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夢みるきのこ

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2017年11月21日
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 今年はじめの浅春の頃、NHKの「日曜美術館」で観た色鍋島は素晴らしいものだったが、それが丹波篠山の陶芸美術館で秋から初冬にかけて巡回してくるというので、今年のアカモミタケに出会いがてら駈けつけてきた。有田焼・伊万里焼の陶芸技法の粋を集めたこの陶芸窯の生み出す絢爛豪華な世界には言葉を失うものがあり、小春日の一日、のんびり・とっぷりとその美世界に浸ってきた。

 この展覧会は、テーブルコーディネーターによるアレンジシーンを用意してくれていて撮影も可能だ。
 染付ではわが「月のしずく」のイメージにぴったりな月兎の皿。




 この展覧会は、親子4代にわたり非常に貪欲に美を追求してきたことが作品を通してひしひしと伝わってくるものだった。プロならではの完全分業制の成果ともいうべき個々の作品は、単細胞で徹底した横並び社会をアングラの世界で展開する糸状生物の菌糸体が「すわ鎌倉」という環境の変化に際して、黙々とおのが勤めを果たして見事なきのこを作り上げるのに似て完璧な造形美をたたえている。
 同日、丹波の森で出会った数ミクロンの単細胞の菌類が横並びになって驚くべきパワーを発揮してきのこという造形物をつくりあげたものが以下の映像。過日紹介したクリスマスツリーの木の下に発生するアカモミタケだ。

 触れると赤い乳液をにじませ、傘の表面は同心円紋、傘の裏は繊細きわまりないヒダを刻む。そして柄には濃淡のクレーター文様をちりばめて雪を待つ森の地表に顔をのぞかせるアカモミタケと、今右衛門の雪皿にはどことなく通じるものがある。

 とりわけ13代目と14代目今右衛門は、色鍋島の伝統を、その持てる技術の粋をすべて投入した渾身の作品を数多く手掛けて来て芸術性、現代性、すべての点で見事というほかない。会期も余すところ1週間を切った。
 私はいかなる世界においてもスーパー(シュール)を冠しうるものにのみ重きを置いてきた。
 陶芸の世界にあって陶芸を超えて、なお陶芸であるというこの作品展は、ただ、ため息あるのみの素晴らしいものだった。

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最終更新日  2017年11月21日 11時46分30秒
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