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テーマ:法律についてのあれこれ(91)
カテゴリ:貸金業規制法、消費者法
今までは銀行系消費者金融などが利息制限法(15~20%)、貸金業者は出資法(29.2%)と分かれていて、クレジットカード会社や貸金業者が貸し出す金利帯を「グレーゾーン金利」と言っていましたが、この「グレーゾン金利」は廃止し、貸出の上限金利を統一するそうです。
「上限金利15-20%に統一へ 自民、貸金規制を強化」(yahooニュース共同通信 7月4日) 「上限金利引き下げ承認へ=自民貸金小委、あす提案」(yahooニュース時事通信 7月4日) 「貸金業者融資の上限金利、利息制限法に原則一本化」(産経新聞 07/05) 「上限金利、15~20%に1本化=5日に承認-自民・貸金小委」(yahooニュース時事通信 7月4日) 「金利規制の例外が焦点 自民党の貸金業規制案」(yahooニュース共同通信 7月4日) 「貸金上限金利15-20%に きょう自民承認 過剰融資、規制強化も」(フジサンケイビジネスアイ 2006/7/5) 特例を一応設けるけど、上限金利は引き下げで統一、ということらしいです。 「ただ小委では、金利を急激に引き下げると『中小業者の経営が立ち行かなくなる』『融資審査の厳格化でヤミ金融に流れる借り手が増える』との反対意見もあり、中間報告には少額・短期の貸し付けや業務の適切な業者に対しては、上限金利に3~5%程度上乗せすることを認める特例措置も盛り込む方向で調整している。」(上記産経新聞) ただ、ましーんが心配するのは、上に書いてある反対意見の2番目と同じようなこと。 「融資審査の厳格化でヤミ金融に流れる借り手が増える」と反対意見が出ているそうですが、これは、若干違います。 貸金業者やクレジットカード会社など、今まで29.2%までで貸していた会社が、これを強制的に下げられることによって、 新規融資を『お断り』する、 既存顧客の『借入枠を小さく』する、 だめそうな(?)人から早く回収するなど、 かつて銀行がやって有名になった「貸し渋り」「貸し剥がし」が出てきますね。 新しく借りようとする人が「借りられなくなる」のであれば、借りなきゃいーじゃんと思うでしょうが、今まで普通に借りていた人が枠を減らされ、減らされた分早く返してよ、ということになると、一気に破綻者が増えるでしょう。 ましーんは、キャッシングとかはしてないけど、 銀行からいきなり、あなたの住宅ローンの枠が減らされましたから、減った分のお金早く返してくださいって言われたら、貯金もそんだけないし、返せないな。 今の計画だから返せるわけで。 普通の(と思ってる)人は消費者金融とか興味ないっていうか、おつきあいないって人多いでしょう。 でも、世の中、そんなおつきあいがある人は多いですよ。 今まではふつうに借りられていた人が借りられなくなる。 そうすると、そういうところから「借りられていた」人は、たいてい、銀行からは借りられないのです。 で、反対意見にある「ヤミ金融に流れる」ですが、 ふつうに読んで、 ふつう、ヤミ金みたいな金利もやばくて回収とかもやばそうなところから借りないでしょ、と思うでしょ。 まあ、切羽詰って、ヤミ金と分かっていて借りちゃう人もいるんですが、 ほんとはそうじゃないんですよ。 ましーんも仕事上で相談電話を受けたりするんですが、 ヤミ金かどうかって、よく分かんないんですよ。ふつうの人には。 消費者金融とかから借りられない人が、ヤミ金に走るのではなく、ヤミ金に引っかかるんですよ。 借りられないような人に、ヤミ金がうまい言葉で勧誘して、騙すんですよ。 そういうところを狙ってくるヤミ金が増える、ということです。 貸金業者は、貸出の上限金利を下げられれば、当然今まで貸せていた人ではじく人ってたくさん出すでしょう。 さらに、中小の貸金業者は銀行からは資金調達できない上に人件費が相当かかっているらしいという話はよくニュースで見ます。 廃業が相次ぎ供給量が減れば、そういう点でも借りれからあぶれる人は多く出るでしょう。 ヤミ金は取り締まればいい、 借りられないような人は借りなきゃいい、 という意見もあるようですが、 借りられなくなるのにつけこんでヤミ金が増えるのですし、借りなきゃいいと言ったって、債務者の動機付けがそうそう簡単に変わるもんでもない。 だいたいねえ、 支払う利息が減ってラッキー♪とかって意見多いですけど、 そうもいかないでしょ。 ラッキー♪ってなる人は、優良顧客と言われてますよ。今だって払えてるんだから。 法律が目指しているところの「多重債務者問題」と考えるなら、 上限金利を引下げても、数百円とか数千円くらいの変化しかない。 でも、だいたい、利息が払えないから支払利息下げろというレベルではないでしょう。 利息が払えない人は、「お金」が払えないんでしょ。 結局、貸出の上限金利を数%引下げたところで、なんの問題の解決にもならないんですよ。 分かってないなあ。 むしろ、多重債務者や破産者は増えるでしょうね。 ヤミ金も増える。 大手のクレジットカード会社とか大手の貸金業者は生き残るけど、中小の貸金業者は全滅だろうなあ。 業界がどうってのはよく分からないけど、これって、駅前に商店街ががんばってたのにちょっとだけ離れたところに大規模小売店舗を作ったときと似てるかもね。 ちなみに、 小泉首相は、この議論(金利規制引き下げ)には慎重派なようですね。 日経ネット「首相動静」より 貸金業者の上限金利引き下げ、よく協議していただきたい 小泉純一郎首相は4日夕、自民党の金融調査会が貸金業者の貸付金利の上限を利息制限法の上限金利(年15―20%)に引き下げる方針を固め、5日の「貸金業制度等に関する小委員会」で提案することについて、「これは、よく今議論している最中だから協議していただきたい」と述べるにとどめた。 首相官邸で記者団の質問に答えた。〔NQN〕 小泉さんはもうすぐ辞める人だから何言ってもいいのか。w うーん、もしかしたら、 グレーゾーンだって、ましーんはそんな法的に不安定な制度は廃止しろって思ってたけど、 今の裁判所はなんでも過払い金返還請求を認める方向なんだから、 借りるときはだいたい誰でも借りられて、破綻したら借りた業者から助けてもらえるっていう、いい制度なのかも。 貸出の上限金利を引き下げてグレーゾンなくすと、踏んだり蹴ったりだから、他の政策を充実させないんだったら、グレーゾーンを残したほうがいいのかもね・・・。 (ご参考) ・・・ということで、グレーゾーンって意外といいかも?な記事↓ isologue(イソログ)「グレーゾーンの効用」(磯崎哲也さん) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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