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マックの文弊録

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2010.06.30
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カテゴリ:そこいらの自然
☆ 6月30日(水曜日) 旧五月十九日 辛亥(かのと い) 大安: 大祓い

スズメ目ムクドリ科に属するホシムクドリという鳥がいる。体調は約22センチと、雀よりはかなり大きい。ホシムクドリ。黒い羽毛に白い斑点が散りばめられ、それが夜空の星のように見えることからこの名が付けられた。ホシムクドリは主に北ヨーロッパからロシア方面にかけて、普通に見られ、日本には、主に暖かい西南地方に冬鳥として渡ってくるそうだ。我が国では少数の群れしか見られないが、ヨーロッパでは数千羽から時に数万羽の群れをなして住んでいるそうだ。

このホシムクドリは、最初は一羽から数羽の単位でばらけて飛び回っているのが、やがて何かのきっかけで群れを作り始める。やがて数十羽程の群れが出来るが、この程度の群れなら、日本でも雀やカラスなどに時折見ることができる。
しかし、ホシムクドリの場合は更に群集していく。最終的には、数千羽、時には数万羽のホシムクドリの大群衆が出来上がる。
それが段々収斂していって、集団にまとまりが出来始めるように見える。そして突然境界がはっきりして、巨大なアメーバのような形が明らかになる。アメーバは自在に形を変え、方向を変え、時に渦を巻き、まるで群れ全体が何かに操られているように見える。或いは、群れ自体が一つの意思を持っているように見える。見ていると美しいより怖さすら感じる。
この様子はYou Tubeで見つけた動画でも幾つかの例を観ることができる。
小さな動画で観ていてもすごい迫力だから、実際に目の当たりにするとさぞかし壮大な眺めであろうと思う。

同じような群衆行動は、小魚の群れでも見られる。最近では水族館でイワシの群れの集団群舞が見られるところもあるようだ。

こいうものを観ていると、集団としての統制とか、全体の意思というものを感じてしまうが、実はこういう群れにはリーダーが居る訳ではないのだそうだ。群れ全体を統制する「集団意思」とかグランドデザインのようなものがある訳でも勿論ない。

ホシムクドリの場合でもイワシの場合でも、一羽(一匹)毎に単純な行動規則に従っているだけなのだそうだ。ホシムクドリを例に取ると、一羽のホシムクドリは空中では、先ず飛んでいなければならない。(これは当たり前だ。飛ばないと鳥は落ちてしまう。)
一羽のホシムクドリに注目すると、飛んでいる最中にはすぐ隣にいる別のホシムクドリにのみ、行動の影響を受ける。私が考えるにその影響(行動規則)とはおそらくこういうものだ。

ホシムクドリ(の個体)は、前後左右上下に居る直近の個体に対して、なるべく接近しようとする。しかし、この距離がある範囲を下回ると今度は少し離れようとする(そうでないとお互いに衝突してしまう)。つまりは平均してある一定の距離を維持しようとする。そして、飛ぶ方向も隣の個体になるべく追随しようとする。そういう規則が働いている(つまりホシムクドリの脳にそうプログラムされている)。

その他に、障害物や脅威になりそうなもの、例えば、ハヤブサやタカなどの捕食鳥の影が見えると、飛ぶ方向を変えようとする。障害物などが無い時には、飛ぶ方向はある範囲でランダムに変化する。
私は一羽のホシムクドリはこういうプログラムで飛んでいるだろうと思うのだ。
こういうプログラムはホシムクドリであれば、全ての個体に共通しているはずで、これを一羽のホシムクドリから数千、数万のホシムクドリにコピーすれば、全体としては動画に見られるような行動になるのだろうと思われる。

この場合大事なことは、群れに指揮者とかリーダーが居るわけでもなく、集団としての意思などというものは必要が無いということだ。

もう一つあるとすれば、単独か数羽の単位で飛んでいる時にホシムクドリの脳の中で動いているプログラムは恐らくは別物で、群集化してくるとある時点で上に述べたプログラムが突然起動されるということではなかろうかと思う。つまり、群集化すると一種の「相変化」が起きるということだ。

こんなプログラムを作ることはそう難しいことではあるまい。一羽のホシムクドリをプログラムして、それを数千~数万回コピーして、コンピューター上でどんな振る舞いが見られるか、やってみると面白いだろうと思う。私は残念ながら、最近のコンピューターのプログラムを勉強していないので出来ない。

こういう現象は、ホシムクドリの集団だけでなく、他にも色々の分野で見られる。
ある種の重合体に放射線を当てると、特定の場所の結合原子が欠落し、その場所から分子が枝分かれしたように伸びていく。そしてこの枝(これをGraftという)は、別の場所で同じように原子が欠落した場所をまるで「探し出すように」伸びていって、そこで結びつくのだ。その結果重合体同士は、網目構造を形成して、ネットワークのような状態に「組織」される。
これは、新しい素材として身の回りでも焦げ付かないフライパンや鍋などとして利用されている。

人間や動物(植物でも同じである)の体の出来方においてもそうである。例えばDNAは二重ラセンという構造を持つが、これもDNAを構成するアミノ酸分子の一つ一つが、相互作用しあって自動的にそういう形を形成するのだ。
もっと云えば、たんぱく質から指や爪が出来ていく過程も、木の芽から枝が伸び、その枝が分かれていくのも、同様の仕組みなのだ(そうだ)。

つまりは、全ては局所的な出来事の集積であり、局所的な出来事はローカルルールに従っているに過ぎない。それがある段階になると相互にネットワーク化され(たように見え)、つまりは「相変化」を起こし、全体として我々に何か意思あるもののように、或いは「誰かによって意図され、設計された意匠」に従うように思わせる結果を生じるということなのだ。

私は似た話を、東南アジアに生息するホタルを例にとって、このブログに書いた。約4年前のブログ「コーラスする蛍」である。

これは、別の言葉で「集団の自己組織化」などとも呼ばれている。少しそういう見方で周りを見回してみると、いろいろな分野で同じような現象を見ることが出来る。
残念ながら昨晩パラグアイに負けてしまったが、岡田ジャパンにも、この「ローカルルール」や「集団の自己組織化」を見て取ることができそうな気がする。

更に云えば、今回の参議院選挙もそうだ。
「選挙で民意を問う」というのは、ホシムクドリの群れの動きを政治に反映させるということと同じなのかもしれない。
そうなると、マスコミの報道の仕方は、我々ホシムクドリの集団には、きわめて重要な影響を及ぼすものだということになる。
ところがマスコミ自体、ホシムクドリではなく雀の集団のようなものだから、この点大いに肌寒い思いがしてくるのだ。





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最終更新日  2010.06.30 14:00:34
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