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TBS「夕暮れに、手をつなぐ」が終了。
最終話は、神回だったかも。 美しい映像と良いシーンの連続だったから、 夢中になってのめり込んでしまいました。 第1話と最終話だけを見れば、 ファンタジックで美しいラブストーリーだったともいえる。 ◇ 北川アンチの視聴者は、彼女のドラマを、 「古臭いバブル期の恋愛ドラマ」だと侮蔑するけれど、 それは言いがかりの面もあって、 「半分青い」や「ウチカレ」は、 すくなくとも恋愛を成就させるためのドラマではなかったし、 作品のテーマも恋愛とは別のところにあった。 だから、わたしは今回も、 「世界で一番美しいラブストーリー」なんてのは、 おおかたミスリードのキャッチコピーだろうと踏んで、 これは実際は恋愛ドラマではなく、 ヒロインの恋愛も成就しないと予想してました。 しかし、終わってみれば、 わりと王道のラブストーリーでしたね…。 ◇ わたしは、最後の最後まで、 これは恋愛ドラマではないと信じてたので、 むしろ重要なのは、 自傷メンヘラ同性愛少女のセイラの存在や、 娘を捨てた母親の存在なのだろう、と考えてました。 つまり、空豆や音が、 セイラや母親の苦悩にどう向き合うかが、 この物語の最大の肝だと思っていた。 しかし、 空豆に対するセイラの愛が明らかになったのも、 母親と空豆の再会が果たされたのも、 すでにラスト近くだったから、 そこから後は、さしたる波乱もなく、 セイラの「妹」や「自傷」や「同性愛」の問題も、 母親の「苦悩」や「後悔」の問題も、 娘との「葛藤」や「和解」の過程も、 とりたてて深く突きつめられることはなく、 あっさり落とし前がついちゃった感じ。 たとえば、 序盤の爽介だのアリエルだのの話を割愛して、 あと2~3話ぶんくらい物語を前倒しすれば、 もっと深い内容にも出来ただろうけど、 結局のところ、 セイラの存在も、母親の存在も、 空豆と音の恋のダシでしかなかったっぽい。
シュガーベイブの音楽だとか、 ナミビアのYoutube動画だとか、 なにやら気まぐれに挿入されたような要素も多く、 まるで一筆書きみたいな脚本だと思えたし、 北川悦吏子も、 さかんに「体調が悪い」と言ってたので、 もしかしたら、 体力や精神力がもたなくて、 全体の構成を考えたり、 細部の吟味や推敲をする余裕がなく、 ほんとに一筆書きで書いてるんじゃないの? …とも疑ったのだけど、 まあ、 王道的なラブストーリーとして考えれば、 全体の構成もこれで間違ってなかったのだろうし、 ジャニヲタを喜ばせるためのドラマとして見れば、 むしろこれこそが正解だったのかもしれません。
◇ しかし、 肝心のラブストーリーも、 いまひとつ説得力に欠けたのは否めない。 そもそも、空豆と音が、 いつお互いのことを好きになったのか、 正直、あまりよく分からないし、 二人が一緒の下宿で過ごした期間は、 設定上どのぐらいの長さだったのか分からないけど、 体感的には、さほど長くなかった気がしたし、 たしかに二人でじゃれあったりはしてたものの、 それで恋愛感情が育まれたようには見えなかった。 爽介やアリエルの存在は、 いわゆる「三角関係要員」だったのでしょうが、 その三角関係をのりこえて、 空豆と音の恋愛感情が高まった…とも、あまり思えない。 ◇ 広瀬すずは、 たしかに空豆のキャラになりきってたけれど、 その「恋」にのめり込んでるようには見えなかった。 …というより、 こんなことを言ったら身も蓋もありませんが、 ぶっちゃけ、広瀬すずって、 そこらのイケメンよりもずっと男前で、 恋愛への興味や、 異性への興味が乏しいように見えるのよね。 もしかしたら、 北川悦吏子もそれを見越したうえで、 空豆のキャラクターを作ってたかもしれないけれど、 それにしても、 空豆の恋愛には、いまひとつ説得力が乏しかったと思う。 ◇ そもそも、 「北川悦吏子の脚本で広瀬すずのラブストーリーを作ろう」 と考えたのは誰だったんでしょうね。 脚本家自身だったのか。 広瀬すず側の事務所だったのか。 あるいはTBSのプロデューサーだったのか。 いまさらだけど、 そのコンセプト自体に無理があった気がしないではない。 現在の広瀬すずは、 あまり恋をしそうな女性には見えないからです。 北川悦吏子は、 ほんとうにラブストーリーが書きたかったのかしら? そして、広瀬すずは、 ほんとうにラブストーリーに出たかったのかしら? ◇ とはいえ、今回の作品にも、 北川ドラマの魅力は随所に感じられました。 たとえば、 ファッションデザイナーの遠藤憲一なんて、 ほかではなかなか見られないし、 もともとエンケンは上手い俳優だと思うけど、 このドラマでも彼の上手さは際立っていた。 最終回での、 空豆と久遠のダイアローグも素晴らしかった。 東京に戻ってこねえか? これぞダイアローグって感じ。 どちらが正しいわけでも、 どちらが間違ってるわけでもない。 どちらの言い分にも理があるのよね。 ◇ はじめて見た俳優ですが、 黒羽麻璃央も美しかったです。 やっぱり北川悦吏子は、 優しい男のエレガントな魅力を引き出すのが巧い。 トヨエツや佐藤健はもちろん、 中村倫也を見出したのも北川悦吏子ですよね。 ◇ わたしは、 てっきり中村倫也のことを、 仮面ライダー俳優か何かだと思っていた(笑)。 でも、今回の報道などを見ると、 やっぱり最初の大きなブレイクは、 朝ドラの「半分、青い」だったようです。 わたしは、 とくに彼を意識して追ってはなかったけど、 「崖っぷちホテル」とか、 「凪のお仕事」とか、 「美食探偵」とか、 「岸辺露伴」とか、 「石子と羽男」とか、 中村倫也の主要な作品を意外に押さえていた。 さらに調べてみたら、 「風のハルカ」とか、 「神はサイコロを振らない」とかにも出てたのね。 ぜんぜん覚えてませんが(笑)。 朝ドラの「風のハルカ」に出てたってことは、 大森美香も、彼の魅力を見抜いていた可能性が高い。 脚本家の能力って、そういうところに出ます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.05.14 06:34:30
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