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2020年12月01日
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​ ​​​​​​山口紀子種(tane)展 11月30日~12月05日             
  大阪北西天満・現代クラフトギャラリーにて

  コロナ禍で明け暮れた令和2年、この作家は、個人的にも交通事故に遭われたりで波風のひときわ高い場所で活動を続けてこられたので、今年はパスかとあきらめていた。ところが、案内よりもフェイスブックで特急はくたかで大阪に向かっているとの報。たちまち私の頭の中はギョギョギョの鬼太郎ならぬ魚マークで一杯となった。そこには遠慮がちに個展の案内も添えられており、日取りをみれば開催初日しかいけない。そこで、取るものもとりあえず駆けつけてきた。

 今回のテーマが、作家の中でパキンとはじけてできた作品と思しきメイン作品が表通りに向かって展示。陶芸がメインの作家だから当然だが。
  さて、この作品「しあわせの種」の語りと会場の個々の作品がどう響き合っているかをじっくりと眺めてきた。
​                                 しあわせの種​
 現代クラフトギャラリーでの歳末恒例となった彼女の作品展の面白さは、長野県北部在住ということも大いに反映している。そこは、戸隠や黒姫の森、野尻湖といった我が国の博物誌の始原の栄光を伝える地で、今も刺激的なナチュラルヒストリーを伝える活動が続けられている。彼女はそんな流れに積極的に参画し、そんな日常から立ち昇る気の流れが、おのずと地球生命誌の流れにシンクロしていてとてもトレンディ―なのだ。わたしの問題意識にも絶えずシンクロしていて、そういった意味でも目の離せない作家のひとりである。​
詳しくは、次号『月のしずく』31号で紹介したい。

 このコーナーは種々の形の種の標本(左)を並べたコーナー。
                               種の標本のひとつ
 私も、ラボMの標本箱用に2点ほどゲットしたが、さまざまな造形の陶器の種子から伸び始めた赤銅製のひこばえがここで提示され、それがまわりのコーナーで​芽ぶき、光り、育ちたい、遠くへ行きたいという願望をそれぞれに満たしていく。そんな種子のもつ生命力をわかりやすい形で表現してくれていることだ。
 これは、ある意味、目下 Calo Bookstore & Cafe で開催中のコラージュ作家・上野王香の『種葬』​(ロンドン在住)​と真逆の表現ながら意外にも、生と死、そして再生といった卑小かつ、かけがえのない生命の表現として、その根っこの部分では共通するものだ。​


​​ 具象、抽象にかかわらず、この、わかりやすいということ(すなわち言語化できる作品)が、私のアートの中では何よりも重要なファクトであることはいうまでもない。
私が親しいアーティストたちに短詩を薦めるのも同じ意味合いからである。
極言すれば、言葉なきアートは私にとっては意味をなさない のである
 民藝とアートの薄明域にたちのぼる作品に私がもっとも強く反応するのはそうした心意による。飾り気のない肉声による言葉が、​
作家の制作意図の解説ではなくそれぞれの作品にどうしっかりと吹き込められているかが私のアートの評価では最優先される。
それは「ちょっと背伸び」の庶民にきわめて親和性のあるものであり、そんな庶民の心を烈しく動かす力をもつ作品たちなのだ。​​
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最終更新日  2020年12月01日 13時05分33秒
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