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2020年11月30日
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 光文社文庫の『踊る猫』を読了。以前に紹介した折口さんの蕪村を登場させる作品集『恋する狐』との相違点は、こちらが蕪村の俳画や作品からイメージを膨らませて作られたもので占められているということだろう。うれしいことに、こちらには、折口さんの第三回小説宝石新人賞受賞作品「梅と鶯」も収録されており、これがまたじつに良い。
 私は、30歳ころからは、文学評論や研究書、ドキュメンタリー文学にばかり浸ってきたので、久々にステキな小説の文章に接し、いささか興奮した。とりわけ「梅と鶯」は、なるほど新人賞をとるにふさわしい格調のある文体で、私は生まれてはじめて小説の文章にあこがれを抱いて、70の手習いとしてこれから身に着けたいと思うまでになっている。それほど、私にとって彼女の蕪村を巡る文章は魅力的だった。
なんとか私も、この世からおさらばする前に、私の温めてきた構想を少しでも
小説の分野でも残したいとまで思うまでになっている。
これは、私にはことのほか難しいが挑戦する値打ちはありそうだ。
それくらい娘か孫の世代の折口さんからは「負う子に教えられ浅瀬を渡る」ではないが「負う子に教えられ深みにはまる」ほどの魔力をもっていたということだ。
 あれやこれやのきのこ人生を思いめぐらせて来て、江戸期の蕪村こそが究極のきのこ的生き方を貫いた人物と考え、私の理想的な生き方としてきたが、この折口さんという人はそんな私の蕪村にまつわるイメージをそっくりそのまま見事に形象化してくれており、ウーンと唸らされてばかりだ。





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最終更新日  2020年11月30日 22時31分24秒
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