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マックの文弊録

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2012.04.21
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カテゴリ:そこいらの自然
【4月21日(土曜日) 旧壬辰閏三月一日 壬子 先負 月齢29.5朔】

昨日は二十四気の第六、「穀雨」。
この時期の雨は激しくは降らない。しとしとと優しく降り注ぐ雨が、百穀物を潤し育てるというので穀雨。なるほど、最近は良く雨が降る。春の天気は周期的に変化するが、心持ちそれ以上に目まぐるしく天候が変わっているように思える。今年の暦には閏月が有って、今日は旧暦閏三月の朔日。新月である。
ところで一昨日、東京天文台と理化学研究所の共同研究チームから、少し気になるニュースが飛び込んできた。太陽活動の変化に関するものだ。
太陽の黒点の数が減少しつつあって、近い将来太陽磁場が四重磁極構造になる兆候が見られるというのだ。
太陽にも地球と同様に、北極と南極がある。太陽の北極での磁場はこれまでマイナスであり、南極のそれはプラスであった。地球の北極は磁石のN極を引き付け、南極ではS極を引き付けるのと同じである。磁石には必ずN極とS極が対で現れ、これを「双極」というが、太陽でも長い間磁場は北極と南極で双極状態であった。
ところがこの磁極は相互に入れ替わることがあり、地球でも北極と南極の磁極が転換する現象は、過去(といっても随分昔のことだが)に何度もあったことが知られている。太陽ではこの現象がほぼ11年周期で起こってきた。
日本では我が母なる恒星太陽の謎を解明するために、2006年に太陽観測衛星を打ち上げた。その名も「ひので」。以来「ひので」は6年間にわたって、太陽を観測し続けている。その「ひので」による太陽両極域の磁場の観測によると、今年の1月には北極の磁場はほとんどゼロの状態に近づいていることが発見されたというのだ。
これは、太陽北極磁場が間もなくマイナスからプラスに転じる兆候だ。ところが同じ時期、南極磁場には変化が見られず、相変わらず安定してプラスのままであることも分かった。そうなると、太陽の両極共にプラス極の状態になる訳で、その場合には釣り合いの維持上、太陽の赤道付近にマイナス極が二つ出来て、「四重磁極構造」になるということになる。これは世界に先駆けたわが「ひので」による大発見だそうだ。
太陽の磁場「それがどうした?」
このところ太陽の極小期が長く続いたことや、太陽活動がこの前の11年周期に比べて低調に推移していること、更に加えて太陽の大局的磁場が四重極構造になる兆候が見つかったことは、太陽の内部で磁場を生み出すダイナモ(発電)機構に変動が生じていることを示している。

だから再び、「それが何なのだ?」。
実は17世紀半ばから18世紀にかけても、同じように黒点が少なくなる現象が起こっていた。発見したイギリスの天文学者Edward W. Maunderに因んで「マウンダー極小期」と呼ばれる。この時には、太陽活動の低迷期は1645年から1715年までの60年間にわたって続いたが、それと今回の太陽の様子が良く似ているのだそうだ。

しつこいけれど、「それが一体何なのだ?」
マウンダー極小期には、地球は寒冷期にあった(小氷期と呼ばれることもある)のだ。この時期ヨーロッパや北米など、地球の温帯地域では寒冷な気候が続いた。冬は厳寒となり、人々は真夏でも寒さに震えるような具合だったそうだ。わが国ではこの時期は江戸時代である。江戸時代は寒冷な気候であったことが知られている。天候不順や冷夏による飢饉も何度か起きている。
太陽はこのところ黒点数が減少したり、11年周期が延びる傾向にあるなど、幾つかの異変が続いており、この状態が今後も継続したとすると、太陽はマウンダー極小期のような時期に入ったと考えられるのだそうだ。これは「ひので」の観測結果を解析している東京天文台などによる発表だ。そうなると地球はこれから寒い時期に入るのか?世間では地球温暖化が叫ばれて久しいというのに?
・・・実は、太陽活動とわが地球の気候の相関については、まだ良く分かっていないことの方が多い。一言で太陽活動の変化といっても、それには様々な現象が伴う。それらがどのように、どの程度地球気候を変動させるかというのも不明な点の方が多い。だからマウンダー極小期の再来が、すぐに地球に寒冷な気候をもたらすことに繋がるかどうかは分からないのだ。それに20世紀以来、地球の気候には人間が及ぼす影響の方が大きくなっているのは良く知られている。
太陽も地球も、なべて自然は「生きている」。21世紀になって我々は、「複雑なものを、複雑なものとして総体的に理解すること」の重要性を学び始めた。それによって「謙虚であること」の躾を自らに課すことの必要性を(これは未だ「全員が」とはいえないけれど)感じ始めている。
ひので君太陽についてそれを知らせてくれるのは、日本人が打ち上げた「ひので」君である。営々と倦まずに観測を続け、律儀にデータを送り続ける我が「ひので」君の努力(?)を多としたい。
今からちょうど一ヵ月後、日本の各地では(晴れていれば)金環食が見られる。日本の大部分の場所では中心食が観られる。東京では5月21日(月曜)の午前7時32分頃から、約5分間金環食状態を観ることができる。この前に東京(江戸)で金環食が観られたのは1839年(天保10年)、蛮社の獄が起きた年だ。つまり、高野長英が江戸で観たかもしれない金環食を173年後に我々が観られることになる。
マウンダー極小期が再来するかもしれない太陽と、ひので君に思いを馳せながら観ることを楽しみにしよう。





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最終更新日  2012.04.21 20:22:32
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