カテゴリ:薀蓄
◇ 11月12日(木曜日) 旧九月二十六日 辛酉(かのと とり) 仏滅:
【酉の市】 今日は一の酉。 酉の市というのは東京(首都圏)に来るまでは知らなかった。 私にとっての最初の酉の市は、浅草の鷲神社であった。知人に誘われて出かけたら、大変な人混みで近くの道端には機動隊の装甲車が待機していた。その中に「4」という番号の車を見つけて、思わず石を投げそうになった。警視庁第4機動隊は、当時は「鬼の第四機」といって、学生デモの鎮圧時の精鋭として悪名を馳せた。グレーに塗られた装甲車の前上部に放水銃の筒先を見たら、反射的に道端に落ちている石を探してしまったのだ。最初の酉の市は人混みと装甲車しか覚えていない。だから一体何の縁日なのかは知らなかった。 酉の市は日本武尊が鷲神社で戦勝を祈ったとか、或いは勝ち戦を祝ったことに因み、日本武尊の命日と云われる11月の酉の日に行われる。元々江戸時代から関東地方でのみ盛んな縁日だったそうだから、中部地方出身の私が上京して初めて知ったのも無理は無い。 中部地方では浜松辺りまで酉の市をやっているそうだ。関西では酉の市に代わって恵比寿講の方が盛んだそうである。 昔の暦では、十干十二支によってそれぞれの日に動物の名前が付けられていた。 十干というのは、陰陽道の五行説による。 それぞれ、「木」に因む「きのえ(甲)」、「きのと(乙)」。「火」に因む「ひのえ(丙)」、「ひのと(丁)」。「土」に因む「つちのえ(戊)」、「つちのと(己)」。「金」に因む「かのえ(庚)」、「かのと(辛)」。「水」に因む「みずのえ(壬)」、「みずのと(癸)」。 以上「木、火、土、金、水」という五行のそれぞれに、「え」(兄、陽という意味)と「と」(弟、陰という意味)がついて十干である。 五行のそれぞれを五角形の頂点に置いてそれぞれの頂点を結ぶと星芒形が出来上がるが、それに陰と陽を絡ませると、相性だの運勢だの色々なことが分かる、らしい。 そんな事を覚えていたり、知っていてどうなるの?と云われても困る。実際には十干を空で言える(私はこれが出来るのだ)事で何のご利益を被ったこともない。しかし、人間とは時々こうして意味の分からない事を覚えていたりするものである。 十二支の方は、例の「ね・うし・とら・・・」というアレであるが、名前の通り十二ある。十干と十二支を組み合わせると、両者の最小公倍数60で同じ組合せが戻ってくる。これを人間の歳と絡めると還暦という。昔は人生50年などといって、60歳になるまで生きられるのは幸運な事であったから、還暦の祝いというのは中々お目出度いものがあった。今は60歳まで生きることは珍しくも何ともなく、むしろ定年退職の歳としての意味の方が強いから、目出度いのかどうかは実感として良く分からない。 しかし十二という数字は、時間や方角にも割り当てられている。一年の月数でもある。そして60も1時間の分の数でもある。円周の度数にも関連する。だからこういったものをこねくり回すと、運勢とか相性とか、お日柄とか、行く方角の良し悪しだとか、色々な解釈をひねり出すことが出来る。4種類しかない血液型などというものよりは遥かに複雑で、神秘性も演出し易い。世の中の占い師には良い飯の種になるのである。 血液型もABOだけでなくRh+-とかM、Nとか絡ませると16通りくらいになり、もう少し説得力が出てきそうだが、第一自分の血液型をそこまで言える(分かっている)人は居ないだろうし、4種類くらいが巷の大衆には丁度いいのかもしれない。 因みに三の酉まである年は火事が多いといわれる。 酉の日は12日ごとにやって来るから、11月1日から6日のどれかが酉の日だったら、その年は三の酉まである事になる。そうすると、確率は12分の6で、均せば2年に一回は三の酉まである年になる。つまり、三の酉はそんなに珍しいものではない。 しかし、これを口実にして殊更に火の用心を心がけるようにするのは、決して悪いことではないと思うのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.11.12 15:01:56
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