為固による鬼面
立春の前夜の節分には鬼はつきもの。
鬼は隠(おん)に由来する言葉だという。そう、隠れた、いや今となっては、隠されたものたちの総称だ。姿は見えないがものすごいエネルギーで人々を圧倒してきた畏怖すべき存在。それが姿をさらけだすと「幽霊の正体みたり枯れ尾花」とかなんとかで、なーんだこれっきりのことでおびえていたのかと軽んじられて、やがて畏怖すべき存在から鬼とされて消されていった存在なのである。見えたら最後名づけられたらおしまいなのである。だから忍者は組み手をせずに決して姿をみせない。きのこが面白いのはパッと見ただけでは名人でも名づけることがなかなかむずかしいからでもある。
生き物のいのちも電子顕微鏡で見えてしまったら、「なんだこれっぽっちのことでやいのやいの言ってきたのかい。へそが茶沸かすぜ」とばかりにゲノム編集や遺伝子組み換え自由自在と相成ってしまった。その逆襲がエボラに始まりコロナで文明人をタジタジにさせているウイルスではないだろうか。猿知恵で早合点してDNAやRNAをほじくり返すと取り返しのつかないことになるのがわからない連中には何をいっても始まらない。
私の見据えてきた<きのこの文化>とは、「キ」を兆すものすべて。すなわち、木の子にはじまり鬼の子にいたるまでキ・奇・貴とつながり黄も鬼も当然含まれる。「月のしずく」は、そんな隠・おん・鬼の目にはみえない世界の文化とそれに伴うエチカ(倫理)を早く確立しようという勧誘レターなのである。したがって当然のことながら<鬼の研究>もメインの事業であるぞな。
超B級フィギャーの「ムータン」 れっきとした宇宙時計だそうだ。
それらは隠(おん)の世界すなわち白日の世界というよりも月影の世界のいきものたちの総称なのである。きのこのニュースレターが「月のしずく」であるのは深いか浅いかは別にしてそんな意味がふくまれている。軽すぎて話にならないという人も若干いるみたいだけど。
アメリカ村のラウンドアバウト事務所内の神棚に飾られていたという超B級神様「ガルーダ頼み」
かって日本キノコ協会時代にチンドン屋の全国ネットで熱いアートイベントを手掛けてきた「東西屋」さんと「なんかパーッと面白い事やんねえか」と持ち掛けたとき、頂戴したアートブックが南方元氣こと関口徹生さんの『南方元氣楽説(なんぽうげんき・ロードせつ)』ブレーンセンター刊であった。80年代から90年代の大阪は本当にいかがわしさ満点の元気で満ちていた。その元気があふれ出した本がこれだった。ゴンチチのチチ松村もリリパットアーミーのわかぎえふも東西屋の林幸治郎はんも制作協力している。
東西屋さんは当時ちんどん世界のジャンボリーを年々手掛けて一世を風靡していたので落ち着いたらぜひといったまま宙ぶらりんになったままだが。
ここに掲載する図像は、その元氣印のほんの一部だ。またもっとすごいのをおいおい紹介する。
聖天さんこと、歓喜天のガネーシャもかくのごとし。
鬼が跋扈してやっとこさ世界は春を迎え、いよいよものみな動き出す。そんなイヴの日が節分なのであるぞ。