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カテゴリ:きのこと発酵文化「月のしずく」
九鬼藩の三田から篠山にかけて、もみの木の純林が方々にみられる。農村部を走っていて民家の庭に生えているのをいつも見上げてすごいなと感じるのが、このもみの木だ。成長が早く巨大化するので、民家の庭に植えられているのはめずらしい。当初、九鬼水軍の藩主・九鬼家が奨励したと思っていたが、モミの木は柔らかく腐蝕しやすいので舟材には不適と聞くので、どうもそうではないらしい。寒冷地に自生するこの木を温暖な近畿にも育樹可能だということに目をつけて植林が奨励されたのは、おそらく昭和の時代のように思える。 夜の東西を問わず、もみの木は神聖な樹木とされ古来、神事にもちいられてきた。西谷地区の素戔嗚神社の杜、立杭の陶芸美術館わきの住吉神社の杜、すべてこのもみの巨樹が占めているので、私は気分転換が必要な際にはしばしば足を運んで逍遥する。 クリスマスツリーにこれが用いられるのは、やはり神聖視されてきたからであろう。オゥ、タンネンバウム。オゥ、タンネンバウムの歌で知られるタンネの森は、日だまりを好む陽樹の森。 森林浴でもてはやされるフィトンチッドは、テルペンという芳香成分が主だが、このもみの木の森では、良質の芳香成分のテルペンで満たされていることでも知られている。 この樹下では、オレンジ色のあばた模様が美しいアカモミタケが採れる。紅茸の仲間ではおいしい部類に入るきのこだ。そろそろ雪の便りが届くようになる頃のタンネの森にはそんな愉しみもある。 諏訪神社の荒神事の御柱祭に用いられる巨木がこのもみの木であることは意外と知られていない。北海道のおそ松ならぬトドマツも名前に相違してモミの木であるのはもっと知られていないだろう。 そろそろ雨季をむかえるこの樹の下で葉っぱをもみもみしながらこんなことを考えていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年06月07日 09時07分08秒
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