「コイツカメ」のことをご存知でしょうか。
「恋つかめ」「コイツ亀」では、ありません。
かつて美濃加茂市加茂野地区で、毎年11月23日に行われていた行事で、池に飼っていた魚を捕まえる「鯉つかめ」のことです。大きな河川のない加茂野町では、稲作のためにいくつものため池があり、稲葉池はその一つです。池で鯉を大量に養殖し、稲刈りが終わった頃、池の水をすべて落とし、大きくなった鯉を捕まえ、集まった人々に量り売りをしました。池の周りでは、鯉をその場で調理し、酒も酌み交わし、ちょっとした宴会もくりひろげられており、反物などの露天商も出て大変賑わったそうです。
今回は、加茂野地域の人が楽しんだ鯉料理を美濃加茂伝承料理の会の皆さんが特別企画「鯉つかめ」として再現しました。参加者は18人。
市内の八百屋さんから生きている鯉を2尾用意し、煮付け、鯉コク、いなり寿司などを作りました。鯉の内臓の中の胆嚢(たんのう)を傷つけないように丁寧にさばいていきます。伝承料理の会の腕利きの方がはじめにさばきました。受講生も硬い骨を上手にさばいていきました。
鯉コクは、昔の結婚式等の祝い事に欠かせないお汁でした。煮付けも、聞き取りした方いわく、「鯉つかめで食べた、あんな美味しい煮付けは他で食べたことない!」とのことです。聞き取りに協力してくださった加茂野在住の80代の男性からは当時を懐かしくお話しいてくださいました。
参加者の皆さんは「おばあちゃんが昔よく作ってくれました。昔は砂糖と醤油だけで、素朴な味でした。」「家で鯉を飼っていいました。お祭りなどで鯉をさばくのは男の仕事で父親でした。胆嚢(たんのう)が入ると鯉料理がくさくなるので肝を慎重にとっていたことを覚えています。」「胆嚢(たんのう)以外のウロコもヒレも骨も内臓も全部入れてコイコクをつくりました。とても美味しかったです。昔は鯉こくを食べると『お乳の出が良くなる』と言われていました。」と昔話やコイの味に花を咲かせながら特別講座を楽しみました。
調理風景
試食のお話