カテゴリ:未来の石板2
午前四時。
「…」突然目を覚ましたみなみ。 「四時か…」 右隣ではみゅうが寝息をたて、左側ではふぁみが珍しくおとなしい格好で いびきをかいています。 その向こうではこえだが、ベッドに目をやるとクレアがそれぞれ静かに眠っています。 「…」 みなみはむくっと上半身を起こし、垂れた前髪を掻き上げながら、 ちらりとみゅうの寝顔を見ました。 みゅうの銀髪が、窓から差し込む淡い月と星の光を反射しています。 (…銀色) 小さく呟くと、ゆっくりと立ち上がり、ドアの方に向かいました。 そしてできるだけ音を立てないように、ドアを開け、部屋を出て その扉をまたそっと、静かに閉めました。 MAHO堂宿舎部分のさらに裏手にある、裏庭。 ここには三本の大きな木があります。 その真ん中の一本にもたれながら、みなみは空を眺めました。 (なんか蒸し暑いなぁ…) それから視線を落とし、自分の掌を見つめながら、ふたたび空にかざします。 「…銀色」 ぽつり、そう呟きました。 「みなみちゃん」 その時声が聞こえました。 ふっと振り向くと、パジャマの上に美空小指定のジャージの上を羽織った みゅうが立っていました。 「みゅう…」 空にかざした手を隠すように下ろし、尋ねます。 「起こしちゃった?」 「…うん。 というか、わたし、物音には敏感だから」 にこっと笑うみゅう。 ***** 緩やかな、生温い風が木の葉を揺らします。 「ねえ、さっきのこと、怒ってる?」 「ん? …ううん」 みゅうは小さく首を横に振ります。 下ろした長い髪の毛がそれに合わせて踊りました。 一瞬の間のあと、少し上擦った声で呟くみなみ。 「…あたしがちゅーしようとしたら、固まったよね」 みゅうは横目でみなみを見ながら、 「え?…そりゃあ… 恥ずかしいっていうか。 あたりまえでしょ?」 「ほんとに?」みなみはみゅうの顔を見ました。 「…恥ずかしいってだけ?」 「うん」迷い無く断言するみゅう。 「…そっか。ならいいや。 あたしの思いすごしだったのかも、ね」 「?」みゅうはみなみの顔を、不思議そうな顔で見つめます。 「みなみちゃんって、ちょっとヘンなとこ、あるよね」 「うん」迷い無く断言するみなみ。 「ふふ、自覚してるんだ。 やっぱり、ちょっとヘン」みゅうはくすっと微笑みました。 「でも、そういうみなみちゃん… 好きだな、あたし」 「告白か?」みなみは、空を見上げたまま尋ねます。 「ええ」みゅうは即答します。 「そうか。 …ってマジ!?」 みなみにしては珍しい、素で見せる驚きの表情。 それを見たみゅうは、 「冗談よ。さっきの仕返し」 と、さっきよりもほんのちょっとだけ大きな声をあげ、笑いました。 「…」 黙りこんでみゅうの顔を睨むみなみ。 でも、そのみゅうの頬は、少し赤くなっていました。 (無理してそんな復讐しなくても) みなみはため息をつきました。 そして、ぼそっと呟きます。 「さっきさ、みゅうの寝顔見てたんだけどさ」 「ん?」 「ほんと、きれいだよね」 「何を…」こんどはみゅうが声を上げました。 「可愛いんじゃなくて、きれい。美しい」 「ちょちょちょちょ…みなみちゃん!?」 顔を真っ赤にして叫ぶみゅう。 「惚れた」 「は?」 再び固まるみゅう。 「冗談」 みなみはべーっと舌を出しました。 「復讐の反撃」 「全く…」とみゅうが言いかけると、 「…半分だけね。半分は本当よ」 みなみはさっきと同じ、素の表情で呟きました。 「!? …もうっ」 と、口を尖らせるみゅう。 (っていうかどっちの半分よ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 6, 2006 11:24:38 PM
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