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カテゴリ:ヘテロソフィア・アート
形の魅力をわたしに教えてくれたのはゲーテだ。 MORPHOLOGY 形態学というと何か物々しいが、形を対象とする学問は、学際的な分野の代表的な学問で閉鎖系科学の方面からの評価の届かない未開の分野。自然愛好家のアマチュアから科学者までが同じ地平に立って語り合い理解し合うことのできる格好の場であると私は受け止めている。 「月のしずく」33号で少し触れたが、20世紀の後半に裂け始めて以来埋めがたい深淵を呈してきた芸術と科学をつなぐものとして注目してきたきのこの形を思いつくままに語るシリーズを始めるにあたって、以下の著書がとても参考になるので紹介しておこう。 『形の冒険』1987年2月 工作舎 刊 ランスロット・L・ホワイトの原著『Accent of Form』の訳書で幾島幸子訳、金子務 解説。 「アリストテレス、ダ・ヴィンチ、ゲーテ以来の形態学の伝統が、新時代の科学を創造する武器として、現代に蘇生する。自然と人間のイマジネーションの世界を探り、生命発生と意識進化の謎に挑戦する(物理学者)ホワイトの 代表作。ブリゴジーン、ルネ・トム、ハーケン、ホフスタッターの登場を準備し、21世紀へ向けた形態学ルネッサンスを高らかに宣言する。」との紹介文に見られるように鋭い指摘に満ちている。形態学関連の基礎資料の筆頭におかれるものだ。 『自然のパターン』形の生成原理 1987年7月 白楊社 刊 ハーヴァード・メディカル・エリアの建築設計事務所長 ピーター・S・スティーブンスの建築畑から形(フォルム)についての根本問題への関心掘り下げていったもので、氏はハーヴァードに集まるフィロモーフズ(愛形者たち)の中心メンバーとある。こちらは白楊社編集子の異常な情熱をこめた写真解説が見事な著書であるが、内容は文系頭にはいささか難しい。しかし、一貫して述べられているのは自然におけるフォルムやパターンの生成原理は、もっぱら空間あるいは場そのものがもつ作用力ないしは拘束力にあるとみている点である。 あらゆる形態学の始点はここにあるとみて間違いない。 これら2つのすぐれた著作の間をつなぐものが以下の2著である。 『エンジニアから見た植物のしくみ』1997年9月 講談社 刊 軽部征夫 東大先端科学技術研究センター教授、同センター学博士花方信孝 共著。ブルーバックスの1冊で、環境における植物の驚異のメカニズムをとりあげ新しい植物像を描き切った労作。 『オウムガイの謎』1995年9月 河出書房新社 刊 ワシントン大学地球科学科教授および動物学科準教授のピーター・D・ウォード 監訳 小畠郁生 対数ラセンを描く貝殻で私たちにもなじみの深いオウムガイの解読書で、生きている化石の研究から地球生命体への関心へと私たちを誘ってくれる。 これらのほか形の面白さ不思議さについて書かれた手持ちの著書をさまざまに参照しながら、私の関心の中心にあるきのこの形について追々綴っていきたいと考えている。 私が人生の大半を投じて自然にまみれて生きてきたのは、なんといっても自然以上に信頼に足る先生はいないと考えてきたからである。そんな自然の信号をきのこを通してほんの一部でも解説できれば私の役目は終わる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年05月02日 12時08分26秒
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