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夢みるきのこ

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2020年11月17日
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カテゴリ:きのこ地蔵
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​ ここ10日以上晴天続きだが、晩秋でしかも夜露、霧にことかかない丹波の山だからそこそこのきのこと出会えるかもと、淡い期待を抱いて登りはじめると、林道の脇にまず大年増の黄金色のきのこたちがお出迎え。
​ コガネタケ ​Paeolepiota aurea ​​​
​​   別名 きなこたけ ふくらんだ細胞がきのこ全体にきなこをまぶしたようにみえることから名づけられた。すでにきなこの名残りは失せていたが、秋に林縁や田の畔、道端に傘の径20cmそこそこでドデンと群生するので比較的なじみ深いきのこである。 
 Paeolepiota とは黄褐色の鱗片のある耳(かさ)をもつ、aurea は黄金色の、でまさに種の特徴を言い当てている。​​


 私は小便臭と呼んでいるが、新鮮な個体は強烈なアンモニア臭を伴うので苦手な人も多いかと思うが、れっきとした食用きのこである。

​ 佐中峠から三尾山主峰への道はしっかりとした松が林立する広葉林で、幼い頃両親に連れられてマツタケ取りに興じた同行のSさんは、かすかな匂いに導かれてきのこを探している。その匂いのもとはマツタケではなくヒトクチタケだったが、やがて広葉樹の切り株にクリタケを見つけ出した。
  クリタケ ​Naematoloma sublateritium​​

  きのこの中でも最も野趣に富んだクリタケは、私の大好きなきのこでかって町おこしに協会を挙げて協力した佐用郡南光町(現佐用町)の生活改善グループに原木栽培の手ほどきをしたことがある思い出深いきのこだ。
 ラテン名の Naematoloma は、糸のある縁、sublateritium は、ほぼレンガ色という意味。明るい茶褐色で傘の縁に白い繊維質の鱗片をつけることから名づけられている。柄は中空でかすかなツバをつけていることがある。同属の死亡例のあるニガクリタケ N.fasciculare の出始めは、明るい褐色を呈していてこのクリタケと寸分の違いもないので注意を要する。​幼菌を採取した際は、一晩置いてヒダの色の変化をよく確かめてから食用に供することをお勧めする。クリタケの胞子色は最初白色で成熟すると胞子本来の淡紫褐色になると言われるが、クリタケの老成したヒダはニガクリタケと同じオリーブ褐色のままであることが多いので、この2種はよく混同されるのだ。


 わが国の林業政策で里山にスギ・ヒノキを植林することを奨励したが、戦後は、南洋材などの安価な材を輸入することで復興を成し遂げたことから、山間部と集落の間にスギ・ヒノキベルトがそっくり放置状態となり、それがヤブ化して動物も棲めない空間と化し、近年害獣問題やスギ・ヒノキ花粉症などの問題を引き起こしてきている。その、きのこも敬遠するスギ・ヒノキ林に大量に発生する美しい白色のきのこがある。それがスギヒラタケだ。
 ​スギヒラタケ ​Pleurocybella porrigens ​​​
 ​​​夏​から秋、特に晩秋スギや針葉樹の朽木、倒木上に多数重なるように発生する。老成した大型のものは下のように切れ込みが入ったり縁が波立ったりする。Pleurocybellaは側方の耳、porrigens は、広がったという意味で、全円を成さない傘の群生する様を言い当てている。


​                    下山して中山新池の近くで認めた老成したスギヒラタケ​​

 キツネタケ​Laccaria laccata
 
​松まじりの広葉林に発生する。典型的なキツネタケは傘の中央がへこむことが多いが、柄に縦の繊維模様が入り根元にむらさき色の菌糸束がみられるオオキツネタケ​​​​L.bicolor​​​  とキツネタケL.laccataは大きさの違い以外にそんな点で区別できる。Laccariaとはラッカーニスを塗ったようなの意味で新鮮な個体の赤褐色の艶やかな様子からの命名。四季を通してよく見かけるきのこで量的にも確保できるが、繊維が固くて食用ながらさほどおいしいきのこではない。​




 下山途中の山道で巨倒木の裏にそっと顔をのぞかせていた憎い奴。
 ​ヌメリスギタケ ​Pholiota adiposa​​​
​​  
​​​春から秋に広葉樹の枯れた幹などに多数発生するが、近畿地方では​、冷え込みが本格化する頃よくみかける。傘のへりにはとれやすい鱗片があり、傘、柄ともにヌメリがある。胞子色はさび褐色なので、老成するとヒダはさび色を呈する。信州あたりではこんな孤独な感じで発生するヌメリスギタケは少なかろうが、近畿では群生することの方がまれである。
ナメコも含むスギタケ属の名称 Pholiotaは鱗片のある耳(傘)、adiposaは脂肪のという意味のラテン語。脂肪とは、おそらく脂じみたヌメリのあるきのこという意味だろう。

 下山途中の林道のそこここに見事な鱗片をもつムジナタケを認めた。最初コウタケかとときめいて駆け寄ったが、ムジナタケだった。こんな美しいムジナにめぐり逢うことはめったにない。

  ​ムジナタケ Psatyrella velutina​
  道端などで周年みかけるきのこだが、通常はもっと獣めいた立ち姿で、こんなみずみずしい個体に多数で迎えられることはまずない。​傘の表面の茶褐色の繊維状の鱗片があまりに見事でコウタケの幼菌かと見間違えたが、ニオイできのこを探り当てる鼻利きのSさんが感知しなかったのでコウタケではないと思いなおして近づきヒダ・柄の形状も撮影。モリノカレバタケはじめ、ナヨタケグループのキノコはイタチやムジナ、ムササビと野獣の名前が付せられることが多い。里山でごく普通にみかけられる彼らは、その傘や柄の表情から親しみをこめてこう呼ばれてきたようである。

 三尾山の旅は谷川の流れからは遠いが、登り下りともに谷沿いの林道なので、こうした沢蟹と往きも帰りも出会った。

 この日終始わたしたちを楽しませてくれた今の季節にピッタリの野草は、その名もマツカゼソウ(松風草)でミカン科の独特の臭気があり、本に挟んでしおりにすると紙魚などの虫を寄せ付けないらしい。
立冬も過ぎた神無月朔(新月)の本日、花期は終わっていたもののまだ名残りの花をつけているものもあった。
 中山新池から東本の三尾山登山口のパーキングまでは、寄り道しながらの足では2時間はかかると思ったので、ヒッチハイクを考えていると、軽トラックのそばで仕事の打ち合わせをしている好々爺に出会ったので、道をたずねる口調でそれとなく挨拶すると「ここからはまだずいぶんと遠いので連れてったげる」と案の定のお言葉。荷台に飛び乗って時短に成功。
 日暮れまでに車までもどった私たち一行は、喜びころこんで、Hさんの知り合いで国領に住むというロシア・ナロードニキのニコライ・ラッセルのお孫さんのお宅を訪ね、丹波の黒豆とサツマイモのスイーツを戴き、国領茶を数杯かわりして、それから火星が明々と輝く夜空のもと国領温泉(700円也)に浸かり、篠山市内へ寄り道しデカンショうどんを腹一杯食べ、さらにJR草野駅ほど近くのバードレスキュ―隊・隊長のSさん宅の寝込みを襲い、1日を数十倍楽しんでここでもきのこをたくさんもらい帰路についた。
 あこがれの三尾山の一日は、かくしてあっという間に終わってしまった。
また来る日をたのしみに、「あばよ三尾山」

                               黄昏の里から眺めた三尾山






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最終更新日  2020年11月17日 12時36分36秒
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