世界が紅葉・黄葉で満たされるほんの短いひととき。しばし、しあわせにひたる日々を賜わる。
とりわけサクラモミジの大形で派手なくれない色とハゼモミジの品の良いべに色の落ち葉たちは、しず心なくはらはらと散り続けていたるところにうずたかく積もりなんともいえない気持ちにさせてくれる。黄葉もみじの王者はなんといっても銀杏だ。このあでやかな黄色には実になぐさめられる。
もみじの景色もいいが、落葉には落ち葉のまた別の情趣がある。コンクリートで埋め尽くされた都会では落葉は嫌われ者だが、僕にとってはこの季節、個性的で表情豊かな落葉掻きがたのしみとなる。
そんな愉楽のひととき、隣の敷地に植えられた貧弱なナンキンハゼの木がフェンスを越えて枝を伸ばしたパーキングの片隅で、優雅な形のナンキンハゼの落ち葉たちがうずたかくつもっていてつむじ風に渦を巻いて舞っている光景に出会いました。喜び勇んで掃いていると、いました! 居ました!!。木の皮そっくりのモスラちゃん。なるほどキノカワガとはよく言ったものだとうっとり眺めることしばし。ところが腕が必要以上に毛むくじゃらなのです。
和服姿ならさしずめ振袖といったところ。「娘十八、番茶も出ごろ」と気取っているのかな?。この出で立ちにちょっとばかり首をかしげるものがあったので、深夜帰って調べてみるとナンキンハゼを食草として育つナンキンキノカワガだと判明。このささやかなコンクリートジャングルの片隅に息づくモスラちゃんとわかって一層親しみ深いものを感じたことです。
ナンキンキノカワガ コブガ科
Gadirtha impingens
出会うのは3月から11月。
本州でも関東以西、四国、九州に分布。灰白色で脚が相当に毛深い。
今、一度この精いっぱい生娘っぶりを誇示した腕をとくとご覧くださいましね。
暖かかった、いや暑いほどだった11月の最終日、かれらにとっては最終ステージですが、よく訪ねてきてくれました。
♪~ 小さなハゼの木の下で/あなたと私/なかよくあそびましょう/ナンキンハゼの木の下で ~♪ というリフが思わず口を突いて出るくらい、この控えめな生き物と小春の日向で出会えたこと・・・しみじみうれしい気持にさせてくれました。