遠藤さんと小次郎君(1)
身延町専属ライターの梅津です。こんにちは!身延町相又地区、波木井川。梅雨の野山を、少し肌寒い風が通り抜けたこの日、「田んぼできずなづくり」(以下「きずな」)のコーディネーター・遠藤好一さんは、田んぼから800メートルほど上流の畑にいらっしゃいました。ここは「きずな」の皆さんと遠藤さんの、曙大豆の畑です。真剣な表情で杭を打ち込む遠藤さん。頭にはくるりとタオルが巻かれています。汗拭き用ですか?「帽子替わり。農作業用の三角巾ってとこかな」。こんな風に、被るんですね。お友達からのプレゼントだそう。鮮やかな紫色がとてもお似合いです。さて、なぜ今日、遠藤さんがここにいらっしゃるかと言えば、近く畑に植える予定の曙大豆を、猿や鹿から守るため。約200メートルにわたり電気の柵を作っておられるのです。昨年は4分の1の大豆が猿たちの被害に遭いました。ネットを張っていたものの、飛び越えたり、破ったりして、食い荒らされてしまったのです。身延町の特産品である曙大豆は、粒が大きく甘みがあるのが特徴。大豆を枝ごと抱えた猿たちが、きゃっきゃっと美味しそうに頬張る姿を、近所の人たちが目撃しています。「おそらく山に、雑木の芽や木の実が少なくなってしまったことが原因だろう。一度作物を食べれば、猿たちは味を覚えてしまうから」と遠藤さん。猿たちも気の毒とはいえ、丹精して育てた大豆を、全部食べられてはたまりません。お手製の電気柵は、防草シートの上に畔シートを載せ、ポールを立て、網を張り、ソーラーのバッテリーで電気を流す仕組み。ぴりっとわずかにしびれる程度ですが、猿たちには大きな効き目があるそう。小道を挟んで隣の畑は、「きずな」から誕生した農作業チーム、「つくれマイ田んぼ 農民人(のうみんちゅ)」(代表・岡田大地さん、横浜市在住)の田んぼ。先月お田植えを済ませました。この辺りは昨年まで草だらけだったそう。製作中の電気柵の手前に、かわいい小屋を見つけました。持ち主は遠藤さんの飼い犬、小次郎君。猿たちの仕業に頭を抱えていた遠藤さんを助けるべく、昨秋二か月間、ここで見張りを務めました。小次郎君が来てから、被害はほとんどなくなったそうです。それでも一人での見張り番はつらいもの。今年は遠藤さんの電気柵が、小次郎君に代わって大豆を守ってくれますね。そして、その小次郎君はといえば・・頑張ったごほうびに、新しい家を作ってもらいました。遠藤さんが営む「古民家 おおくぼ」の庭先で、看板犬としてお客さんを迎えているそうです。次回は小次郎君に会いに、「古民家おおくぼ」を訪ねます。