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マックの文弊録

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2010.05.07
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カテゴリ:小言こうべえ
☆ 5月7日(金曜日) 旧三月二十四日 丁巳(ひのと み) 友引:

中学校や高等学校には生徒会というものがある。ここで今年の修学旅行は何処に行くかを決めるとする。その場合どういう状況が起こりえるかは概ね想像できる。

先ず生徒会議会の席では、必ず誰かが「此処で決める前にクラスに持ち帰って皆で相談する必要がある。」と言い出す。これには特段の意見も出ないから、そうすることになる。

各代議員は、この案件を持ち帰ってクラス会を開くことになる。そうすると、素直な生徒たちは、あそこがいいとか此処がいいと色々な場所を挙げるだろう。その内、「俺は修学旅行なんか行かないよ。勉強や塾が忙しくてそれどころじゃないよ。」という者も出てくるだろう。

クラスの意見なるものを集約した代議員は再び集まって、生徒会議会が開催される。1クラスが行きたいところはこれこれの票数で此処とあそこ、2クラスでは・・・・という風に各クラスの意見が議場に提示される。中々まとまらないから、再度クラスへ持ち帰ることを誰かが提案する。

再び各クラスでクラス会が開かれ、生徒会議会で1クラスは安芸の宮島が良いという意見が多数で、2クラスでは仙台の松島、3クラスは出雲が多くを占めた、などと代議員が発表し、トップ3の候補地からどれかを選ぼうなどとクラスに提案する。

そうなると、俄然クラス中が騒がしくなる。「えーっ!宮島ぁー?あんなとこ、お杓文字位しかお土産なんてないよ。ダッサーイ!」、「松島なんて、島があるだけじゃん!自然に出来た地形を見に行くだけなんて、修学旅行の意味がないじゃん。」、「出雲なんて、日本の神道の聖地じゃん!特定の宗教に偏向しているんじゃないの?それって、学校教育の宗教的中立性に違反するんじゃないの?」と百家争鳴である。

その内、中でも勉強が出来る、普段はネクラな真面目生徒が、「そもそも、何で修学旅行なんて行かなければ行けないのか?我々だってそれぞれに事情がある。良い学校への進学を目指して、塾を休めない者だって居る。○×君や△□さんなんかは(と、ここで何故か具体的な個人が名指しされる)、家の生計が苦しくて、お母さんを助けて毎日登校前と放課後には働いている。そういう人たちに、強制的に修学旅行に行けなんて権利があるのか?」と、いきなり深刻なことを言い出す。

一瞬シーンとなったクラスの中で、やがて一人の女性徒が「修学旅行は何処かへ行くだけではなく、皆と一緒になって行動することに意義があると思います。それぞれ事情があっても、何日かを一緒に過ごし、青春時代の良い想い出作りをすることは大事だと思います。」と発言する。クラスの女の子たちは、「そうよねぇ。」、「やっぱり、枕ぶつけなんて楽しいもんねぇ。」、「でも、お風呂も皆で一緒に入るのよ!」、「キャー、やだぁ!恥ずかしい。」などとてんでに話し出し、並行して「あそこが良い」、「此処がよい」という会話も始まり、修学旅行不要論を開陳した男子生徒は不機嫌に黙り込んで、クラス会は収拾が付かなくなる。

その結果どうなるか?
学年全体での修学旅行ではなく、クラス単位か、同じ目的地に行きたい者だけで小グループを作っての分派旅行になるかもしれない。或いは、最後の最後に生徒課の教師連中が乗り出して、「此処へ行くのだ!」と決めてしまうことになるかもしれない。いずれにしても、何らかの形で修学旅行は行われるだろう。
私は良く知らないが、文科省辺りで、例えば「教育指導要領」の中に「修学旅行は行うべし」と決めてあるのではないだろうか?

そうなると、喜んで出かける者も居るかわりに、仏頂面で参考書を持参して不承不承参加するものも居るだろう。或いは風邪を引いたり、親戚の誰かを病気にしたりしてサボる者も出てくるに違いない。
修学旅行ではなく、例えば「校区内の清掃奉仕」などがテーマであっても、本質的には変わらない。

米軍基地問題は、いよいよ「混迷の様相を呈してきた」と、連日マスコミは報道している。
民主党、沖縄や徳之島の方々、そして野党連中など、当事者の方々に対して失礼を承知で申し上げれば、このところの成り行きは、まぁ上に描いた生徒会のレベルに過ぎないように私には思える。

色々な意見を聞いていると、不思議なことに「米軍基地は悪である」という点では、少なくとも全員が共通している。悪とは云わないまでも少なくとも「迷惑なもの」という点では共通しているとはいえるだろう。誰も「軍を持たない日本としては、米軍の駐留は大変に重要なもので、一朝異変があったときに我々を守ってくれる有り難い存在なのだ」とか、或いは「現状の世界情勢下、憲法第9条を遵守するためには、同盟軍の駐留は必然なのだ」と、表立って明確には言わないのだ。

この点鳩山さんも言い方が下手だ。彼はほぼ上と同じ事を仰っているのだけれど、それでも発言の都度「沖縄の皆さんに多大なるご迷惑をおかけして・・・」とか、「多大なる犠牲を強いるもので・・・」とか、「ご迷惑」とか「犠牲」という言葉を連発なさっている。つまりは「米軍基地は厭で、迷惑で、在って欲しくない」という印象を植えつけているようなものだ。その上で「住民の皆さんには何卒ご理解を賜りたい」などと仰るものだから、云われた方は「はいそうですか」などという気持ちにはなれない。
「基地を引き受けてくださる土地の方々は、我が国の平和と安寧のために、崇高な使命を引き受けてくださるのだ!」くらいのことを仰れば良いのにと思う。そうでなければ「米軍基地はごみ処理場のようなものだ」というのと変わりはない。

閣内にいらっしゃる、かつて万年野党だった党の女弁護士党首は、まだグァムとかサイパンとか「国外」を仰っている。しかし、そうなった場合我が国を含む東アジア圏内での防衛上の具体的イメージはどうなるのかは、お示しにならない。「とにかく沖縄県内と国内は反対。後はアンタ考えてよ。」ということなのだろうか?

今や最大野党の自民党はもっと情けない。何より論点を逸らしている。「政府の方針不統一のために沖縄など現地の人に無用の混乱を招いている。」とか、「5月中に決着させると明言したのだから、それが出来なかったら総理は退陣すべきだ。」とか、あくまでも政争のレベルの話しかしていない。「自民党が政権を維持していたらこうしていた」、とか「再び政権の座に復帰したら、具体的にこうする」とは、谷垣さんも仰らない。

又別の野党は、「現在の米国追従の関係を破棄し、より対等な東アジア諸国全体での相互安全保障の同盟を樹立する」などと仰っている。これは間際になって、「そもそも、修学旅行なんて必要ない。」と言い出すのと同じだ。理念としては容認できるとしても、今この時点で持ち出す議論だろうか?

他人の出した意見に反論する、又は批判する、或いはイチャモンを付けるのは簡単である。大方の同情や情緒的な賛同も得やすい。しかし、責任ある立場には、他人ではなく自分で具体案を出すことが求められる。そして自分で具体案を出すことは、敢えて自らを批判に曝すことでもある。

学問の世界では、こういう議論をする際には境界条件というものを先ず定める。議論のテーマ、議論の目的、議論や推論の元になる条件などを定義し、議論がその範囲を逸脱しないようにするためのものが境界条件である。
昔、学校時代の数学の問題で「Y=・・・・の関係があるとき、Xの範囲が○~△であるとしてYの・・・を求めよ」というときのアレである。或いは「地球の人口が今後・・・・と推移するものとして、その地域的偏差は過去・・・であった事を考え、今から50年間の・・・・を考えよ。」といっても良い。

鳩山さんも、本当に「開かれ政治」を目指しておられるなら、基地問題に関してももっと早くにこれをやれば良かったのだ。例えば「我が国土の保全と国民の安全を維持するためには、・・・・だけの軍事力(防衛力)と防衛戦略上・・・だけの基地が必要である。現在米国軍の駐留基地は・・・・だけあり、我が国の自衛隊の基地は・・・に・・・ある。これを前提にして、今後10年間にわたっての最善の方策を講じる必要がある。」と境界条件をまず提示し、その上で「わが政権では・・・のように考える。より良いと思われる代案がある者は、具体的に申し出られたい。」とでも・・・。

由紀夫さんは政治家になる前は、東大工学部を卒業し、スタンフォード大学で博士号を取得し、東工大で助手、専修大では教授をお務めになった、いわば優の付くインテリである。インテリが、特に理科系のインテリが政治のような場での弱いのは、直ぐに持論を客観化して、それに対する例外事項や、反対論を想定してしまうところである。それが由紀夫さんの語り口にも現れている。他の大多数の手練手管に長けた政治家連中と比べて、少なくとも由紀夫さんには誠実さは感じられる。直接の当事者としての苦悩も看てとれる。しかし、それが同時に生徒会長としては弱みとして見られていることも確かだ。

制度上できるかどうかは分からないが、基地問題に関してはいっそ問題点を整理して国民投票にでもかけてみたらどうか。国民投票でなくとも、政府による緊急世論調査でもやったらどうか。世論調査は何もマスコミの専売特許ではないはずだ。内閣が今後の政治方針の関わる問題について、調査という形で広く意見を求めることはやってもいいはずだ。その際には、今やマスコミから「声なき声」みたいな扱いを受けている基地受け入れ賛成派の方々の意見も汲めるかもしれない。
そうでもしないと、いよいよ生徒課の教師が出てくる可能性がある。自民党などには、生徒課の強面の教師を表舞台に引き出して、それを理由に一挙に政権を潰しにかかろうとする意図や期待が看て取れるような気がする。

「中学校や高等学校の自治といっても、最終的には管理官、或いは監察官として隠然たる権力を持つ生徒課の指揮下での自治に過ぎない。そんなものは本質を糊塗した民主主義ごっこに過ぎない。」と、そんなことを言い出しそうだ。

現政権が生徒会のレベルだとは、独り由紀夫さんたちだけを言うのではない。国民も中学や高校の生徒会のレベルだという気持ちも私にはあるのだ。





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最終更新日  2010.05.08 11:59:00
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