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2015年07月08日
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   稲田早紀展 (3)0003.jpg

 新暦の本年の七夕は、二十四節気の小暑に当たり、雨の一日となりました。

 アートマルシェと同時開催中というNii Fine Artで開かれている稲田早紀さんの独特の野草表現は、以前から注目するところでさっそく画廊を訪ねてきました。

 彼女の表現の原点となったシロツメクサの作品は、さまざまなメッセージを湛えながら、雨の地下画廊にはかなさと永遠というふたつの時間の狭間に無造作そのものの形で置かれていました。

 画廊日和とはいえないひとときでしたが、僕にとってはそれが幸いして作家と心行くまでお話することができとても刺激になりました。

         稲田早紀展 (6)0006.jpg

 いわゆる植物細密画とは異なる稲田さん固有の表現は、自然界(地球生命圏)のもっとも中核を成す生きとし生きるものの<いのち>のはかなさ、強靭さを二つながらしっかりと描き切り、馥郁たるオーラを放っていて、アートマルシェ会場の作家たちの気焔渦巻く息苦しい空間でもホッとするすきまを作っていましたが、この画廊であらためて彼女の現在の仕事と向き合うと、その空気が何に起因していたのかを、じんわりと全身で感じ理解することができました。

 作家のひととなりもまさに作品そのものであることもうれしい発見でした。

    稲田早紀� (5)0005.jpg

 永劫回帰のようににみえる私たちの人生も、反復しつつそれぞれのバイオリズムに基づき、ステージを変えて不断に変化していきます。この作家の描画の対象がアトランダムな野草の配置から結ぼれをしめしはじめていることもそのひとつの兆候でしょうが、この次にきたるべき世界は、まだ見えていません。それだけに大いに期待できる作家でしょう。

 私たち地球上に生きる生命体の連綿たるいのちの輪を勢いづけてくれる何かを様々なジャンルでアーティストたちが探し求めています。そんな作家たちの横のつながりをそれぞれが自覚することで作品は力強いものになっていきます。僕はそんな、異でありつづけるそれぞれの作家たちの共通意識を拾い集めて、それがいかなる流れを形成するのかを見届けたいとおもっています。そのときはじめて、「ペンは、そしてアートは、剣よりも強し」といえる時代が現実となるように思えます。

 この描画作家とギャラリー点の陶芸作家の山本優美さんはジャンルはまったく異なりますが、同じ表現を志向しています。しかし、彼女たちをつなぐ糸はまだお互いに意識されることはなく、これからもそれぞれが自覚するには至らないのがとても残念なのです。僕が拾い集め、つないでいきたいのはそんなアートの流れを統合する大きな潮流なのです。それにはビジネス・アートの場であるアート・マルシェと似て非なる画廊間の連携が必要だと今回強く感じたことです。かって私たちが手掛けてきた「夢・自然・きのこの祭」は、そんな意味でも時代をはるかに超えていたと今、振り返っています。

 個々のアーティストたちは個性的であればあるほど、連帯は困難です。しかし、たった独りで世界と対峙しながら、時おり自身の表現を突き放して眺めて、もうひとつステージの大きな宇宙マンダラの座標のどこに位置するかを自覚するときはじめて、その個性が真に活かされるのだということを、作家自身がめざめなければなりません。そのための新たなキーワードを今懸命に探し求めています。

 かってのシュールリアリズム運動のような新しい潮流の形成をもたらす全体像を明確に指し示すキーワードを僕が期待するゆえんです。

 さてそんな思いをこめつつ、僕は蕪村に代表される江戸中期の市井の町絵師群像に戻って行こうと思います。蕪村全集をふたたび、目の前に山積みして、そのトレンドの糸口をみつける作業に着手しましょう。






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最終更新日  2015年07月08日 19時46分47秒
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