テーマ:浮世絵の世界(189)
カテゴリ:北斎と葛飾応為の画風。
NHKの日曜美術館。
「若冲 よみがえる幻の傑作〜12万の升目に込めた祈り」 を見ました。 ◇ 伊藤若冲の「釈迦十六羅漢図屏風」は、 縦横に方眼紙みたいな線を引いてから、 その枠内に色を置いていく《枡目描き》の作品。 彼独自の技法だそうです。 西洋の点描画も、 もともとデジタルっぽい表現だと思うけど、 若冲の升目描きは、 それ以上にデジタルな発想の表現です。 12万もの升目を塗っていくクレイジーな作業。 それを江戸時代の人間が手描きでやっていた。 精神科医の華園力なら、 自閉スペクトラムの反復作業と言うでしょうが、 ▶ 伊藤若冲とアンリ・ルソーの自閉スペクトラム。 美術史家の山下裕二は、 これを「写経のような作業」だと言ってました。 ◇ しかし、 この屏風は大阪の空襲で焼失してます。 今回の番組では、 小さな白黒写真をもとに、 それを"現代のデジタル技術"で復元したのですね。 その結果わかったのは、 「釈迦十六羅漢図」&「樹花鳥獣図」という、 同時期に描かれた2つの升目描きの屏風が、 それより前に相国寺へ寄進された、 「釈迦三尊像」&「動植綵絵」のセットに相当する、 …のではないかってこと。 つまり、 相国寺において、 中央の「釈迦三尊像」と、 左右の「動植綵絵」が配置されたように、 どこかの黄檗おうばく宗の寺院でも、 中央の「釈迦十六羅漢図」と、 左右の「樹花鳥獣図」が配置されただろう、 …ってことですね。 ◇ 3年前にドラマ「ライジング若冲」を見たとき、 わたしが思ったのは、 若冲の絵が「神の世界なのか仏の世界なのか分からない」 …ということでした。 https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202101060000/ この場合の「神と仏」は、 神道と仏教のことではなく、道教と禅宗のことです。 「釈迦三尊」は仏(禅宗)の世界だけれど、 「動植綵絵」は神(道教)の世界に見えたのよね。 しかし、 今回の番組を見て、黄檗宗のことを調べてみたら、 だいぶ分かってきた気がする! ◇ Wikipediaによると、 黄檗宗は、臨済宗から独立した禅宗の一派。 そして、禅宗そのものが、 もともと道教と関係が深いってことらしい。 https://ja.wikipedia.org/wiki/禅宗 その意味では神仏が習合(?)した世界なのね。 ◇ 当時の芸術サロンの中心人物だった売茶翁も、 やはり黄檗宗の僧侶でした。 売茶翁が、 形式化してしまった禅僧の茶道を批判して、 《茶本来の精神》に立ち返ろうとした姿勢は、 臨済宗から派生した黄檗宗が、 《臨済正宗》を名乗ったことに通じるのかもしれない。 ◇ はたして、 「釈迦十六羅漢図」&「樹花鳥獣図」の屏風セットが、 どこの寺院に飾られていたかは分かりませんが、 黄檗宗の本山といえば、 京都の宇治にある黄檗山萬福寺。 そして若冲と縁が深いのは伏見にある石峰寺です、 https://ja.wikipedia.org/wiki/石峰寺 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.07.29 17:44:45
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