きのこと出会って、大きく旋回をはじめた私の人生は、博物誌の手法できのこを通して(Through The Kinoko)見えてくる世界を自分の得意とするジャンルの手法で形にしていくという広い意味のアート活動です。それは本来、戦後大きな溝ができてしまった我が国の人文科学と自然科学をノンアカデミー、すなわち趣味の領域で融合させていくという狙いがありました。
これは簡単なようで非常に難しい。
しかし、そんな他愛のない私たちの活動が20世紀までの人類が営々と積み重ねてきた文化・文明の賜物である社会主義やルネッサンス以来の普遍主義や宗教が軒並み力を失い崩壊していく中で、次第に意味を持ち始めているのが現在です。
私はきのこの聖地を訪ねることで文化装置としての天皇制のルーツを探り我が国の歴史ときのこの博物誌を結びつけることに終始してきました。
今年からはじまるムックきのこクラブのきのこ旅はそんな道草人生で得てきたヒントを形にしていこうと考えています。
いよいよ2月がそこまできました。まずは、神話時代の国史を眺めながら黎明期の日本の真実を水銀朱と鉄の道を探りながら歩きはじめます。
歩きながら考えるので、ずいぶんと忙しくなりそうです。
この活動のシンボルともいうべき図像(写真上)は、かって買い求めたTシャツの図柄「月夜のマッシュルーム」によっています。
ヘテロ生物・きのこは太陽の世界ではなく月の世界の生き物。それは、女性原理の支配する薄明世界の招来を意味しています。男性原理の社会から排除され続けてきた弱者の立場で物事を考えようという意味をこめています。
私たちの活動が支離滅裂で中途半端なものにみえるのは、この世界とパラレルなもうひとつの世界の可能性を総合的に訴え続けてきたからです。
その脇に小さくあしらっているのは、冊子「月のしずく」のシンボル図像で、ロシアの木彫アーティストによるロシアの森の精・レイシーです。