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カテゴリ:ヘテロソフィア・アート
光文社文庫の『踊る猫』を読了。以前に紹介した折口さんの蕪村を登場させる作品集『恋する狐』との相違点は、こちらが蕪村の俳画や作品からイメージを膨らませて作られたもので占められているということだろう。うれしいことに、こちらには、折口さんの第三回小説宝石新人賞受賞作品「梅と鶯」も収録されており、これがまたじつに良い。 私は、30歳ころからは、文学評論や研究書、ドキュメンタリー文学にばかり浸ってきたので、久々にステキな小説の文章に接し、いささか興奮した。とりわけ「梅と鶯」は、なるほど新人賞をとるにふさわしい格調のある文体で、私は生まれてはじめて小説の文章にあこがれを抱いて、70の手習いとしてこれから身に着けたいと思うまでになっている。それほど、私にとって彼女の蕪村を巡る文章は魅力的だった。 なんとか私も、この世からおさらばする前に、私の温めてきた構想を少しでも小説の分野でも残したいとまで思うまでになっている。 これは、私にはことのほか難しいが挑戦する値打ちはありそうだ。 それくらい娘か孫の世代の折口さんからは「負う子に教えられ浅瀬を渡る」ではないが「負う子に教えられ深みにはまる」ほどの魔力をもっていたということだ。 あれやこれやのきのこ人生を思いめぐらせて来て、江戸期の蕪村こそが究極のきのこ的生き方を貫いた人物と考え、私の理想的な生き方としてきたが、この折口さんという人はそんな私の蕪村にまつわるイメージをそっくりそのまま見事に形象化してくれており、ウーンと唸らされてばかりだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年11月30日 22時31分24秒
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