こんにちは、国際課欧米交流係です!
北海道がアメリカのマサチューセッツ州と姉妹提携を結んで30周年を迎えた2020年から、マサチューセッツ州に関する様々な情報を発信しています。
今回は、池田町出身の藤原志帆子さんからいただいた、ご自身の経験を綴った文章をご紹介します。藤原さんは、人身取引被害者を支援する団体を主催していた際、研修のために過ごしたボストンで多くの刺激を受けられたそうです。ぜひ最後までお読みください!
私は北海道の池田町で生まれ育ちました。子どもの頃の楽しい思い出は、家族で北海道中を巡った夏のキャンプです。その後、帯広で高校2年まで過ごし、最後の1年は交換留学で米国の高校に行きました。大学は米国中西部のウィスコンシン大学を卒業しました。大学在学中は多くの友人に刺激を受け、たくさんのボランティアなどに参加しました。在学中、大学のあるマディソン市が帯広市と姉妹都市になるという嬉しい出来事もありました。アメリカの抱える社会問題(貧困や人種差別など)について、授業よりも友人たちの地域活動から学びました。
卒業後は首都ワシントンDCのNPOでインターンをしました。そのNPOは、売春や強制労働のために人が売られる人身取引をなくすための団体でした。人身取引は犯罪産業の一つで、弱い立場の人々が利益のために利用されています。
その後、2004年に帰国し、NPOの日本支部として、人身取引被害者のための団体を東京で立ち上げました。団体開設と同時に始めた相談電話には、アジア各地や南米などから連れて来られ、日本の風俗店で望まない性労働を強いられている女性たちからのSOSが届きました。地道な活動が実を結び、徐々に政府や関係団体からの信頼も得るようになりました。支援職や警察官、入管職員向けの研修依頼も多く受けるようになりました。北海道の警察や高校などにも呼んでもらい、研修をさせてもらいました。
女性の性被害をなくすためのキャンペーンに参加(右端が筆者・2018年)
2010年頃から、外国人だけはなく、10代の中高校生からの被害相談も多く受けるようになりました。割のよいアルバイトの面接に行ったらAVメーカーの会社で、学生証を取り上げられビデオに出演させられたという学生や、スマホゲームで知り合った人に脅されて裸の写真を送るように脅されているという中学生など、北海道から沖縄まで、全国の若者から相談を受けました。子どもへの性暴力の実態を政策に届ける活動も続けてきました。
そんな私がなぜマサチューセッツ州につながったかというと、ある研修に参加したからです。ボストンで4週間のリーダシップ研修を受ける機会をいただきました。
ボストンダウンタウンからの眺め
勢いも資金力も存在力もある米国の市民セクターと比べて、日本のNPOは資金力も社会的な意義も軽視されているように感じながら活動してきました。活動開始時期は「あれ?こんなに大変なの?」と驚くことも多かったです。なかなか資金が集まらず、自治体からの信頼やコラボレーションも「前例がない」から生まれないなど、がっくりくることも多かったです。
なんとか先行事例や突破口を勉強したいという気持ちで、ボストンのフィッシュファミリー財団が主催する女性リーダー向けの研修に参加したところ、素晴らしい出会いをたくさんもらいました。
ボストンは教育水準も高く、ITや医療をはじめ多くの産業が集まるパワーのある街ですが、深刻な社会格差や差別問題もあるそうです。研修では、貧困など困難を抱える女性のための立ち寄り場を運営する団体でのボランティアを経験するとともに、人身取引の被害にあった子どもたちのその後をサポートする団体などを訪問しました。
ボストンのNPO主催の年に一度のチャリティパーティに参加
私自身が一番勇気づけられたのは、各NPO法人の創設者など、リーダーとの時間です。この研修では、団体を率いるリーダーとの対話の機会がたくさんあり、リーダーたちのこれまでのキャリア、職員の士気を上げる方法、資金調達活動などについて直接学ぶことができ、とても感化されました。
また、あるNPOの代表はその後しばらくして退き、新たな体制に団体を引き継いくことになるのですが、そのような姿を見て、私自身の進退についても前向きに考えられるようになりました。
ボストンでの貴重な時間から3年を経て、私は、がむしゃらに走りながら16年率いてきた団体を退きました。現在は、夫の出身である米国に引っ越し、子どもと毎日向き合いながら、家族との時間を大切にしています。
コロナの影響でいろいろと予定変更がありましたが、少し充電したあと、米国のNPOや社会福祉の分野で活動する予定です。大好きな北海道で毎年夏休みを過ごせるように、家族ともに健康に気をつけ頑張ろうと考えています。
藤原さん、ありがとうございました!
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