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マックの文弊録

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2013.06.16
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【6月16日(日曜日) 旧五月八日 癸丑 赤口 月齢7.5】

長澤蘆雪の山姥図。水墨画を軸にしつらえてある。
墨で描かれた画も、古くなって黄ばんだ紙が背景にあるから、全体に濃淡が淡くなっている。これを古色というのだろう。
しかし、古色は件の書画が経てきた時間や空間を体現しているのだから、ありがたさはあるが、書家や画工が描いた当時の意図を時の経過で修飾してしまう恨みがある。

私は蘆雪の山姥図の前に立ち、しばし想像を遊ばせる。
先ず紙の黄ばみを取り去り、おろしたての和紙の白に画の全体を置くのである。
向かって左手には、山水画に良くある筆調で山が描かれている。山のやや右手に月が墨で描かれている。
それを背景に、前景中央にもっと大きな山、というか岩なのだろうか、が描かれる。岩の淵には矮木が生えている。
yamauba
そして山姥。
右手を地面に突き、左足を立膝にしている。ざんばら髪でひどい乱杭歯だ。これは蘆雪の山姥図の特徴で、極端な乱杭歯は少し滑稽に思える。
山姥の前には鎌が放り出され、左膝の向こうには蔓で編んだ篭があり篭からは、恐らくは柿であろう木の実が覗いている。

古色にまみれている時は余り目立たなかったが、山姥の唇から歯茎にかけてと、篭から覗く柿の実には微かに朱が入っている。それが古色を払拭すると、俄然威力を発揮し、画を一層迫力あるものにするのだ。

蘆雪はこれを描きたかったのだ。応挙門下の蘆雪は一種の際物師では無かったかと思う。朱が入ることで画にはより具体的な迫力が増すが、同時に下品にもなる。

私の想像による古色払拭は、今のデジタル技術なら充分可能な筈だ。
紙の色や質、墨や顔料の元々の色合いなどを復元して、完成した刹那の画を見ることは、原画を傷つけること無しに出来る。彫刻や建物など、他の芸術作品も同様だと思う。

上は東京藝術大学美術館で開かれている、夏目漱石の絵画世界展の会場での印象である。
(因みにブログに掲載の画は会場で私が観た「山姥図」ではありません。)





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最終更新日  2013.06.16 09:47:25
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