カテゴリ:よもやま話
【11月4日(金曜日) 旧十月九日 癸亥 赤口 月齢8.3 亥の子祭 炉開き】
今日は、旧暦の十月の初亥の日である。 お茶の世界では、この日に夏の間使ってきた風炉(ふろ)を閉じて、炉を使い始める。そして、初夏の頃に摘んで寝かせておいた新茶を点(た)てて服(の)むという仕来りがある。従ってこの日を「茶人正月」ともいっている。 今では茶道は、一般の人にとっては日常から遠いものになってしまったが、明治の頃はちょっとした家には、簡単なものであれ茶道具くらいはあって、本格的な炉とはいわないまでも火燵は必ずあった。従って炉開きは一般の家でも結構行われていたようだ。 炉開きは、俳句では冬の季語で、漱石先生にも、炉開きに因む句がある。 炉開きや 仏間に隣る四畳半 又この日には、亥の子餅といって餅を食べる習慣があった。イノシシは多産の動物で、子孫繁栄を祈り万病を退けるシンボルでもあったのだ。餅といっても特定の種類を指定するものでは無く、鎌倉時代の事典『二中歴』に、「亥の子餅七種」といって、「大豆・小豆・大角豆・胡麻・粟・柿・糖」などとあるから、要するに餅であればどんなものでも良かったらしい。 再び漱石先生には、亥の子餅の句もあって、 花嫁の 喰わぬといひし亥の子哉 うら若き花嫁はやはりダイエットが気になって、折角の縁起物の亥の子餅も遠慮したのだろう。 これら二つの句は、共に明治28年の作。漱石先生28歳の時の句である。 更に炉開きには、同じ名前の花がある。日本原産の椿の仲間で、ロビラキは小さな花を咲かせる。お茶の世界では椿の花は人気があるようで、ワビスケ(侘助)などもそうだ。冬の茶会の席では椿だらけになる場合もあり、椿の花は「茶花の女王」などとも呼ばれる。 炉開きも亥の子餅、亥の子祭も、元々は中国から伝来した玄猪(げんちょ)の儀式に由来し、陰陽五行説にその根拠を持っている。 日本では宮中の儀式から、鎌倉時代に民間の行事として定着したらしい。そして、現代では徐々に再び忘れ去られようとしつつある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.11.04 14:31:12
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