カテゴリ:NHKよるドラ&ドラマ10
NHK「VRおじさんの初恋」。
全32話のうちの第15話まで来ました。 ちょうど半分の折り返しですが… ホナミの中の人の死期が迫ってる感じ。 ◇ 今回のドラマには、 設定の新しさとインパクトにおいて、 5年前の「腐女ゲイ」に匹敵するものを感じます。 実際、 内容にも「腐女ゲイ」との共通点があって、 《本当の自分とは誰で、本当の相手とは誰か》 …についての混乱がテーマなのよね。 ◇ よるドラ「腐女子うっかりゲイに告る」は、 女子高生の告った男子がゲイだった…という話。 そして、そのゲイの男子高生は、 ネットで交流するゲイの先輩に相談に乗ってもらってて、 その人はエイズで亡くなってしまうのだけど、 死後に彼の家を訪ねてみたら、 じつは自分より若いローティーンの少年だった…という話。 いずれにしても、 リアルな正体が見た目とは違ってて、 どちらが真実の姿なのか驚き混乱してしまう設定です。 ◇ 今回の「VRおじさん」は、 いちばん純真で美しく見えるヒロインが、 じつは死期の迫ったお爺さんだった…という話。 それ以外の登場人物は、 みんな心がねじけて一癖あるキャラばかり。 なお、 死期の迫っているヴァーチャルな美少女は、 銀河鉄道の夜のカンパネルラにも重ねられており、 宮沢賢治の物語と同じように、 タイタニックのモチーフも取り入れられてます。 フィルハーモニック・オーケストリオン《タイタニックモデル》
そして、ヴァーチャルな世界では、 少女どうしがハグやキスをする場面もあって、 見た目には女性の同性愛に見えるのだけど、 じつは双方ともに異性愛を感じてるはず。 そして、リアルな姿になったとき、 それが男性の同性愛だったことに気づく! しかも、高齢男性どうしの同性愛なのですね。 これは、 考えうるもっとも極端な例ではあるし、 えげつないけれど、ありうる話だろうと思う。 かりに性別が違わなくても、 アバターの姿とリアルな姿とで、 年齢や容姿が違うなんてのは、いくらでも起こりうる。 …もっとも、このドラマの場合、 死期の迫った高齢男性にとっては、 若い命に対する憧憬のほうが上回って、 相手が男なのか女なのかは、どっちでもよくなってるのかも。 ◇ これは、 ある意味で《入れ替わり》の物語ともいえます。 すなわち、心が別の身体に乗り移ってしまう話。 ただし、 大林宣彦の「転校生」や、 新海誠の「君の名は」の場合は、 本人の意思で別の身体になるわけじゃないけど、 アバターの場合は、 あくまで本人の意思で別の身体になるわけなので、 むしろアバターでいるときのほうが、 その人の本性が現れてるともいえる。 したがって、 アバターのほうこそが真実の自分で、 むしろリアルのほうが偽りの姿というべきかもしれません。 ◇ とはいえ、 アバターでいるときの関係が、 リアルな関係への橋渡しだとすれば、 どうしてもリアルに戻ったときの姿を意識せざるをえない。 どちらを真実の自分と考えるか。 どちらを真実の相手と考えるか。 そのことに混乱してしまいますよね。 たとえば、俳優さんなどの場合も、 「恋人役の相手に恋愛感情を抱いてしまう」 …みたいな話をよく聞きます。 演じてるときの関係と、 演じてないときの関係の境界が曖昧になって、 どちらが真実なのかが分からなくなる。 リアルのほうを真実と考えてしまったら、 アバターでいるときの関係は宙に浮いてしまう。 でも、 アバターでいるときの関係が、 お互いにとってかけがえのないものなら、 たとえリアルな姿とのギャップがあったとしても、 その関係を捨てる必要はないんじゃないかな…。 ◇ そう遠くない近未来に、 人間がアバターでいる時間のほうが長くなれば、 リアルな姿に戻ることを意識しなくなるのかも。 たとえ性別や年齢や容姿が、 リアルなときとは大きく違ってても、 そこへ戻ることを意識する必要がないなら、 おたがいにアバターの姿のまま、 友情や恋愛を育むことも可能なのかなと思います。 ◇ ◇ ◇ ちなみに昨夜の第15話は、 なんてことのない内容だったけど、 それぞれの登場人物のセリフに、 ちょっとずつ毒があったりして、 やりとりがとても面白かったので、 その一部を以下にメモしておきます。 佐々木:クッキーどうぞ 加藤 :もらうと返さなきゃいけないので要らないです 佐々木:お返しなんて気にしないで、どうぞ 加藤 :佐々木さんが気にするかどうかは気にしてません。自分が気になるのが嫌なんです 佐々木:そうですか * 堀 :お見舞い行くならスケジュール調整しますから、何なりと 飛鳥:要らない。どうしても必要なら葵に行かせる 堀 :社長、家族にだけは優しくないっすよね 飛鳥:遺伝じゃない? * 佐々木:澤田さんが見て来いって。もしものことがあったら寝覚めが悪いって 直樹 :ひどい言い方だな 佐々木:優しさを素直に言えない人、多いですよね 直樹 :澤田さんは違うでしょ * 直樹:アイスコーヒー「L」ください 荒井:今日は寒いですけど 直樹:寒い時ほど飲みたくなります 荒井:風邪ひかないように * 荒井:若いのに現金って珍しいよね 加藤:払う実感ないと美味しくないから ちょっとしたセリフのやりとりに脚本のセンスを感じる。 それとも原作どおりなのかしら? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.17 19:15:58
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