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カテゴリ:歴史・文化・美術・芸術
皆さんこんにちは!道立文書館です。本日は所蔵資料にまつわるコラムです。
今年は暖冬かと思ったところ、厳しい寒波が襲来中の北海道。思わず「しばれる」とつぶやいた方もいたのではないでしょうか。 「しばれる」とは、東北や北海道で使われる方言で厳しい寒さのことをいいます。 言葉の語源については諸説ありますが、そのうちの一つに、身を「縛られる」ような厳しい寒さという意味で「しばれる」が使われた、という説があります。 その根拠となるような文章が当館所蔵の旧記『北夷談』にあったので、紹介します。
寒気甚敷ヲ松前ノ方言ニ縛(シハ)ルト云フ。終夜少シモ 寝ラレヌ侭ニ筆ヲ採リテ、戯ニ 科(トカ)ナキニ縛(シハ)ルト聞テヲソロシヤ 寒気ノ事テヲチツキニケリ 『北夷談』は、江戸幕府の役人松田伝十郎が長年の蝦夷地勤務で得た経験や見聞をまとめた書物です。 1799(寛政11)年に蝦夷地御用掛となって以降、伝十郎は松前・江差から虻田・宗谷など各地で勤務しました。 1809(文化6)年の冬から翌年にかけては、当時北蝦夷地と呼ばれた樺太(現在のサハリン)で幕臣として初めて越冬したそうです。 引用した文章は、この時の厳しい寒さを物語るエピソードに続けて書かれたものです。 現代文に意訳すると、 寒さが甚だしいことを松前の方言で「縛る」と言う。夜どおし(寒さのため)少しも眠れない ままに筆を採って、ふざけて(この歌を詠んだ。) 科(罪)もないのに縛られると聞いて恐ろしいと思ったが、 「寒さ」のことだというので安心した。 というような意味になるでしょうか。 伝十郎が滞在したのは当時クシュンコタンと呼ばれた地で、現在ではサハリン州のコルサコフ市にあたる地域です。冬の最低気温は12月で-20℃近く、1月になると-25℃を超えるそうです。 彼が体験した寒さは、縄で縛られるどころではなく、ひょっとしたら「簀巻き」にされ身動きできない感覚だったのかもしれません。 参考文献 「北夷談 解題」(『日本庶民生活史料集成』第4巻 所収) 夏井邦男『北海道方言の歴史的研究』・『北海道古語探訪』・『北海道語に残る古語』 齋藤大衛・神正臣編『津軽方言集 全』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.21 17:47:48
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