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夢みるきのこ

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2020年11月06日
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   図書館の棚からはみ出していた本を手にしてうれしくなった。
 己が身の闇より吼えて の副題をもつ非常に巧みに構成された蕪村伝だ。(2018年9月刊行)
 芭蕉から始まった僕の俳句生活は、二十代の10年間、蕪村に惹かれながらも当時の俳句界にひきずられ芭蕉一辺倒で過ごしてしまった。不惑以降、蕪村と真剣につき合いだしてからもかれこれ30年になるが、その思いのかけらすら言葉にできていないのは情けない限りである。
 この己が身の…の副題は蕪村が懇意にしていた円山応挙の黒犬の画に画賛を頼まれ蕪村が直筆でしたためた「己が身の闇より吼えて夜半の秋」から採ったものである。
 蕪村とその周辺のことをあしらった小説で、かってこれは凄いと思ったものに葉室麟の『恋しぐれ』があるが、こちらはそれに劣らず凄い。葉室のそれが、放浪の末にまがりなりにも南画のプロとしての評価も定まり京の烏丸四条に小居を構えた蕪村の自適の日々を描いたものであるなら、こちらは自身の生涯を隠し通した蕪村の闇の部分にスポットをあてた蕪村伝だ。このほか蕪村の小説は数冊もっているが、すべてこのニ著を超えるものではない。
 蕪村の書の凄さを見抜いた碧梧桐を語り部としてはじまるこの小説を、今日は丸一日精読することに充てたい。





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最終更新日  2020年11月06日 10時08分48秒
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