藤さんが評価或いは批判されるべきはその一点であって、彼の「出自」や「過去の罪状」を云々するなどという次元の低い話で無い事は確かである。 【厚木語辞典】 その第三回 「あがく = 悪がく」 「悪ガキ」の動詞形。「あの連中、気に入らないことがあるとすぐ悪がくから・・・」などと使う。名詞形になると「ワルガキ」と変化する。→『足掻く』 「りふじゅん = 理不純」 理由が不純でむかつくこと。→『理不尽』 (類)理不順=生理不順の略 「しゅつらんのほまれ = 出卵の誉れ」 女性は子供を産める内が華だということ。閉経して卵も出てこなくなれば女としての名誉も無くなるという、厚木地方の俗信。最近では女性蔑視だという批判の大合唱が巻き起こり、声高には殆ど言われなくなった。 或いは、雌鶏が卵を産むことを褒め称えて云うことからも。 「厚木神社のお祭りの縁日で買ってきたひよこなのに、雌だったしこんなに大きくなって毎日卵を産んでくれて、本当に出卵の誉れよねぇ。」などと使う。→『出藍の誉れ』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.24 11:20:01
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