ティルムラル…2
スンダルアナンタ聖仙はカイラース山を下りて、南インドに向けて出発した。旅の途中、ケーダールナート、パーシュパティナート(ネパール)、カーシー、カーンチー、ティルヴァティカイ、そしてチダムバラムの聖なる寺院にて神に祈りを捧げる。カーヴェーリ川を渡り、ティルヴァヴァドトゥライに至った彼は、その地の神に祈りを捧げ、後ろ神を引かれる思いでそこを後にした。そして、カーヴェーリ川の土手を歩いていると、一つの不思議な情景にであうことになる。牛飼いの『ムラル』という男の遺体を牛の群れが取り囲んでいた。牛たちは涙を流し、主人の死を嘆き悲しんでいた。既にいかなる感情にも囚われることなく、超越していた聖仙でしたが、この時には何故か押さえがたい哀れみを牛たちに感じ…牛たちを元気づける為にムラルの身体に入ることにした。牛たちは、自分たちの主人が生き返ったのを見て大変な喜びようをみせ、愛情を込めて彼の身体をなめ回した。牛たちを連れて村に帰り、ムラルの家に行った。そこで彼の妻に別れを告げて、聖仙は自分の身体に戻り旅を続けようと、川沿いの場所に戻ったが…隠した場所に自分の身体はなかった。困惑した聖仙はそこに座って瞑想した。そして、隠したはずの肉体を持ち去ったのがシヴァ神であることを悟った。彼は神が南インドの男の身体の中に留まって、タミル地方において生命の神秘について説く存在となることを望んでいることを理解した。村人は牛飼いのムラルが気高い聖人となったことを知り、それから後『ティルムラル』と呼び崇めた。ティルムラルはシヴァ神の化身『ナタラージャ』を祀るチダムバラムに住まいを定め瞑想の日々を送った。リンガの置かれた菩提樹のそばでの、昼夜を通しての瞑想の日々。ティルムラルは毎年末にしばし瞑想を中断し、その年に悟ったことを四行の詩に著した。そうして三千年間を過ごしたゆえに三千節の詩が記されたという。ティルムラルが残した詩は《ティルマンディラム》と呼ばれる。 『唯一なる神がある。この神、十方位の随所に遍在する。いかなる所であろうと、この神そこにあらずと誰が言えようか。ゆえに、汝、この神の御足の影に安らぎを求めよ。そして荒れ狂うカルマの海を渡り、彼岸へと至れ』 …ティルマンディラム第1451節…