いろいろ【まっち】んぐ

明日香川　黄葉(もみち)流る　葛城の
　　山の木の葉は　今し散るらし
　　　　　　　　　　　作：不　詳　　　万葉集より

<明日香川に黄葉(もみち)が流れています。葛城の山の木の葉は今、散っているのでしょう。>


あすか河　もみち葉なか流　葛城の
　　山のあき風　吹そ志めらし
　　　　　　　　　　　作：人　麿　　　新古今和歌集より

<飛鳥川にモミジが流れています。ここから見える葛城山に秋風が吹いているんでしょう>


また　いきなりチョー文系で、すんましぇ～ん！
でも　これはヘンテコリンな歌ではありません。

さて、これはどちらも「あすかがわ」を詠んだものですが、「あすかがわ」と呼ばれる川は大阪と奈良に、2つあります。　飛鳥と聞くと奈良を思い浮かべる方も多いのですが、全国には20カ所近くあるようです。


ということで、本日のお題　「二つの飛鳥川」

尚、昨日のお題は　「ムー伝説」←ご覧になってない方はこちらもどうぞ


昨日は世界史、今日は日本史　と、まるで歴史の時間のようですが、ナントカ学などの小難しいことは言いませんので、しばし　お付き合いのほどを・・・

尚、日付けが14日になってますが、15日の日記です。
　

万葉によく詠まれる「あすかがわ」は、奈良県高市郡明日香村の南境、高市郡高取町南東境の芋ヶ峠に発し、明日香村栢森・稲淵の谷あいを北に流れ、祝戸で平地に出て奈良盆地南部を北西流、飛鳥の様々な寺や遺跡群を縫って流れます。

そして、橿原市を貫流、磯城郡田原本町・三宅町を過ぎ、川西町保田で大和川左岸に注いでいる全長24kmの川です。　これを単に「飛鳥川」または「大和・飛鳥川」といいます。

一方　大阪府南河内郡太子町山田の神山、通称　二上山(にじょうざん)を源流とし、太子町を貫流、羽曳野市飛鳥・駒ヶ谷を通り、石川に合流しています。　こちらを「河内・飛鳥川」といいます。

ところで、先の万葉歌はどちらの川を詠んだのだろうか？　別の万葉歌の題詞から類推して、奈良の「あすかがわ」ではなく河内である、という説があります。

さて「河内・飛鳥川」ですが、場所は大阪府羽曳野市駒ヶ谷。　小さな川です。　ブドウ畑の間を、澄んだ水がゆったりと流れています。　二上山はの前にそびえています。

先の万葉歌ですが、「今し散るらし」、原文なら「今之散疑」の4文字に疑問が残る　というのです。

葛城の落葉がこの川を流れるのは当然なのに、「疑(らし)」とある。　大和・飛鳥川の落葉を以前に見て、かつて訪れた葛城をしのんだと考える方が自然ではないか　というのです。

謎に迫るカギが、川沿いの歌碑にあるという。　建立は江戸後期の1805年。　それが万葉歌を本歌取りした新古今和歌集の歌。　後者の歌です。

これを読んで、或いは人麿の名を見て、万葉歌と思いこんでしまうが、下二句がすっかり違い、原歌は「新古今集」541に人丸作の歌として掲載されています。

歌碑の揮毫(きごう)は葛城・駒ヶ谷の金剛輪寺住職、阿闍梨覚峰(あじゃりかくほう)。

注) 揮毫：毛筆で何か言葉や文章を書くこと。「毫(ふで)を揮(ふる)う」からこの語がある。

覚峰は大阪・長堀に生まれました。　30歳で、織田信長に焼かれた同寺の住職になると、村人たちの寄進を元に4年で本堂を再興しました。

恩を感じた覚峰は村起こしに奔走。　河内と大和を結ぶ竹内街道を行く旅人を呼び込む名所作りを思いついた。

「河内一の国学者」とも言われた覚峰は、古事記の記述をもとに自らの寺を「近(ちかつ)飛鳥(あすか)之寺」と称し、隣接する杜本(もりもと)神社には清少納言の供養塔などを建てました。

実は河内・飛鳥川の歌碑も“観光客誘致”の一つだったのではないだろうか。

覚峰は万葉歌碑を建てたかったが、「疑」の字に引っかかった。　ウソはいけない。　だから、河内の飛鳥川でも矛盾のない新古今集の歌にした。　というわけ。

あ　先の万葉歌が「ウソだ！」というわけではないですよ。　ただ　前述のように、疑問が残る　というだけです。

今　駒ヶ谷の金剛輪寺は寂れ、小さな観音堂を残すだけ。
この地は万葉の舞台ではないのかもしれない。　しかし、先人の郷土愛が感じられる。


昨日のお出かけ途中、での花びらが散って、花びらじゅうたんに・・・

　　神戸・ハーバーランド付近
　　



大学からアクセスの多い別ブログ　　やっと更新しました。
●別ブログ4/13の新着は「アトランティス伝説」
　　　　　　　　　　　前回は「謎の企業　B-CAS社」　こちらも見てね