テーマ:好きなクラシック(2315)
カテゴリ:音楽・映画・アート
もともとミクロス・ローザは好きだったけど、
最近はYouTubeやサブスクでたくさん聴けるようになり、 あらためてその魅力を認識しなおしてる。 なぜか日本のWikipediaやクラシック系サイトでは、 ハンガリー風の表記で「ロージャ・ミクローシュ」となってますね。 ◇ 一般的には「ベン・ハー」の音楽が有名ですが、 わたしがとくに好きなのは、 ヒッチコックの「白い恐怖」、 フリッツ・ラングの「ムーンフリート」、 ダグラス・サークの「愛する時と死する時」の音楽です。 Alfred Hitchcock/Spellbound (冒頭がテルミンではじまる) Fritz Lang/Moonfleet Douglas Sirk/A Time to Love and a Time to Die 好きになった最初のきっかけは、 30年くらい前に映画館で観た「ムーンフリート」。 シネマスコープによる冒険絵巻でした。 物語はよく覚えてないけど、 ミクロス・ローザの血湧き肉躍る音楽が、 ゴシックロマン的な冒険譚を否応なく盛り立てていた。 ◇ ラフマニノフやレスピーギあたりと同じく、 「遅れてきたロマン派」とも「擬古典主義」とも言えるけど、 本家のロマン派より、もっとロマン主義的なのよね。 まさに大迫力のスペクタクルにふさわしい作風。 場面の転換にともなって、 分裂症的に目まぐるしく変わっていく曲想にも、 物語的なロマンティシズムを掻き立てられる。 口ずさめるようなキャッチーなメロディも豊かで、 ジェリー・ゴールドスミスやジョン・ウィリアムスが、 ミクロス・ローザの弟子だってのも合点がいく。 もともとはユダヤ系のハンガリー人ですが、 土俗的な響きを大胆に打ち鳴らすところとか、 そこはかとなく東欧的なエキゾチズムも感じられる。 どこかしら日本の伊福部昭を思わせる面があるかも。 ◇ わたしはコダーイやバルトークも好きだけど、 同じハンガリー出身の作曲家として、 彼らに並べるべき存在じゃないかと感じます。 実際、映画音楽以外にも、 バイオリン協奏曲などの純音楽を残してる。 映画音楽にくらべれば、純音楽のほうが近代的かもしれません。 ちなみにハンガリーでは、 日本と同じようにファミリーネームが先に来るのだけど、 Wikipediaなどの表記が、 ハンガリー風に「ロージャ・ミクローシュ」と書くのは、 米国ではなく、ハンガリーの作曲家と見なすがゆえ? それって、もしかして、 「ヘンデルは英国人じゃなくドイツ人だ!」 みたいなのと同じ理屈でしょうか?? たしかに純音楽のほうでは、 「Hungarian Serenade, Op. 25」(1945) のような作品もあったりするので、 ハンガリーの作曲家と見なすのは妥当ともいえる。 かたや英語のWikipediaのほうは、 あくまで英語風に「Miklós Rózsa」の表記になってるのよね。 ◇ その英語のWikipediaによると… 母親はフランツ・リストの孫弟子にあたるピアニスト。 やはり当初はブダペスト北部の民謡を収集したりして、 コダーイやバルトークの後継者たろうとしてたようだけど、 まもなく個人主義を抑圧する民族主義の危うさに気づき、 一転してドイツ音楽のほうへ傾倒し、 19才でライプツィヒ音楽院に入って作曲を学び、 バッハゆかりの聖トーマス教会では合唱音楽を学んでる。 しかし、純音楽の作曲家としては生計を立てられず、 フランスで映画音楽を手掛けてた友人のオネゲルにならい、 同じハンガリー出身の映画制作者アレクサンダー・コルダのために、 ロンドンやハリウッドの映画界で作曲に従事する。 ワーグナー風のライトモチーフをもちこむなどして、 第二次大戦中の米国映画界で高い評価と成功を収め、 戦後まもなく米国籍を取得し、後半生は米国で過ごしたようです。 アカデミー賞には11度ノミネート。そして3度受賞。 ◇ そこから考えると、 祖国ハンガリーを捨ててドイツに学び、 米国で生きることを選んだように見える。 (ユダヤ人だったことも関係してるかもしれないけど) …とはいえ、 音楽そのものは、 やはりドイツ的とも米国的とも言い切れない何かがあって、 そこはかとなく《ハンガリーっぽさ》を感じるのよね。 ハンガリーのマジャール人の祖先は、 コーカソイドじゃなくモンゴロイドだったらしく、 ファミリーネームが先に来ることからも分かるように、 言語的にもインド・ヨーロッパ語族とは別系統。 ヨーロッパでは例外的なほどアジア・ユーラシア的で、 かなり特殊な民族なのだといえます。 ミクロス・ローザの音楽からも、 しばしばアジア風の旋律が聞こえてくることがある。 ◇ コダーイやバルトークは、 いわば「近代の国民楽派」だと思いますが、 チェコのヤナーチェクやマルティヌーも、 米国のガーシュウィンやコープランドも、 アルゼンチンのヒナステラも、 ブラジルのヴィラ=ロボスも、 同じように位置づけることが出来るし、 わたしの好みも、そこらへんに集中している。 そして個人的には、 ミクロス・ローザもそこへ並べたい気がしてます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.01.24 07:05:25
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