|
カテゴリ:ヘテロソフィア・アート
10年ほど前に<アート大阪>で出会って以来、ずっと注目してきた稲田早紀さんの個展がリニューアルした NII Fine Arts の東京、大阪(11/6~21)で 開催された。 この作家は、しろつめ草(クローバー、苜蓿)を中心に、身近な野草のブーケやリース、冠などを丹念に描き深化を続けてきた。 私がこれまでに出会ったあまたのアーテストの中でもとりわけきのこ的なアーティストだと考えて追っかけてきた。 作品のほとんどはキャンバスにアクリル・鉛筆で描かれ、モノクロームであったり淡彩を施したもので占められているが、<しろつめ草>を見凝めるまなざしの深化には畏るべきものがあり、絵の前に立つと思わず引きこまれる魔力をもっている。 会場では、孫の世代に相当する作家がにこやかに出迎えてくれた。ここ数年の間にますますしろつめ草そのものに同化していくようなきゃしゃな立ち姿だったので「もっとしっかり食事を摂らなくてはだめだよ」と思わず言いそうになったがすんでのところで呑みこんだ。 1988年大阪に生を享け、2011年京都市立芸術大学卒。以来、精力的に野に在る野草ではなくそれぞれの思いをもった人たちに摘まれ、そのままテーブルの片隅に置かれたままの状態であったり、加工され編まれて別の人生を歩むことになった野の草、とりわけしろつめ草のさまざまなライフ・ステージ、たまゆらの露の命の姿を執拗に描き続けてきた。 今回の展示では、草絮のチャーム(ケセラン・パサラン)を配したしろつめ草(東京)と、同じく鳥の羽根のチャーム(お守り)を配したしろつめ草(大阪)が、こらえようのない不安の時代に突入した私たちの肌感覚を見事に表現しおおせていた。ケセラン・バサランのしろつめ草は東京で売られてしまい、原画と出会うことは叶わなかったが、このかぎりなくモノクロに近い淡彩の作品には心魅かれた。 11月のアートの旅は、多彩でまだまだカレンダーに追いついていないが、この作家の作品は本格的な冬が来る前にぜひ紹介しておきたかったので、順不同でここに紹介することにした。 「月のしずく」でも近々採り上げたい作家の1人である。 上記2点のほか、いずれも私にとっては魅力あるオーラが溢れているが、会場では、こちらの作品も心に引っかかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年12月02日 09時59分40秒
コメント(0) | コメントを書く
[ヘテロソフィア・アート] カテゴリの最新記事
|