|
カテゴリ:きのこ目の日本史
日本の森にはこうした人々の目には触れないまま現れては消えていく微細なきのこたちであふれている。月や惑星の消息には目が行くが、星座に仕立て上げらた星は別にして、星屑にはさほど関心を持たないのとよく似ている。日本書紀で登場する神で、珍しく天神であるにもかかわらず、悪神と名指しされた神がいる。天津香々背男(あまつかかせお)、別名天津甕星(あまつみかぼし)だ。国土平定に最後まで抵抗した天孫族の身内の神とされた。現在常陸の国の大甕神社に祀られている。 この星神の抵抗神話は古事記には触れられていないことも覚えておきたい。 日本神話には不思議なことが多々ある。太陽神が女性であること。月神は早々と殺されてしまう。これは月読命(つきよみのみこと)として各地で細々と月読神社としてまつられている。 そして星神はあきらかに国賊と名指されて討伐され磐座に封印されたと創成神話は語る。世界の神話からみてもあきらかに我が国の神話は異常な操作が加えられ、天照大神のみが君臨する神話に書き換えられている。 ここには、壬申の乱を平定し、皇親政治をようやく実現した8世紀の王権の思惑がにじんでいる。 カカセオは山田の案山子にむすびつくが、カカとは、天孫が中津国に降臨した折に、猿田彦がちまたに立ち尽くしていたとされ、その目はランランと輝き赤かかち(あかほうずき)のようであったとする描写のカカに通じ、地蔵菩薩ご真言のオム・カカカ・ビサンマエイ・ソワカの赤く輝くさまを言い表わすカカに通じる。このあまつみかぼしくんは全国の星神社、星宮神社に祀られている。このかかせおは一神教世界で堕天使とされた金星のジャスパーになぞらえたり、北極星に比定されたりした。北極星は天一神とされ各地の妙見社に祀られている。この星神にまつわる神社には不思議なことに秦氏が深く関与していることも見逃せない。 かくしてこのような微細で屑に等しい存在は列島の創成神話からも黙殺されていった。 私は、大地に時としてさんざめくきのこは地の星なのだと考えてきた。 井上靖は散文詩集『挽歌』の十一月という詩編の中で、鬼の部首をもつ漢字が多く星と鬼に付せられていることを指摘し、この鬼編の漢字を麻雀牌のようにかきまぜるとどれが星でどれが鬼かより分けるのが難しいとし、所詮、星と鬼とは同族なのであろうと指摘している。そして、 一つは天上をうかがって星になり、一つは地上にひそんで鬼となったのである。だから一年中でもっとも夜気の澄み渡る十一月になると、界を異にした二つの鬼たちが互いに呼び合う声が聞こえる。その魂のきしみが聞こえる。 と結んでいる。 わたしの<きのこ目の日本史>とは、こうした微細きわまりない命の声を拾い続けることなのである。 2020年の大みそかは、旧暦でいえば霜月十一月の立待月の十七夜に当たる。身近な存在である日・月・惑星の天空ショウを追いながら、ときには天地で呼び交わす星屑と鬼(=隠)の声に耳傾けるひとときをぜひもっていただきたいものだ。 2021年はきのこ歴第四期8年の5年度。そろそろ、星屑も地の鬼も森のきのこにつらなるすべての月のしずくに等しい存在を拾い集めてひそかに厳と小流れをつくる作業をはじめるべき時がきたと考えている。 この一年、皆々様のご厚誼ご交配に深謝申し上げ、以上を以って贈る言葉としたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年12月31日 11時14分15秒
コメント(0) | コメントを書く
[きのこ目の日本史] カテゴリの最新記事
|