カテゴリ:NHKよるドラ&ドラマ10
NHK「燕は戻ってこない」を見ました。
女性の卵子売買の話です。 原作は桐野夏生。脚本は長田育恵。 石橋静河をひさしぶりに見ました。 NHKはわりと彼女を積極的に起用しますが、 民放だと坂元裕二ぐらいしか使ってないよね。 ◇ タイトルの意味は、 卵を産みっぱなしで戻ってこない母鳥? あるいは自分の巣を知らずに育った雛鳥? 中絶や流産の話に加えて、 ゆで卵、たらこ、ペットショップの子犬など、 さまざまな命の売買の話が出てきて、 主人公の友人は性の売買もしてるらしい。 なお、 NHKの「クローズアップ現代」でも取り上げてましたが、 すでに女性の卵子売買は、 国内にエージェントが存在して実際に行われてるそうです。 https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4868/ 第一に考えねばならないのは、 やっぱり安全上のリスクですよね。 まるでニワトリみたいに、 いちどに数十個の卵子を作ったりするらしいし、 不自然なことを人為的にやるわけだから、 女性や子供の身体に問題が生じないのか気になります。 ◇ 不妊治療のバリエーションとしては、 夫婦の体外受精のほかにも、 ・女性の卵子の凍結保存 ・男性の精子の凍結保存 ・他人からの卵子の提供 ・他人からの精子の提供 ・自分の腹から他人の子を産んで育てる ・他人の腹から自分の子を産ませて育てる ・他人の腹から他人の子を産ませて育てる …などがあると思いますが、 今回の物語では、 「夫の精子」「他人の卵子」「他人のお腹」で産む、 ということのようです。 倫理面での考え方は人それぞれでしょうが、 これって、結局のところ、 男性中心主義か女性中心主義かの問題ですよね。 要するに、 妻の卵子を使うにせよ、他人の卵子を使うにせよ、 妻の腹から産むにせよ、他人の腹から産むにせよ、 あくまで「夫の精子を使う」という点では変わりないので、 問題になるのは、 他人の卵子やお腹やお乳を使った場合に、 妻が「自分の子」として受け入れられるかってこと。 そして卵子やお腹やお乳を提供した女性の身体が、 ただの道具(もしくは商品)になってしまうってこと。 夫にとっては自分の子でも、 妻との血縁や身体的な結びつきが薄いとなれば、 それは養子を引き取る感覚に近い気がする。 あるいは夫の連れ子を引き受けるような感覚? ◇ かつての天皇家や将軍家と同じように、 男系男子の後継を必要とする家であれば、 女側の遺伝子が正妻のものである必要はなく、 優れた遺伝子の女性なら誰の卵子でもいいのよね。 あくまで重要なのは、 夫にとって「自分の子」ということであり、 妻にとって「自分の子」か「他人の子」かは問題じゃない。 妻の卵子である必要もないし、 妻のお腹から産まれる必要もないし、 妻のお乳で育てる必要もないわけです。 実際のところ、 昔は「正妻」「妾」「乳母」の分担があって、 それが男系男子を産むための合理的なシステムだった。 それが少子化や貧困の問題も相まって、 一夫一妻制の現代にも復活してるのだと思います。 ◇ でも、 そこまでして子供が欲しいというのは、 やはり男系の後継を必要とするような家だと思うし、 そういう家では、 あくまで女性は道具でしかないのであって、 とくに貧しい女性たちは、 そういう家に卵子やお腹を提供するか、 あるいは乳母になるといった立場に置かれる。 たとえ正妻になれたとしても、 自分の子をもてるとは限らないのよね。 時代劇を見てても思うけれど、 こういう家にとって正妻の存在意義って何なのかしら? どこぞの女性に卵子とお腹を提供してもらい、 産まれた子は乳母に育てさせればいいのだから、 はなから正妻なんて必要ないじゃん!と思ってしまう。 ある意味、セフレと大差ないのでは? ◇ そんな男系嫡子製造システムとして、 現代にも、 「卵子の商品化」「お腹の商品化」「お乳の商品化」 といった話が出てきてるわけだけど、 たんに卵子を提供するだけなら、 大奥に入ったり妾になったりするよりマシかな、 …って気がしなくもありません。 もちろん、実際は、 けっこう身体的な負担があるようですが…。 自分の知らないところに、 自分の遺伝子を受け継いだ人間がいるってのは、 女性の歴史のなかでは珍しいことだけど、 男性の歴史のなかでは珍しいことじゃないよね。 ただし、子供の側からすれば、 「自分の出自」を知る権利は保障されるべきだし、 そうした権利を無視して子供を製造してるとすれば、 女性のみならず子供も道具(もしくは商品)にすぎないでしょう。 ◇ ちなみに、 もし「女系の子」を産むとなった場合には、 精子は誰のものでも構わないけれど、 卵子は絶対に妻のものでなければならない。 もし夫が種なしだったら、 別の優れた男性から精子の提供を受けて、 さらには必要に応じて、 他の女性のお腹やお乳も借りることになる。 男子のいない場合に、 娘に婿を取って家業を継がせることはあるし、 そういう家でなら、 「娘の卵子さえ使えばいい」という考え方も、 ありえるのかもしれませんよね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.17 19:09:40
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