カテゴリ:東宝シンデレラ
舞台「千と千尋の神隠し」ロンドン公演には、
成功の条件がもともと備わってたのよね。 それは以下の3点です。 1.RSC版「トトロ」の成功 2.ミヤザキ・ハヤオの知名度 3.ジョン・ケアードの知名度 のみならずジョン・ケアードには、 失敗させないための周到な戦略もあったはず。 それは、おそらく以下の3点です。 1.ストレートプレイにする 2.大掛かりな舞台装置を用いる 3.子供の世界を題材にする ともかくは、こうした戦略によって、 日本語演劇でも英語字幕で上演できることを証明した。 その意味は大きいと思います。 ◇ ジョン・ケアードが、 今回の「千尋」をミュージカルにしなかったのは、 早い話、日本人の歌が下手だからです。 さすがに海外では通用しませんから。 かりに韓国人の歌手だったら、 欧米でも通用するかもしれませんが、 日本人は身体的な資質に劣るし、筋力に差があります。 ミュージカルを輸出するとなれば、 キャストをすべて現地の歌手に入れ替えねばならない。 もちろん民謡や演歌にまで目を向ければ、 日本にも世界を圧倒できる歌い手は存在するはずだし、 オペラ界にも海外で活躍している日本人はいますが、 現状、ミュージカルの分野で、 世界を圧倒できる歌手を揃えるのは不可能です。 ◇ しかも、今回の舞台は、 大掛かりな装置やパペットなどを用いる作品であり、 演技力や歌唱力だけで見せる作品ではありません。 そのうえ「千と千尋」は子供の世界です。 ヒロインを演じるのは小柄な体格の女優だけど、 それは子供の世界こそが日本人キャストに適してるからです。 もちろん、過去には、 寺山修二や蜷川幸雄のような舞台も海外で成功してるのだから、 《仕掛けを駆使したストレートプレイで子供の世界を見せる》 というだけが成功要件じゃないと思うけど、 日本人キャストの舞台輸出を目指したジョン・ケアードが、 欧米での客層開拓と支持基盤構築のために、 もっとも確実な戦略と判断したのがこの手法であり、 消去法から導き出した最適解だったのでしょうね。 ◇ いずれにせよ、 今回の「千尋」の成功を舞台輸出の足がかりにするには、 やはり綿密なマーケティングが必要です。 ジョン・ケアードのように、 「海外の観客にどう見えるか」を熟知する必要があるし、 プロデュースと演出の両面からそれを考えねばならない。 ちなみに余談ですが、 韓国では「ベルばら」をミュージカルにするらしい。 …といっても、 男性キャストも出演するとのことで、 宝塚のように女だけで繰り広げる世界ではありません。 宝塚みたいな《百合的》な世界を受け入れてもらうには、 萩尾望都や竹宮惠子のような高度な日本の少女漫画を、 もっと海外のマンガ市場に向けて発信しなければなりません。 日本の少女漫画のBL世界は、 吉屋信子のような百合的な世界を反転させたものだからです。 東宝は、 そういうメディアミックスも視野に入れて、 今後の海外展開を考えていくべきだろうと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.20 17:52:52
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