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夢みるきのこ

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2015年11月13日
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      物語E表現� (3)0003.jpg

 2015年10月23日(金)~10月31日(土)西天満のベルンアートで2年ぶりに開かれた「物語の表現展」も第9回となった。多少の入れ替わりはあっても、テンペラと油彩という古典的な技法を駆使して新境地を拓きつづけてきた市川伸彦の鬼気迫る作品と動物をモチーフとした永野恵理の作品、そして我が盟友の大竹茂夫の作品はいつもとかわらず待ち伏せしてくれていた。

 ここに掲載するのは、許可を得た大竹茂夫の作品のみとなるが、僕にはこのベルンでの10年以上にわたる同タイトルのシリーズは、数あるアート展の中でもとても楽しみにしてきたものだ。

 この世のいのちあるものは、それぞれ物語を綴り続けているのだが、それが表現として定着しえたもののだけが、かろうじて光芒を放つ。しかし、それとてあえかなものでしかない。しかし、それこそが一生一代かぎりの芸術家の希望の光なのである

 大竹茂夫の表現は、僕の敬愛してやまぬ蕪村同様、完璧な技法と構図でその表現意図をビシッと定着させながら、どうしようもなくノイズを入れてしまうことがとてもよく似ている。蕪村の場合はそれを「俳味」と言われてきた。真面目一方の世界からみればそれは蛇足にしか見えない。

 しかし、これこそが大竹の人生に相渉る態度であり、かけがえのない個性であり、持ち味なのだが、そのノイズゆえに毛嫌いする人もいる。

 僕はそのいずれに組みするものでもなく、その折々のノイズのありようが彼の青春性だと思っている。しかし、ノイズの多用は必然的に主題のインパクトをうすめてしまう。

 今回の作品で僕の好きな順に並べてみると以下の通りだが、

          大竹・生玉・きのこ鍋 (1).JPG

 賀茂川春景 F6

 近年しばしば描かれる新しい傾向の作品だが、僕はスーパーきのこ時代の彼の表現はこの延長上にあると感じてきた。

 三条大橋あたりからみた賀茂川べりの情景だが、とても虚構のリアリティがあり、彼の視線がストレートに伝わってくる。

      大竹・生玉・きのこ鍋 (2).JPG

  ホウキタケに癒される P3

  私的には、この大竹作品の少女が大好きで、タマゴッチさながらこれまでずっとずっと育つのを見守ってきたが、いよいよ番茶も出花の年頃になってきてうれしいかぎりだ。ノイズは左上。

      大竹・生玉・きのこ鍋 (3).JPG

 放水路 P3

 今回の作品では、上の作品がもっとも大竹の本領を発揮している作品だが、この画境が彼のここ20数年来の作品の主調音だ。この寂寥感ただよう世界。これが彼の内面世界そのものであることはほぼ間違いない。

      大竹・生玉・きのこ鍋 (4).JPG

  画廊にて F0

 この顧客の頭脳からせり出している目玉。この手法はよくわかるが、わかるだけに僕には「この人物なからましかば」と思ってしまう。ノイズはこの目玉のバイヤー。黒猫の配置、紅茶を差し出す少女の位置は絶妙なのにね。

      大竹・生玉・きのこ鍋 (5).JPG

 迷いの谷 M4

 これも作者の本筋に位置付けられる作品だが、ここでみられる多少の蛇足。それは、鑑賞者へのサービス精神といってもよいだろうが、こうした生暖かい体温が感じられる持ち味が孤独な作家をここまで歩ませた原動力でもあったのだが、この作風はそろそろ終盤に近いと感じている。いささか饒舌が過ぎるのだ。

 そして、来るべき次のステップは、僕には一旦は「放水路」にみられる耳をつんざくような静寂を奪還するような方向へ、すなわち独白の世界へ立ち戻る気がしている。

 ベルンアートの作家の中では、大竹は、まず他を出し抜いて自身の作品世界そのものを笑い飛ばすことができた作家で、そのせいかどうか、ここ数年特に他作家との違和が著しくなってきていた。冒頭の案内のカードの作家作品が一堂に会した図像をみていただくとそのことは一目瞭然だ。      

 僕は、ベルンアートが引き寄せてきたアーティストらの超一流の技量と表現能力を持った作家たちの来し方行く末をきちんと見つめ続けたいと思っているが、今回の作品展は、それぞれの作家のNEXT STAGEが陽炎のように立ち昇ってくる記念碑的なアート展だと感じたことである。

以下の2名が、今回新しく加わった伊豫田と鍋島の作品だ。

案内のカードの図像を拡大して掲載させていただく。

          物語E表現� (2)0002.jpg

          物語E表現� (1)0001.jpg







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最終更新日  2015年11月17日 11時25分47秒
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