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2015年11月12日
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 鰯雲そのまた先に未来あり 享

       大竹・生玉・きのこ鍋 (45).JPG

 第32回 林春杏画塾

 杏萌社選抜 日本画展

 10月23日(金)~28日(水)

 エルおおさか9F展示室

 32年前から続いてきた林春杏先生指導の杏萌社門下生展は年々大作を競い合うようになり今日まで来ましたが、今年を最後にエルおおさかでの展覧会は幕を引くことになりました。

 僕はうん十年前からの俳句仲間だった菊池享さんのご縁で、初回から立ち会うようになり、この日本画展とともに馬齢を重ねてきたように思えます。

 本会の出藍の誉れとでも言うべき享さんは、この絵画展で腕を磨かれ、今や、方々で日本画教室を持たれ、門下生を育てるまでになってきています。

 有終の美を飾った彼の作品は、ヴェネチュアの眼差し(S15号)3点。数年前に本展に提出された作品に更なる洗練を加えて再挑戦されていました。

 この作家は、本年一度、黄泉への旅路を辿って閻魔さんから追い返され九死に一生を得た経緯がありますが、閻魔さんからうとまれるだけあってなかなかしぶとい作家魂を見せつれてくれています。

 僕自身は、彼の人物画はどうも苦手で余り評価をしていませんが、それでもこのマスカラードの人物像には作家自身のペーソスがにじみ出ており、現在の境地をストレートに伝えていて、数年前の作品に比べ格段の深化がみられます。

 冒頭のコメントにあるように、杏萌社展そのものが無くなるような語り口でしたので、仕事の途中で飛んで来ましたが、そうではなくエルおおさかでの選抜展のみがなくなると聞きやや安堵いたしました。しかし、享くんにとっては、この選抜展が無くなることへの無量の感慨があって、そう言わせたのでしょう。僕にはそう受け止められました。

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 以下の第二展示場の石仏群は、こうした対象を描く際の手法が本人の中でまだ確立されていない嫌いがあり、それぞれの仏像に対する独自の把握がみられ面白いにもかかわらず僕には多少の物足りなさを感じてしまいます。

 しかし、最終回となった展覧会で完成度の高い作品のみが並んでいたら、僕には一層不安が募るだけですので、いささかの課題を残したままの幕引きのほうがむしろうれしい。

 その彼のこんにち只今の心境が冒頭の鰯雲の句に仮託されており、心底より納得。

 爽やかな思いに満ちて会場を後にしました。

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最終更新日  2015年11月12日 16時30分39秒
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