夢みるきのこ
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芦屋の月光百貨店で開かれているコラージュ作家・山本佳世作品展を覗いてきた。 地球がヒト種で占められ成長の夢に縋りつく余りに熱球と化し自爆へと加速する中でひややかな月の光への思いがふくらむのは当然だが、この成長だけが善とする私たちの飽くなき欲望だけは止められそうにない。 「飢えた子供に文学・アートは有効か?。」…私たち大学生の頃しばし交わされた議論だが、このことはひとえにアーティストの使命感にかかっている。アートの根幹をなす問題である。
アートとは<道草の思想>だと考える私はそんなごく少数の人たちとさまざまなサロンを開いてきた。それをきのこ星雲としてゆるやかな星雲圏を夢みて今日までだらだらと生きながらえてきたが、まもなくそれも寄る年波には抗えず中断を余儀なくされるだろう。 しかし、そんな日々がアートと言葉によって支えられていることだけは確かに伝えたいものだと思いさらなる道草を続けている。 庶民生活に浸りながら常に「ちょっと背伸び」を訴えかける<きのこの思想>は、言葉を背景に沈めたアートにおいても、どこかに民藝との回路をもったものを第一義とする。一号何万円作家という画商組合の基準とは異なる原理で創作活動を続ける作家たちにこそ私はアートの真実を見ているのだ。 この基準には遠近はあっても巧拙、上下の差別はなく真摯という基準しかないのだ。これが私の見つめてきた<きのこの思想>である。 私にとってきのことの出会いはそんなアートの言葉を拾う試みでもある。 <きのこの思想>とは、畢竟ミニマルな進化論、すなわち道草の勧めでしかない。 飢えた子供にアートや文学は全く非力である。それは火を見るよりも明らかなのだ。しかし、それ以上に非力なのは本当は<進化の思想>なのである。そのことをさりげなく全身で発散しているのがアートなのだ。 そんなことを月光百貨店に立ち寄って、山本作品に触れながら、この秋さまざまなアート作品とその作家たちと対話を続けてきたことを走馬灯のように思い巡らせていた。明日は立冬以後、数週を経てひさしぶりに手ごたえのある写真家と出会ったことをお話したい。
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