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☆ 9月26日(日曜日) (2)
《《尖閣諸島問題と「国益」 その(2)》》 【余談:パンダの話】 突然ですがパンダです。パンダはワシントン条約(絶滅の危機に瀕している野生動植物種の、国際商取引に関する条約)によって、国境を越えての売買や譲渡が禁止されている。 じゃ、日本に居るパンダはどうしたんだ、というと、以前上野動物園には中国から譲られたパンダが居た。しかし、リンリンが亡くなってから、日本国籍(?)のパンダは日本には存在しなくなった。 現在、日本には上野動物園にも、他には神戸市立王子動物園、それに和歌山のアドベンチャーワールドにパンダが居るが、これらはどうしたのだろう? 彼らは「レンタルパンダ」なのだ。 上述のワシントン条約の規制で、パンダの売り買いは出来なくなった。パンダはあの白黒模様が可愛くて、日本のみならず世界中で人気がある。中国からすれば、世界中に「新生中国」のイメージを売り込むには絶好のものだったのだ。世界の覇者となるには、かつての中国にまつわるイメージを払拭しなければならない。この点パンダはうってつけだ。「パンダ外交」という言葉があるくらいで中国は積極的にこれを展開してきたのだ。それが出来なくなったのだ。 そこで中国は考えた。パンダをレンタルするのである。ワシントン条約では、商取引は禁じているが、「学術上の研究のために、貸与する」ことは許されている。これを利用して、各国の動物園を「研究機関として」、そこにレンタルすることにしたのだ。 レンタルというからには、有料である。聞くところによると、パンダのレンタル料は一組につき一億円だそうだ。このレンタル料は中国に支払われ、パンダの保護と種の維持研究用に使われるという名目だそうだが、どうもどうだかねぇ?と、勘ぐりでもしたくなってしまう。 それでは、日本に居るレンタルパンダに赤ちゃんが生まれたらどうなるか?人間の場合には赤ちゃんの国籍は選べるのだが、パンダの場合は、日本で飼育されたパンダ夫婦から、日本で生まれた赤ちゃんであっても、中国籍のままなのだ。つまり、何れは(要求があれば)中国に返却しなければならない。 和歌山のアドベンチャーワールドでは、この8月に双子のパンダの赤ちゃんが生まれ、今名前を募集しているそうだが、写真を観ると実に可愛い。でもこの子達は中国所有のレンタルパンダだと思うと、少し複雑な気持ちになる。この子達にもレンタル料一億円が支払われたのかどうかは、私は知らない。 それにしても、こういうところでも中国は疎かにしない。流石にしたたかな面がここにも見えると思うのだが。 因みにアメリカで「Panda hugger=パンダを抱きしめる人」というと、「親中国派」という意味に使われる。この言葉には、揶揄と多少の警戒感が込められているのだ。 【アメリカと中国】 さて、私の「勘ぐり」が間違っていないとすると(多分間違っていないと思うのだが)、先のアメリカの発言も含蓄が深くなってくる。「尖閣諸島に関する事案は、日米安保条約の対象でもある」という発言だ。 アメリカは建国以来孤立主義を掲げており、世界の紛争に首を突っ込むことは避けてきたが、先の大戦以来姿勢を変えてきている。特にソビエト崩壊後は、「世界の警察官」を自任して、あちこちに首を突っ込み、あらゆる面で世界のリーダーたろうという姿勢を明らかにしてきた。 しかし、元来自分自身の覇権構想に基づいて言い出した「グローバリゼーション」が、結果的には不可避的に単独での覇者であり続けることを不可能にしてしまったため、多国間協調に宗旨替えを余儀なくされた。今や経済的にも、政治的にも「パックス・アメリカーナ」は過去のものである。軍事力を背景に戦争しようといったって、政治的にも経済的にもコストに見合わない。特に中国に対しては、潜在マーケットの大きさという意味でも疎かに出来なくなっている。 その中国が、膨大な軍事費を費やして、東アジア地域での覇権を握ろうとしている。 今年7月に開示された中国人民解放軍の内部報告書によれば(ソース:共同通信)、中国の2010年度の軍事費は、これまで公表されてきた「国防費」、5,321億元(約6兆9千億円)よりも多く、実際にはその約1・5倍に上る7,880億元(約10兆2千億円)と明記されていることが分かった。更にこの軍事費は10年後にほぼ倍増、20年後には3倍増となると予測されているのだ。 アメリカの軍事予算は、2008年度の概算で約6,500億ドルと推測されている。今の為替レート(≒85円)で換算すると、55兆2千500億円ということになる。中国の軍事費はアメリカの約5分の1程度ということになるが、これは一国としてはきわめて突出した額である。勿論、世界の軍事費レースでは、第3位以下を遥かに抜き去って、堂々の世界第2位であるのだ。しかもこの勢いで行けば、軍事費の額では、数年後に米国と肩を並べることすら考えられる。 日本は?・・・日本は憲法第九条の下、軍備を持っていませんので、軍事費もありません。というのは建前で、ちゃんと軍事費は防衛予算としてあるのだけれど、その額は上とは比較にならないので書きません。 こういう中で、中国の東アジアでの、演習も含めての軍事行動は先頃より随分活発になってきている。特に南シナ海という領有権の錯綜している(潜在的)海底油田地帯では、実際の軍事衝突も一度ならず起きている。だからアメリカとしては放ってはおけない。同地域に利害を持つASEAN諸国への急接近をはかり、ASEANとの連帯の下に中国を牽制しようと、そしてその結果自らの利権・権益も守ろうというわけだ。 尖閣諸島は南シナ海からは、台湾を隔てて「目と鼻の先」のところにある。だからアメリカとしても今回の件に関しては、日米安保条約で日本を庇護下に置くというよりは、東アジア戦略の一環として座視することが出来ず、自らの存在感を中国に対して主張する必要があったのだ。 【じゃぁ日本はどうするの?】 中国としてもアメリカとしても、この地域での軍事行動を起こすことは本意ではないと私は思う。何より軍事行動=戦争は人的のみならず経済的にも「損ばかり」することになり、とてもコスト的には引き合わない。 従って要するに、問題は「駆け引き」である。 今の時代、中国共産党とて「独裁断行」は出来ない。世論も無視できない。あの北朝鮮だって金正日さんが独断専行できず、党代表大会だか何だかが延期されてしまったくらいだ。だから、今回中国での反日デモなども、妙におとなしく「世論や世界に対するポーズとして、党によって背後からコントロールされていた」と観測する人も居るそうだ。 「漁船」船長の釈放後、日本に対する謝罪と賠償を求め、これを日本政府が拒否すると、今度は再度中国外務省が「謝罪と賠償」を求めてきている。しかし、今度の場合、表現は微妙に変化しており、「中国は謝罪と賠償を求める権利がある」となっている。「権利がある」のであって、具体的にそれを要求しているのではないのだ。 「これは、中国からのシグナルであって、日本に対して圧力をかけつつ、『さぁこの辺で手をうつことにしようじゃないか』と言っているのだ」と、誰かが言っていた。 そういうことを思えば先に書いたように、那覇地検や日本政府の姿勢は、今のところ間違ってはいないと私は思う。問題はこれからである。 アメリカやASEAN諸国との連携を密にし、国際世論も大いに活用して、世界のしたたか者にどう伍していくか。民主党政府の諸賢には、大いにこの駆け引きとパフォーマンスには意を砕いて、タイミングを逸することなく活動して欲しいと思う。 我々国民も、中国側の、言うならば「挑発」にうかうかと乗せられて、俄かに「過激な愛国者」になっている場合ではない。中国からすれば、日本国内でのゴタゴタは大いに歓迎するところだろうからである。 今の時点、日本を代表するのは民主党政府である。彼らに然るべく毅然と、然し賢明な対処をしてもらうには、民草としては、当然の批判はするとしても、同時に支援も与えるべきものと私は考えるのだが。 【再び国益とは】 それにしても、今回の件で、中国側が繰り出してくる「報復措置」に対して、我が国が抗議とか拒否以外に何らの手段を持たない事が、大いに気になる。 資源や軍事力を潤沢に持たない国である以上、我が国は技術力や創造力、そして将来に対する理念という点で、世界に冠たる秀でたものを追及していく必要があると私は思う。 「世界で一番じゃなくちゃいけないのですか?二番じゃどうしてダメなのですか?」、「もう他の国は同じものを持っているのだから、それを使わせてもらえば良いじゃないですか!」などという考え方は言語道断である。 優秀な人材を養成し、学問であれ、技術であれ、未踏の領域に挑むシステムを整備することこそ、迂遠であるように見えて実は本当に「国益」に適うものであると、私は思うのである。 考えてみれば、今の中国は、日本が明治時代にやっていた「富国強兵」をなぞっているに過ぎないではないか。富国強兵の行き着くところは、我々は既に我が歴史として知っているのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.09.27 11:40:07
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