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カテゴリ:文学
葦屋(あしのや)の
菟原処女(うなひをとめ)の 奥城(おくつき)を 行き来と見れば 哭のみし泣かゆ 作:高橋虫麻呂 万葉集より <葦屋の菟原処女の塚を往き来のたびに見れば、あの哀しい恋物語が思い出されて声をあげて泣いてしまう> さて、以前「危険な愛」で2人の男性から愛された額田王の話を書きましたが、こういう話はけっこうあるもので、万葉集にもよく詠われています。 ということで、本日のお題は 「万葉の悩む愛」 尚、昨日のお題は 「これを言われたらブチギレ」 ご覧になってない方はこちらもどうぞ 神戸市東灘(ひがしなだ)区の国道43号から一筋北に入る。 「処女塚(おとめづか)古墳」が、住宅街にひっそりとたたずんでいる。 南北70メートルの前方後方墳は公園として整備され、数十本の松が植わっている。 ここが歌に詠まれた菟原処女の奥つ城。 幾世代も、語り継がれた悲恋伝説の舞台。 処女塚(おとめづか)古墳 神戸市東灘区御影塚町所在 四世紀頃の築造とされており、大正11年に国指定史跡を受けるが、その当時から墳丘はすでに道で破壊されていた。 昭和59年に整備が完成し、今の形に至る。 この古墳は同区住吉宮町にある東求女(ひがしもとめ)塚古墳と、灘区都通にある西求女(にしもとめ)塚古墳との強い関係性がある古墳である。 その昔、二人の男性に求婚されて、亡くなった女性の墓が処女塚古墳とされている。 葦屋(あしのや)と呼ばれたこの地で、菟原処女(うなひおとめ)を手に入れようと二人の男が争った。 同じ葦屋の菟原壮士(うないおとこ)と、現在の大阪府南部の千沼壮士(ちぬおとこ)。 思い悩んだこの女性はついに死んでしまい、それを嘆き悲しんだ二人の男性が、間を挟むように葬られたという伝説がある。 処女塚古墳近くには、男たちの「墓」もある。 千沼壮士の東求女塚(ひがしもとめづか)古墳(東灘区)と、菟原壮士の西求女塚古墳(灘区)がそれ。 いずれも墳丘は削られているが、今も娘を慕い続けるかのように、東西から処女塚を等間隔で挟むようにある。 万葉集に残る菟原処女の歌は八首。 詠んだのは、高橋虫麻呂、田辺福麻呂、大伴家持という一流歌人。 その後も多くの創作者たちの想像力を刺激してきた。 いにしえの 小竹田壮士(しのだおとこ)の妻問ひし 菟原処女(うなひおとめ)の奥つ城ぞこれ 作:田辺福麻呂 処女(おとめ)等が 後のしるしと 黄楊(つげ)小櫛 生ひかわり生ひて 靡きけらしも 作:大伴 家持 平安時代の大和物語では、娘の両親から「水鳥を射抜いた方に」と言われた壮士たちが、弓を競い合う話が加わった。 室町時代、「求塚」と題した能を観阿弥が演じた。 また、森鴎外は身を投げた川の名を取って戯曲「生田川」を書いた。 三つの古墳近くを通る旧・山陽道をたどってみると、夕日が六甲山系に沈み、長い影を作る。 万葉の時代から悲恋の伝説を照らし続けたのか、と ふと思いにふける。 2人の男性から愛され、悩んだ末に死んでしまう。 なんと純粋なことだろう。 現代では考えられないことだ。 現代は、2人の男性を手玉に取るのはよくいるが・・・ 三古墳についてこれまでに行われた発掘調査では、土器や銅器などが大量に出土している。 最も築造が古いとされる西求女塚古墳は前方後方墳で、三角縁神獣鏡が7枚見つかった。 前方後円墳の東求女塚古墳からも三角縁神獣鏡や勾玉(まがたま)などが発見されている。 処女塚古墳は国史跡。 東西の求女塚古墳は公園として整備されている。 これらの古墳は、古墳時代、神戸市東部を支配していた豪族の墓とする説が現在では有力になっている。 いずれも当時の海岸線近くに築造され、海からは三古墳が並ぶ様子が見てとれただろう。 この近くには、万葉集で、 珠藻(たまも)刈る敏馬(みぬめ)を過ぎて 夏草の野島の崎に舟近づきぬ と 柿本人麻呂が詠んだ敏馬神社がある。 また、谷崎潤一郎が暮らした倚松庵(いしょうあん)もあることから、文学ファンの散策の人気コースになっている。 芸術の秋、もの悲しい秋ももうすぐ。 日ごろ、文学に縁のない人も、万葉の恋の文学的情緒をもって散策してみては? ところで、あみこさんが旅の途中で兵庫県・作用町の水害ボラに参加されました。 こちら→「兵庫県佐用町」、「東津山へ」、「佐用にて」、「ふたたび佐用へ」、「佐用にて2」 このように、「ついでだから」と気軽(ホントはそうではないが)にボラに参加されることに敬意を表します。 自分のためなら日本全国行っても、人のためには行かない人も多い中、お疲れさまでした。 尚、兵庫県佐用町では佐用町ボランティアセンターで、引き続きボランティアを募集しています。 平日は人数が少ないそうです。 なぜか大学からアクセスの多い別ブログ ●別ブログ 8/06の新着は 「山小屋メンテナンス」 前回は 「排除措置命令」 こちらも見てね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年08月26日 19時59分05秒
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