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☆ 9月26日(日曜日) 旧八月十九日 己卯 友引: お彼岸明け
《《尖閣諸島問題と「国益」 その(1)》》 日本が中国「漁船」の船長を拘留し、その後処分保留のまま拘留期限以前に釈放した件では、昨日の私の「菅さんへのご提案」は残念ながら間に合わなかったようだ。私はたまに(ごくたまに)良いことを考え付くのだが、いつも遅きに失してしまう。どうもそれが私の定めらしい。 しかしこれが、時期を得たものとして採用でもされれば、今頃私は表舞台に引きずり出されているか、或いはテレビへの出演依頼が殺到して、いずれにしても大変なことになっているだろう。そんなドタバタに巻き込まれるのは真っ平だと思うから、タイミングを外してアイデアが出てくるのは、私の天性の防御本能だろう。 悔しいからそう思うことにする。え?単なる妄想? 何れにしろ、どう思おうと私の自由だ。そうだろう? それにしても尖閣諸島にまつわる一件は、今や二つの面が絡み合った形で色々言われている。 一つは、「日本の国益を損なう」という論点から。もう一つは「検察という司法機関が、司法判断に政治を混入させた」という論点から。 後者は、折からの厚労省の村木さんの裁判にまつわる、特捜検事の「不祥事」の件もあって、これは今後国会でも問題になるだろう。野党には格好の民主党政府攻撃の材料が出来たわけだ。 【国益とはなんだろう?】 さて、「日本の国益を損なう」という件だ。 昨日の私のブログには「平塚さん」という方から同趣旨のコメントを戴いた。「平塚さん」は、「民主党は売国政権です。・・・政権の再交代を早く進めるしかないと思う。」とえらく憤っていらっしゃる。 おそらく平塚さんと同じような印象を持っている日本人は、現在相当数いらっしゃることだろう。今自民党が主催してこの件に関する世論調査をして、巧く公表すればかなりのプロパガンダになるだろうな。 ところが、私自身はこの「国益」というのが、どうにも良く分からないのだ。 こんな事を書くと、「何を馬鹿なことを!国益とは日本国の利益になることじゃないか!日本人の癖にそんな事も分からんのか、愚か者!」と、石原都知事辺りには怒鳴られそうだ。 ある種の緊張が醸されている中で、威勢のいい、歯切れのいい意見は、とかく大衆を昂揚させる力を持っているから、私が今こんな事を書くのは極めて分が悪い。 「頭でっかちで理屈ばっかり!そんな事を言っている場合か?」・・・だって、本当にすっきりしていないのだからしょうがないじゃないか。 「国益」は国の利益だというのは、漢字のままだ。ただし、それだけでは国語のテスト以上の意味を成さない。これを腹の底で理解できるためには、先ず「国とは何(誰)のことか」をはっきり理解する必要がある。国とは政体のことなのか、民族(これまた定義が難しい)のことか、国民のことか、あなたのことか、又は私のことか? 「日本人」と一言でいえば簡単だが、実際は一言で括るには、この国に居る一億二千万人は余りに多様である。とても十把一絡げに言えるようなものじゃないだろう。 また、「利益」もそうだ。 具体的な利益なのか、抽象的・原理的な利益なのか?短期的利益なのか、長期的利益なのか? 特に短期的利益と長期的利益は、互に相反するのがむしろ一般である。 昔、仕事上の大先輩から、「商売は誰かに損をさせる努力のことだよ」と喝破されたことがあり、それが今でも私には強烈な記憶として残っている。これについては、私も今では真理だと思う。 お金や、資産、資源は有限だから、私が得をすればあなたは損をする。私達が利益を得れば、他の集団が損をする。これがもっと大きなスケールになると、人間の利益になることは、他の生き物達の不利益になる。人類が更に資源そのものを拡大獲得しようとすれば、地球が損をする(損なわれる)ことになる。 地下資源は地球誕生以来45億年の年月の中で、蓄積されたものである。人間が掘り出すまでは、地下深くで、エントロピーの低い状態にある。(エントロピーは「乱雑さの度合い」とでも思ってください。)これらを掘り出して精製加工し、別の資源からのエネルギーを投入して人間が使えるように、「自由エネルギーの高い」状態にする。そしてそこから自由エネルギーを取り出せば(つまり人間が利用すれば)、結果はエントロピーの高い廃棄物が出る。「公害」の誕生である。 エネルギー資源だけでなく、今話題のレアメタルやレアアース、或いは鉄やその他の素材資源についても同様のことが言える。素材資源については、地下でも海底でも、自然に集積されていたものが、収拾が付かない(つまり再利用できない)程の広範囲に散逸する(エントロピーが増大する)ということだ。あなたが捨てたパソコンやデジタル家電製品に使われていた金、携帯電話に使われていたレアメタル、ボタン電池の中のリチウムなどは、今頃何処かでゴミの中に埋もれているのだ。これらは一生懸命資源ゴミとして回収しても、恐らくは全体量の数パーセントも再利用されることは無いだろう。 これは詰まるところ、短期的には得をするけれど、長期的には(資源枯渇や環境汚染などで)人間も地球も損をすることになる。そうはいえないか? そうなると人間は、元々自分達がいつまでも居るわけじゃないという「予感」に基づいて、「こっちが生きている間だけで良いじゃないか。後は野となれ、山となれ。」とばかりに、長期的には(それ程長期でもないかもしれないが)滅亡の道に向かって歩んでいることになる。 いやいや、つい話が大きくなりすぎた。 つまりは「利益」とは「損」と裏腹だということです。 ともあれ、そうすると尖閣諸島問題で、日本が大方の大衆の「気持ち」通りに「国益」を貫くことは、そのまま中国に損をさせようとすることになるな。・・・なるほど。 「だって中国はその通りのことを日本に仕掛けてきたんじゃないか?それを日本はむざむざと見過ごせって言うのか!そういう姿勢を国益に反するというのだ。」・・・ふむふむ。 ってことは、負けずに喧嘩しろってことなのか?で、尖閣諸島が日本の領土だと中国が認めたら、それでいいの? いよいよ「軟弱な非国民!」と糾弾されそうになってくるが、私はついそう考えてしまうのだ。 【中国の本心】 「哲学的」(というより科学的だと私は思うけれど)な話を無理やり離れて、現実的に考えれば、私は今回民主党政府や検察庁がとった行動に関しては、今のところ間違っていないと思う。 問題はそれの公表の仕方、或いは演出の巧拙にあると考えるのだ。 尖閣諸島の問題は、領土問題というより政治・経済の問題だ。 この地域には豊富な海底油田(また埋蔵資源だ!)があると期待されている。さらに言えば、もっと南の南シナ海にも、海底油田の可能性を強く秘めた地域が広がっている。 これからの時代、世界における経済の覇者として君臨したい中国としては、たとえそれが国際世論や国際法上牽強付会な理屈であっても、何とかこの地域での権利を確保したいと考えている。 かつて中華思想の下、永く栄えある歴史を誇ったこの国は、近世になってから欧米の強国の所為で(最後には日本もこれに参加しようとしたが)散々な目にあい、二等国三等国の地位に貶められてきた。 それが近年になって漸く経済に活路を見出した訳だ。以前であれば欧米強国の簒奪するがままに任されていた領土も資源も、時代が変わった現在ではそんな勝手は許されなくなった。 トウ小平(楽天では漢字が機種依存文字だそうです。カタカナで失礼します)の登場以来40年余りにわたって、中国は経済発展を旨として来た。根底は相変わらず史的唯物論にあるとしても、共産党は最早伝統的共産主義を踏襲していない。今や「経済は政治に優先する。」が国是である。狙いは新たな形での「中華覇権思想」にあるように私には感じられる。 中国共産党の一党指導下、12億の人民を背景に、一方では「世界のマーケット」として「先進諸国」に市場を提供し、「世界の工場」として安い労働力や生産拠点を提供し、そしてこれからは、「世界のエネルギー・素材資源の提供国」を目指そうとしている。 購買力と、労働力、生産のための「空間」の世界への供与という面である程度の地歩を固めたから、今度はより根本的な分野での地歩を築こうというわけだ。 尖閣諸島の件でも、中国はこれらの島々を本来の意味で「領有」したいと思っている訳ではないと私は思う。一人で油田開発をするのでは、金がかかりすぎる。それじゃぁ面白くないから、日本を巻き込んで、有利な立場で共同開発に持ち込み、互恵共存の名分の下で、日本の技術と資金を引き出したいのだと、私は思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.09.26 15:26:37
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