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カテゴリ:きのこのイコノロジー
密教美術の大きな成果は曼荼羅図に表れています。この密教の世界観のイコンは静的ではなく動的な相に於いて捉えることに意味があると言われてきました。 福岡伸一さんの『動的平衡』Ⅰ・Ⅱは、その20世紀版の発見でした。 同じく、松尾芭蕉は俳諧の極意を「行きて帰らぬ心の味わい」と語っています。 東洋の智慧は、この動的平衡を多角的に掘り下げてきて今もその途上にあるということが大切です。「貧乏ひまなし」これが東洋の智慧です。 小冊子『月のしずく』33号よりはじめる「きのこのイコノロジー」とはきのこの形態から出発し、きのこを行きつ戻りつしながら、そのイコン(米語読みではアイコン=図像)解釈学(とは言っても学とはほど遠いたわごとでしかありませんが)の意味するところをさぐる旅なのです。「旅は道連れ 世は情け」と言いますから、どうぞしぱらくご一緒に旅をいたしましょう。 人生なかばにして山岳写真撮影の旅の途中に出会ったきのこは、スフィンクスさながらに謎かけをしてきました。「おい、そこのカメラをかついでいるあんちゃん、本当に俺が見えているのか」と。 宮澤賢治が『春と修羅』で「けらをまとひおれをみるその農夫/ほんたうにおれが見えるのか」と語りかけたのとまったく同じように。 私のきのこ人生はこの時から始まりました。 そのきのこの問いかけは、以来ずっと私のからっぽの頭と身体に鳴り続けています。きのこからは列島人はたちまちきのこ雲を思い起こします。この悪夢はその後も何度も列島を見舞っているにもかかわらず、ほとんどの人が忘れてしまっています。まったくきのこをみていない証拠です。 きのこときのこ雲は密接な関係があります。「陰陽図」(図像上左)そしてひまわりの種の配列の二重らせん(図像上右)、DNA,RNAの複合らせん、星雲団、すべてきのこと密接にかかわっています。 これはきのこ星雲時代に私が制作し、J-FAS日本キノコ協会のロゴマークに起用したものです。きのこ観察会や菌類調査の際の指導員のために腕章にも用いています。写真上はそのキノコ・レインジャーの腕章(藍と緑があります)。何かに似ていませんか?。そうです、ナチスドイツのカギ十字の腕章です。ナチスドイツはアーリア系神話を確実にものにして理論武装しました。ナチス恐るべし。 宇宙の星雲団、地蔵祠のシンボルマーク、ナチスのかぎ十字。卍(まんじ)に正、逆はありません。蔓植物の左右巻同様、視角ひとつで変わるのです。 この腕章は、「天上天下唯我独尊」の甘茶仏のきのこと逆まんじの星雲のパロディーです。私のそれはヒンディーのクリシュナ神の胸毛(逆まんじ)をモデルにしています。 きな臭さがたちこめる21世紀、そんな深刻な状況を笑ってかわす心の余裕がぜひとも大切です。それにしても、何事もしっかりと見据えておかないと悪夢のよみがえることは必定です。また「本当におれがみえるのか」ときのこに叱られることがないようにしましょう。 「たかがきのこ、されどきのこ」の「たかが」と「されど」をごちゃまぜにしてきのこ汁にすると個々のきのこはなんの味わいもありませんが、出汁は絶妙な味わいになります。それが実は、きのこの本当の醍醐味なのです。 こんなことを気ままに語っていこうと思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年04月08日 11時45分23秒
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