株と将軍
エーリッヒ・フォン・マンシュタイン、(Erich von Manstein)エルヴィン・オイゲン・ヨハネス・ロンメル(Erwin Johannes Eugen Rommel)マンシュタインとロンメル、第二次世界大戦時のドイツの名将たちである。彼等の戦略と戦術を、株式投資の相場戦の世界にたとえるとどうなるかを考えてみた。まずマンシュタインから見てみよう。彼の戦略を最もよく現わした戦いに第3次ハリコフ戦がある。スターリングラード戦終了後、ソビエト軍はドイツ第6軍のみならず、ウクライナ方面の全ドイツ軍を壊滅させるべく前進を続けていた。ソビエト軍はハリコフに接近していたが、補給路は延びきりつつあった。マンシュタインはヒトラーのハリコフ死守命令を無視、ハリコフを放棄しさらに撤退。株式の世界なら占領地に固執せず後退する戦略は、防御的損切りというところだろうか。総統命令で、ハリコフに貼り付かされていた虎の子の機甲部隊は自由を取り戻した。ソビエト軍はスターリングラードに続きハリコフも奪還したが、補給路は限界を越えていた。ドイツ軍前線各部隊から、ソビエト軍の動きが鈍くなってきたという報告がマンシュタインに入ってきた。マンシュタインはこの報告、時期を待っていたのである。株でいえば大きく調整し各種チャートが買いシグナルを発し初めたというところか。マンシュタインは機は熟したとばかりに、今まで温存しておいた機甲部隊(投資なら現金)を投入、補給路が延びきり、燃料・弾薬・食料全ての物資が枯渇していたソビエト軍に襲いかかったのである。情勢は完全に逆転し、ソビエト軍はハリコフを放棄して撤退した。マンシュタインの撤退は戦略的撤退であり、ソビエト軍に対し敗走と見せかけ、巧妙な罠を仕掛けていたのである。この戦いでマンシュタインは、東部戦線南方軍集団のドイツ軍を崩壊の危機から救っただけではなく、南部戦区の戦略的主導権をも手に入れたのである。その後のクルスク戦の作戦計画においても、マンシュタインはソビエト軍に先に攻撃させ、補給路が延びきった時点で反撃する、いわゆる『後の先』(ごのせん)を主張するが、ヒトラーは自身の『先の先』を採用してしまう。結果は東部戦線のドイツ軍にとって取りかえしのつかない敗北となってしまう。株式投資にこのマンシュタイン戦略を応用するとすればこうなる。敵の補給路が延びきる、つまり売り方のエネルギーが出尽くしてしまうとき、株価が下げ切った状態になったときに、とっておきの機甲部隊(現金)を投入する。下げきるまでは戦略的撤退、株式投資においては『機をてらう待ち』を続けることだろうか。その為には部隊を投入しなくとも逐一、敵(株価やそれをとりまく状況)を正確に把握している必要がある。株価が大きく調整した場面を狙う買い方がマンシュタイン流。つぎにロンメルを見てみよう。砂漠の狐と異名され、その意表をついた北アフリカでの戦いは戦史において様々な伝説を残した。ロンメルがアフリカ軍団の指揮官としてトリポリに到着した1941年2月、現地に到着していたドイツ軍は第5軽機甲師団の先遣隊のみであった。師団主力は3月末以降、後続部隊の第15機甲師団は5月以降到着という状況だった。トリポリ付近のエルアゲイラまで前進していたイギリス軍は、ドイツ軍の攻勢は第15機甲師団が到着する5月以降と見て一息ついていた。イギリス軍に前進意図が無いと判断したロンメルは、第5軽機甲師団主力の到着を待たずに先遣部隊のみで攻勢を開始した。このあたりは少額の資金で、状況よければ、果敢にトレードするデイトレーダーのようだ。意表をつかれたイギリス軍は混乱状態に陥り、後方のメルサブレガに敗走。エルアゲイラを占領したロンメルはここで留まっていては、メルサブレガの防備が堅くなると判断し、メルサブレガへの攻撃を即座に決定、前進を続けた。ロンメルの僅かな兵力は、メルサブレガを占領後、4月5日テンゲデル、6日メキリへと達した。このときのドイツ軍の1日の平均前進速度は150キロという驚異的なスピードだった。株式の世界なら、資金を次々と回転させ利益を重ねていくスピード重視の短期投資といったところか。ベンガジのイギリス軍は補給路を遮断される状態となり、急ぎトブルク方面へ撤退した。この後、ロンメルの連戦連勝が続き、砂漠の狐伝説が作られていくことになる。ロンメルの北アフリカの戦いは、軍事の戦略、戦術の壮大な実験ともいうべき戦いだった。ロンメルの戦いは奇襲の連続であり、戦術の特徴を分類すれば下記のようになる。1.攻撃のタイミングの絶妙さ2.地形、気象を利用した奇襲3.陽動作戦による奇襲4.高射砲を対戦車砲に使用した兵器的奇襲5.機動力を駆使し限られた兵力の2重使用株式投資にロンメルの戦術を応用するとこうなる。1.攻撃のタイミングの絶妙さ。これはまさに株式投資において最も重要なことであり、タイミング次第で下げ相場でも利益を出せるという考えに通じる。2.不利と思われる状況においても、局地的(地形気象を利用して)には勝てると踏めば積極的に攻撃する。空売りも組み合わせ売り買いする、デイトレード・スキャルピングを彷佛させる。3.陽動作戦による奇襲。これはやってはいけないことだが、見せ板による株価操作ということか。4.兵器的奇襲。デイトレードにおけるマルチモニターや高度なソフトウェアの活用に相当する。5.機動力を駆使した兵力の2重使用。少ない資金を短期間に売買を繰り返し、運用効率を上げるというデイトレや短期投資の考え方に通じる。2つのタイプの将軍を見てみたが、マンシュタインは大きく調整した場面を狙う中長期投資派、ロンメルは局地的戦闘の勝利の積み重ねによる、デイトレ・スキャルピング派というところだろうか。あなたはどちらのタイプだろうか。★ロンメル将軍関連書籍★★マンシュタイン将軍関連書籍★Game Journal(ゲームジャーナル) No.88 「激闘!ロンメル&マッカーサー」写真上マンシュタイン将軍 写真下ロンメル将軍☆YouTube German Generals - World War II