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夢みるきのこ

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2021年07月18日
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  椿﨑和生の個展が大阪・福島のラッズギャラリーで開かれた。淡々と作品を作り続ける彼は、コロナ禍にあっても<我が道を行く>ことを唯一の方法論として作品に挑みつづけている。
 レトロな昭和の町並みや海をテーマにした作品に加えて、近年とみに力をそそぎはじめているのが、素材そのものの力を表現に採り入れはじめたことで、私としてはとてもうれしい傾向だと感じている。数十点の中から、今回私がとりわけ気に入った作品を2点紹介する。


​ ひとつは、方形の器の世界に、万巻の書物を彷彿させる紙片を詰め込んだ作品。知や情報の体系のひずみをモチーフにしたものとみた。​

 さらにひとつはこの作品。

 ミクロな世界の動向と葛藤が任意の粒点やときにきのこ形を呈する刃型のオートマティズム文様。

 ​それは、多様性世界のせめぎ合いや協調をさらなるカオス(混沌)として表現しているようにも見えるし、絶え間ない点刻に没頭することで忘我の域へ脱け出ようとあがく作家の現在(いま)を表現したようにも受け止められる。
 それは、前回紹介したミズタニカエコの「宇宙よりの時間」にも通じるものである。​


   ときに稚拙に流れる作品も散見するが、そんな彼の庶民的な持ち味を好むファンも多くいるようで、そのもてる俗っぽさをも平気でさらけ出すこの作家の誠実な生き方に私は共感するものである。

 そもそもがこうしたレトロな下町風景(写真上)を持ち味とする作家だが、この作風の変遷を今回の作品に即してここで紹介しておく。
 ​彼のファンにとってはおなじみの上のような作品が、以下のような抽象化を遂げはじめる。前回ラッズで開催された彼の個展はまさにその過渡期で、その時はさまざまな樹木の樹皮を活かした表現が半ばを占めていた。​

 この上記の制作過程を経て今回、以下の木口のさまざまな表情をそのまま生かした作風に変化してきたことがおわかりいただければさいわいである。
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最終更新日  2021年07月18日 08時22分49秒
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