無印良品の店で売られていたというコオロギの粉末入りせんべい
ラボMでの茶人シリーズの第一弾は、井上靖原作、熊井啓監督の『本覚坊遺文 千利休』。
生物世界と人類社会の媒介者としての<きのこ>を考察する上で、もっとも重大な茶人の侘び茶の文化。
それは、我が国の上代の和歌の世界において発見され、連歌に於いて展開期を迎え、中世の鎌倉仏教でのパラダイム転換を経て室町期に出揃い、江戸期に大成された数寄、すさび、侘びの我が国固有の文化は、キリスト教の聖書に於いても散見される重要な概念である。そのもっとも見事な大成者が堺の魚問屋のドラ息子・千宗易であり、猿楽を能に大成した観阿弥世阿弥親子であったことはどんなに強調しても強調しすぎることはない。
利休は、その侘茶の文化の完成を秀吉という戦国時代の覇者との関係の中で磨き上げて果てた。その一部始終をラボMで語り合おうというサロンがいよいよ始まった。「月のしずく」新年号では、寺岡正隆さんの『本覚坊遺文』の面白くも茶の湯の精神を鋭く洞察したレジメとともに、きのことの関連でくわしく触れたい。
「月のしずく」もいよいよきのこや微生物の核心部分に抵触するステージに差し掛かっており、きのこのたわごとめく言説で満たされており、きのこ屋さんもきのこと無縁で生きてきた一般の読者にとってもハテナマークで頭が一杯になる内容で、顰蹙を買っているが、この段階を経なければ生き物としてのきのこの真の意味は遂に永遠に見えてこないのでしばらくは我慢してもらうほかない。
そのひときわ淋しくなったラボMのサロンの集いにひょっこり参加した豊中のTさんが持参したせんべいが昆虫食世界への序奏とでもいうべき「こおろぎせんべい」であった。こおろぎの粉末を利用したせんべいで、なんと無印良品の棚で見つけて持参してくれたのだ。味はこおろぎ臭はまったくなかったので、表記がなければ知らずに口にいれてしまうものだが、さりげなく庶民生活にすべり込んできたところが面白い。
きのことこおろぎせんべい。これらの世界がそこはかとなくつながる話が茶人でありきのこの世界であると私は考えているのでうれしい差し入れであった。