カテゴリ:NHKよるドラ&ドラマ10
夜ドラ「VRおじさんの初恋」全32話が終了。
恋人を喪失したナオキの悲しみと同時に、 新しいVR世界の未来も感じさせる結末でした。 ◇ 以下は第31話から、 穂波の生前最後のモノローグ。 私たちの心は体に決められる。望む望まないにかかわらず。 たとえば仏教では、 身体に縛られる人生を「苦」ととらえて、 そこからの解脱を目指すわけだけど、 アバターの身体を得ることも一種の解脱かもしれません。 しかし、原作者は、 最終回の後に次のようなツイートをしてました。 この話は、じつはアバター自由選択による魂の解放…的な話のまったく逆を言っていて。体を自由に変えても、それは魂のアウトプットが変わるだけ。
◇ でも、わたし自身は、 やっぱり恋愛は「ガワ」でするものだろうと思います。 リアルにおいてであれ、VRにおいてであれ、 しょせん恋愛なんて一瞬の気の迷いでしょw かりに、 「ガワ」だけじゃない「魂の結びつき」があるなら、 それは、きっと恋愛以上のものだと思うけど、 恋愛以上の「愛」や「友情」でさえ、 けっして普遍的ではありえないわけだし。 環境によっても、年齢によっても、体調によっても、 人間どうしの関係性は変わっていくはずです。 実際のところ、 「本当の恋」なんてものはありえないし、 「本当の愛」とか「本当の友情」なんてのも、 それ自体がメディア的な幻想じゃないかと感じる。 ◇ ちなみに、 ホナミの「中の人」は亡くなりましたが、 AIでホナミのアバターを生かしつづけることも、 きっと技術的には可能でしょう。 ドラマでは、 バックアップしたホナミの過去の映像を、 VR内の画面で見るシーンがあったけど… VRのなかで画面を見るってのも変な話だよねw そもそも画面のなかへ没入するのがVRなのだから。 もしも、AIによってホナミのアバターを生かしたら、 VRのなかに徹頭徹尾「ガワ」だけのホナミが出現します。 そしたら、ナオキは、 中身のない「ガワ」だけのホナミと恋愛しつづけられる。 ◇ そもそも、 死者に恋しつづけるのは珍しいことじゃありません。 たとえば、 エルヴィス・プレスリーの歌や、 マリリン・モンローの映像に、 いまもなお恋しつづける人はたくさんいる。 エルヴィスやマリリンの場合は、 もともとがメディア的な「幻想」だから、 生きていようが死んでいようが、 たいして変わりがないともいえるけど。 死者に恋することも、 幻想に恋することも珍しいことではない。 むしろ、ごく普通のことです。 そう考えれば、 ナオキが「ガワ」だけのホナミに恋しつづけるのは、 とても孤独で、うすら寒いともいえるけど、 けっして不自然な話ではないと思います。 ◇ いずれはVR世界の中で、 アイドルと恋愛することも可能になるでしょう。 複製されたアイドルのアバターがたくさん存在して、 不特定多数の人々がそれらと恋愛するような時代が来る。 そこでは、もはや中身があるかどうかなど関係ない。 たとえAIで生かされた複製のアバターであっても、 恋愛対象としては十分に事足りるだろうし、 それどころか、 AIで複製されたアバターなら、 ユーザー好みにカスタマイズすることも可能でしょう。 つまり、 自分好みの振舞いをしてくれるアイドルですね。 それは想像しうるかぎり最高の恋愛対象になるはず。 たとえ中身のない「ガワ」だけの存在だとしても。
◇ たとえば、 中身のいるアバターどうしの交流においても、 自分の姿を相手に合わせてカスタマイズしたり、 相手の姿を自分好みにカスタマイズすることは可能だろうし、 姿だけでなく言動も相手の好みに合わせることは可能だと思う。 結果的に、双方がまったく違うものを見ていても構わない。 そのほうが、お互いにストレスなく、 快適なコミュニケーションができるわけだし。 そもそもVRの参加者は、 同じ世界を共有する必要はないのよね。 それぞれがまったく違う世界を見ていても構わない。 これは一種のフィルターバブルみたいなものです。 自分に都合のよい幻想だけに囲まれた世界。 100人のユーザーがいたら、 100通りのパラレルなマルチバースが併存する。 すでに現状のネット世界でも、 多くの人はフィルターバブルの中に埋没してるし、 都合の悪いものは見ないようにしています。 そのほうが快適なのだから。 VRでも、ほとんどの人はフィルターバブルを望むはず。 ◇ フィルターバブルに包まれた無葛藤な世界は、 快適である反面、とてつもなく孤独だとも言える。 しかし、実際のところ、 あえてフィルターバブルの外側に出て、 本物のコミュニケーションを求める人は少ないだろうし、 恋愛はいっそう「ガワ」だけになっていくと予想される。 そして、良かれ悪しかれ、 フィルターバブルに包まれた自分こそが、 結局は「本当の自分」なのかもしれない…とも思う。 ホナミ:ウサギの耳はやりすぎです! はたして、 「本当の自分」というフィルターバブルに包まれた世界が、 ユートピアなのか、 はたまたディストピアなのか分かりませんが、 それが実現する未来はさほど遠くないと思います。
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最終更新日
2024.06.17 19:04:02
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